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VOL.293『健康意識が高く、長生きした戦国武将』 [生活]

◆戦国時代の武士
 戦国時代の人は寿命が短かったのでしょうか?戦国時代は1467年の応仁の乱から1568年織田信長の上洛までとされています。応仁の乱以降、室町幕府の権威は失われ、世の中は乱れに乱れた時代になりました。平安時代の中期から室町時代にかけては様々な災害が発生し、大飢饉や疫病(感染症)が続いて餓死しなかった人でも疫病によって死んでいく悲惨な事態が全国的に続きました。
 社会の秩序が崩壊する中で、各地に現れたのが武力・知力に優れ、人間的に魅力ある武将たちです。織田信長が舞ったことで有名になった『人間50年、下天の内をくらぶれば夢幻の如くなり』と言う敦盛の一節があります。織田信長は48歳で亡くなりました。当時の平均寿命は、武士が42歳ほどで、庶民が30歳くらいでした。戦国の武士は戦いの日々を過ごすことで庶民より寿命が短かっただろうと思われますが、武士の方が一般的に栄養や医療の面で恵まれていたようです。

◆織田信長と徳川家康
 その頃日本に30年以上も滞在していたルイス・フロイスによれば、織田信長は中位の背丈で華奢な体つきをしており、声は少し高くよく通る声だったそうです。アフリカ系の宣教師であるフロイスを見た信長は肌が黒いので墨を塗っていると思い、体を洗わせたそうです。フロイスが地球儀を見せて地球が丸いことを説明すると、信長はすぐに理解し、外国の情勢を話すように求めたといいます。性格は名誉を重んじ、正義において厳しく、戦いを好み、侮辱を許さず、決断が速く、尊大で、他の戦国武将を軽蔑していたそうです。桶狭間の戦いの前には、焼き味噌をご飯にのせて湯をかけ、立ったまま掻き込んでから出陣したそうです。
 そんな信長は日頃、早起きで睡眠時間は4〜6時間と短く、酒はあまり飲まず、月に4〜5回ほどご馳走を食べる機会がありましたが、普段は粗食で肉や魚をあまり食べませんでした。その方が胃腸がスッキリすると言って、好きなものでも食べ過ぎずに残すようにしていました。また、綺麗好きで家臣には入浴を勧め、用を足した後には下帯をほどいて衣類を振り臭気を除いてから下帯を締めなおすように細かく指示したそうです。
 一方、徳川家康は、最先端の医学書や薬学書を読み、医師を招いて議論するような健康オタクでした。家康に特に影響を与えたのが天海和尚です。天海は福島県で生まれ、家康に重んじられて107歳まで生きたと言われています。天海が家康に長生きの秘訣として伝えたのが発酵食品と粗食でした。粗食と言っても粗末な食事という意味ではありません。新鮮な食材を使いあまり手を加えず、量を少なく制限するという意味でした。
 ある年の冬、信長から家康に立派な桃が贈られてきました。桃の旬は初夏です。家康は信長の凄さを褒め称えましたが、季節外れの食材は体に良くないと考えていた家康は、桃には手をつけずに家臣に与えたそうです。天海は野菜や果物に含まれるビタミンやミネラルなどの栄養は旬の時期に最も多く、季節外になると急速に失われることを知っていました。特に家康は腐敗した食材には用心していたそうです。その頃の武士は陣中食として干飯を食べていました。焼いた米を数日間天日干しした保存食で、それを湯に浸し戻して食べるのです。それに狩りで捕らえた野鳥を焼き鳥にして食べました。肉は血管を丈夫にして筋肉がつきます。肉の中でも脂肪が少なく、タンパク質が豊富な鳥肉は健康的でした。健康に注意していた家康は73歳で生涯を閉じました。家康に仕えた大久保彦左衛門も家康を真似て質素な食事で規則正しい生活をしたので79歳まで生きました。

◆いつの時代にも通じる健康法
 戦国時代の武将は戦いの日々の中、いつ命を落とすやもしれないという不安で、常に神経をすり減らした生活の中で生きていました。大酒を飲んでいた武将は脳卒中で早死にしています。豊臣秀吉はストレス性の胃ガンだったと言われています。一方、健康を意識して普段から粗食だった武将は当時としては長生きしたようです。暴飲暴食を避け、規則正しく生活することはいつの時代にも通じる健康法であるようです。


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VOL.292『笑い方や水の飲み方で免疫力が変わる』 [生活]

◆笑うことで免疫力が上がる
 新型コロナウイルス感染症のせいで私たちは1日中自宅で過ごすことが多くなり、テレビやスマホを見ながらだらだらと過ごしがちになっていますが、ウイルスに感染しないためには免疫力を高めておくことが必要です。免疫力の70%は腸の細胞で作られます。残りの30%は心の持ち方で、ストレスを溜めないことが重要です。そのためには基本的に大笑いすることで、少なくとも1日1回以上は大声を出して大笑いする機会を増やしましょう。テレビを見ていてもつまらないと思わないで無理やりにでも笑うと、免疫力が上がります。

◆ウイルスは粘膜から感染する
 しかし、ウイルスの増殖が速く体内に侵入してしまうと、発熱・咳・味覚嗅覚障害、体調不良の症状を示します。この状態でも体内の免疫系細胞はウイルスを除去しようと闘っています。免疫系細胞の免疫力の方が強ければウイルスが感染しても症状が現れない無症状の状態が続きます。これを不顕性感染と呼びます。密閉・密集空間などウイルス感染者が多い場所に居れば濃厚接触することで大量のウイルスが体内に侵入します。また感染者と食事や飲酒、大声で話すなどすれば感染確率が高まり、ソーシャル・ディスタンスを取ったとしてもあまり意味がありません。ウイルスに感染しても直ちに症状は出ないので、自分が感染しているかどうか分かりません。また、この状態では消毒・手洗いやマスクをしてもほとんど効果がありません。
 ウイルスは通常、口腔粘膜や鼻腔粘膜、眼瞼粘膜など粘膜から感染し、皮膚からは感染しません。ウイルスが付着した手指で鼻や口、目を触ることで粘膜を介して感染するのです。人は知らず知らずのうちに鼻や口、目を1日に数10回触っており、ウイルスは人を介して生き続けるので、感染を避けるには他人との接触を避ける以外にないのです。いくら免疫力を高めても感染力の強い新型ウイルスには感染してしまいます。若い人は一般的に免疫力が高くて元気ですから、感染しても無症状のことが多く、本人も気づきません。感染しても発熱しても重症化することが少なく、軽症のまま回復します。抗体はできずに再感染したりします。

◆免疫力の上げ方
 高齢者の場合、慢性疾患を持っている人が多く、免疫力も下がりがちです。ただでさえ風邪を引きやすいため、老人性肺炎を発症し死に至ることもあります。また、高齢者は自宅にいることが多いので運動不足になりやすくなります。そこで大声を出して笑うようにすると、横隔膜の上下運動と、腹圧の増減で内臓器官が刺激され、同時に小腸や大腸の蠕動運動も活発になります。笑うことで腸が刺激され、腸の働きが良くなるので免疫力が高まります。内臓全体が刺激されることで、血液の流れが良くなり、脳の前頭葉に興奮が起こります。前頭葉はおでこの部分で思考を司る脳の司令塔です。ここがまず刺激されるので幸福感や快楽を伝える幸せホルモンが大量に分泌されます。するとさらに陽気になり、大声で笑ったり、やる気も出てきます。考え方も前向きな思考になります。声を出すと喉が乾くので、その際には水をチビリチビリと飲みましょう。水の飲み方のタイムスケジュールは、まず朝起きたら飲みます。朝は口内に細菌やウイルスが繁殖しています。これらを水とともに胃腸に入れます。胃は強い酸性なので細菌やウイルスは生きられませんし、朝の水は胃腸を目覚めさせ、便通を良くして自律神経の乱れも整います。睡眠中には体内の水分が失われ、血液がドロドロ状態になるので、朝飲む水が免疫力を高めます。その後はウォーターローディング法で水を飲みましょう。お風呂に入る前と後にも水を飲みましょう。そして夜、寝る前に飲む水は命の宝水と言われ、心筋梗塞や脳梗塞の予防につながります。特にミネラル成分豊富な弱アルカリ性の水が良いでしょう。運動不足の解消には早朝、人通りの少ない道での20〜30分の散歩が効果的です。大笑いやウォーターローディングで免疫力を高めましょう。

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VOL.291『明治政府が行った感染症対策』 [健康]

◆漢方医学から西洋医学へ
 1868年、明治政府は西洋を手本とする近代化政策に着手し、医学においても西洋医学を取り入れました。まず薬学が最も進んでいたドイツに重点を置き、1871年にはドイツ人の教授を迎え、ドイツ語だけを用いる西洋医学の教育を開始しました。これにより、医師は西洋医学をドイツ語で書くことが習慣となったのです。
 1875年には医師国家試験が始まり、その3年後にはほとんどの府県で医学校を備えた公立病院が設置されました。この時点で正式に西洋医学を学んで国家試験に合格した医師は5200人で、無試験で漢方医を名乗る人は2万3000人もおり、圧倒的に漢方医の方が多かったのですが、1895年には漢方医は医療を行うことができなくなりました。1909年には当世医者気質としてフロックコートに赤いネクタイを締め、縞模様のズボンをはいて、八字ヒゲを立て、往診鞄を下げた医師の姿がよく見られるようになりました。往診鞄には聴診器・体温計・注射器などが入っていました。白衣を着て診察するようになったのは大正時代に入ってからのことです。

◆感染症の大流行
 明治政府が健康国家建設の指針として掲げたのが感染症(伝染病)対策と食生活の改善でした。1886年には日本人の総人口が3850万人で、94万人が感染症で亡くなりました。死因はコレラの大流行で11万人、これに天然痘・腸チフス・赤痢が加わり18万人が亡くなりました。次いで栄養不足や生後の発達障害が14万人、他に神経の病気や結核などの呼吸器疾患、伝染性の胃腸炎が続きました。明治から大正時代にかけて生まれた子供は、100人中15人ほどが1歳未満で死亡しました。
 大正時代の1918年から1920年には、スペイン風邪と呼ばれるインフルエンザウイルス肺炎が大流行し、当時の世界の人口20億人のうち6億人が感染しました。日本では全人口の40%にあたる2300万人が発症し、38万人が死亡しました。子供や高齢者だけでなく20〜30代の若者の死亡率も高かったのがスペイン風邪の特徴でした。
 1886年のコレラの大流行を受けて明治政府は、西洋諸国に習って伝染病予防、海港検疫法、汚染掃除法などを成立させました。1898年には汚染された水を使うことで感染が拡大するコレラ・赤痢・腸チフスを止めるために一部地域で通水を始め、1911年には東京市全域に上水道が完備されました。日本人は古代から清潔好きで、穢れ(けがれ)を水で洗い清めるという考え方を持っています。現在でも神社に行くとお参りをする前に手を洗って口を漱ぐのはその習わしです。このように日常生活でも清潔を常に心がけることは、江戸時代から入浴や養生法として重視されてきました。現在も新型コロナウイルスの感染症がヨーロッパ諸国やアメリカで大流行し、インドや南アメリカ、アフリカにも広がっていますが、日本で新型コロナウイルスの感染症が世界的に見て少ないのは、手を洗うという習慣が日本人の生活の中で根付いていることも理由の一つと言えるでしょう。

◆ワクチンと治療薬の開発が鍵
 明治政府は健康増進を目的にいろいろな政策をとりました。1日のカロリー摂取量を3000キロカロリーとし、これは現在もあまり変わっていません。他に肉類や脂肪を摂取して血管を強くし、抵抗力をつけて感染症を防ぎ、運動量を減らしました。これらはあまり効果がありませんでした。効果があったのは予防ワクチンや治療薬の開発、病気の検査法でした。そして有効な治療法が相次いで発見されたのです。
 感染症との闘いに勝利できるのは、ワクチンによる予防と治療薬の開発です。感染した人が回復して抗体が形成されるのを待つのでは時間がかかりすぎます。既存の治療薬の効果がある程度報告されてはいますが、完全ではなく、インフルエンザワクチンの効果も100%ではありません。また、新型コロナウイルスの遺伝子が変異すれば効果は期待できません。ワクチンや治療薬の開発以外、この感染症の収束は望めないでしょう。

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VOL.290『赤色がもたらす健康維持の極意』 [健康]

◆赤パンツのパワー
 近年、東京の巣鴨は高齢者に人気となっています。かつてはお年寄りが集まる場所ではありませんでしたが、いつの間にか『おばあちゃんの原宿』と呼ばれるようになり、元気な高齢者の若返りの街として大勢集まるようになりました。巣鴨へは都電を使って、有名なとげぬき地蔵にお参りに行くのがお決まりですが、とげぬき地蔵の近くにマルジという洋品店があります。創立は昭和27年(1952年)で当時は10坪ほどの店でした。寅さんの映画でもよく使われた洋品店で、昭和からバブルが弾け、世界が混沌として平成の時代へと変わっていっても、マルジ洋品店は変わらずに巣鴨で幸福を生む店を目指し、現在では地蔵通りに4店舗を構えています。1号店と2号店は婦人衣料品、3号店は紳士衣料店、4号店は世界初の赤パンツ専門店です。赤パンツ専門店には男女大人用、子供用などさまざまな赤パンツが店のいたるところに並べられ、その迫力に圧倒されます。特に人気なのが自分の干支が入った赤パンツで、そのパンツをはくと元気になり、幸せがもたらされるといいます。実際、赤パンツを買いに来た人に確かめてみると口々に本当であると言います。どうやら赤パンツは知られざるパワーを秘めているようです。

◆赤色の持つパワー
 赤い色が人に対してどのような影響を与えるのか、この変な疑問を医学的に検証してみました。最近は大きな経済効果をもたらすご当地キャラクターが登場し話題になっています。熊本県ではくまモンが大人気で熊本産の宣伝商品には必ずくまモンが印刷されています。このくまモンの人気の秘密は赤い色にあるといいます。くまモンの生みの親であるグッドデザインカンパニーのアートディレクターによれば、日本で人気が出るキャラクターには必ず顔に赤い丸がついているのだそうです。ピカチュウやドラえもん、アンパンマンなど有名なキャラクターにはみんな顔に赤色の丸が付いています。
 また、イギリス・ダラム大学では、オリンピックでのボクシングやレスリングなどの試合を調べて研究した結果、赤サイドの方が青サイドより10〜20%ほど勝率が高いことがわかりました。つまり、赤色のユニフォームやプロテクターを身につけると勝率が高まると言うわけです。赤色はスポーツの分野だけでなく、労力や知的作業にも強く影響を与えます。文章でも重要事項を赤色にすると、記憶に残りやすく成績の向上にもつながります。
 一方、赤い色は心理的に回避的な傾向を産み、警戒心を高めることが分かっており、極度の集中力が要求される場合には赤色が良いと言われます。アメリカのトランプ大統領は重要な場面では常に赤色のネクタイをして登場します。赤色は赤信号、警告のサインとして世界中で共通して使われています。
 イギリスのサンダーランド大学での赤色と男性ホルモンの関係についての研究では、好きな色で赤色を選んだ学生は青色を選んだ学生に比べて男性ホルモンのテストステロン値が高いという結果が出ました。赤パンツを求める巣鴨の高齢者が元気なのはテストステロンなどのホルモン分泌が増えるからではないでしょうか。パンツに限らず赤色のグッズ(下着や身につけるもの)や赤色のスポーツカー・自転車・オートバイに乗る人はテストステロンの分泌量が増えるという実験結果もあります。カナダ・コンコルディア大学の研究では50人ほどの若者に赤い新型ポルシェと青色の旧型自動車を運転させ、1時間前と後に唾液中のテストステロン値を測定した結果、赤い新型ポルシェを運転した人はテストステロン値が急上昇しました。青色の旧型自動車を運転した人のテストステロン値には変化がありませんでした。これは女性に自分をアピールするという刺激を受けた結果と言えるようです。

◆赤色を身につけて健康に
 赤い色は刺激的で、自分を元気に興奮させます。種々の研究結果をみると、血圧や脈拍、体温が上昇し、刺激を受けて興奮します。赤色を身につけることで男性も女性もホルモン分泌量が増加して元気になります。中年以降、おじさんやおばさんになると体型が変わります。そんな時に赤パンツや赤色の下着を身につけるとホルモン分泌が盛んになり、運動することでさらに筋肉量が増してきます。たまには巣鴨に出かけてみて、自分の干支の赤パンツや赤色の下着を買い、身につけてみてはいかがですか?赤色に健康維持の効果があるのか自分自身を試してみましょう。

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VOL.289『胃腸が元気なら健康が維持される』 [体]

◆日本人の腸は長い?
 2014年の厚生労働省の調査によれば、消化管の病気は1000万件を超えました。腹も身の内という言葉があります。お腹も体の一部なので大事にしなさいという意味ですが、消化管の病気は自然に治ることがよくあるため、食べ過ぎだからと少しの間食べずにいたり、市販の消化薬を飲めば治るなどと軽く考えられてきました。
 古代人もお腹(消化管)の病気には苦労したようで重要な臓器と考えられていました。消化管といえば、昔から日本人は欧米人よりも腸が長いと言われています。足が短く、胴が長いのは腸が長いためです。欧米人は主に肉食で、日本人は草食であるため食物繊維の多い食品を消化するため腸が長くなったと思われます。長い進化の過程では古代日本人も肉食でした。その後、植物や海藻を食べる能力を手に入れたのです。
 日本人の腸が欧米人よりも長いと言われる理由は、欧米人が肉食中心で日本人が穀物中心の食生活だったからですが、近年の調査では日本人とアメリカ人(白人)の腸の長さはほぼ同じであることが分かりました。

◆消化管の中心を担う胃と腸
 消化管である胃は胃袋と呼ばれ、食べたものを胃袋の筋肉で強く混ぜ合わせます。胃の大きさには個人差がありません。食べる量が少ないと胃が小さくなると言いますが、胃の大きさは変わらないのです。食べ物は胃・小腸・大腸を平均1〜1.5日で通過します。食べた物は胃の中に3〜5時間とどまります。胃の形は人種によって異なり、日本人は食物繊維を豊富に含む穀物を主食としてきたので、消化を助けるため胃の筋肉を使って細かく砕くのに適した形になっています。欧米人は肉食が中心なので胃は牛角胃という形をしており、大量の胃酸で食べ物を溶かし速やかに小腸に送ります。欧米人の胃酸の分泌量は日本人の2倍以上だといいます。胃には胃酸(pH1~3)が溜まっていて、食べた物に付着した微生物(病原体)は生きられません。喉に侵入した新型コロナウイルスでも頻繁に水を飲み、胃へと流し込むことで感染を予防することができます。
 胃酸を強力に中和するのが膵臓の消化酵素(膵液)です。膵液はアルカリ性なので小腸と大腸を守っています。また膵液は脂肪を分解します。脂肪は通常3〜4時間で小腸を通過しますが、脂肪分の多い食品では10時間以上かかることもあります。日本人は脂肪の消化酵素が欧米人の50%以下と少ないのでさらに時間がかかります。
 喉元過ぎれば熱さを忘れるという諺がありますが、熱い茶粥を食べる地域では食道ガン、唐辛子を大量に摂取すると胃ガン、脂肪分を多く摂る人は大腸ガンの発症リスクが高くなります。食べ過ぎによる脂肪肝は、飲み過ぎによる脂肪肝よりも肝臓ガンになる割合が高くなります。肥満で内臓脂肪が増えると、脂肪肝・便秘・逆流性食道炎・大腸ガン・肝臓ガン・膵臓ガンを発症する危険性が高まります。乳ガンは思春期までに肉類や脂肪分の多い食事をしていると発生頻度が高まります。大腸ガン・胃ガン・肺ガンは運動不足の影響を受けやすいことも分かっています。

◆腸内細菌を活性化する食物繊維
 大腸内に生息する腸内細菌は食物繊維を餌としているので、食物繊維を多く摂れば悪玉菌が減少して善玉菌が増えます。さらに食物繊維は乳酸菌よりもビフィズス菌の増殖に役立ち、免疫力を高めます。乳酸菌や乳製品は腸内細菌を増やし、バランスを改善するといいますが、増えるのは腸内細菌全体の0.004%以下です。
 体内は活性酸素で酸性化が進み、これを抗酸化物質で還元しています。その役割の中心を担うのが水素です。水素は腸内細菌の活動によって発生します。乳酸菌の摂取よりも食物繊維を摂ることによって腸内細菌は水素を発生してくれるので、活性酸素による酸性化を還元します。弱アルカリ性の水を飲み、食物繊維を多く摂ることは免疫力を高めます。

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VOL.288『ウォーターローディング法で免疫力アップ』 [水]

◆こまめにチビリチビリ
 新型コロナウイルス感染症の影響で、野球やサッカーなどのプロスポーツを会場で観戦することができなくなっています。以前、プロのスポーツ選手が試合中にマイボトルに入れた水を飲むのを見る機会がありました。彼らは常に自分の身体に必要と思われる水を選んで飲んでいます。特に中心となるのが弱アルカリ性の水です。彼らにとって水分補給は極めて大事なのでその飲み方を見てみると、喉の渇きを感じる前にチビリチビリとこまめに飲んでいました。スポーツ選手はこの飲み方で1日に1.5~2リットルの水を飲むといいます。こうした水の飲み方をウォーターローディング法と呼びます。もともとは、プロスポーツ選手が持久力を高め、成績の向上を目標として開発された方法です。試合前の一定期間、毎日1.5リットル以上の水を飲み、体内を水で満たしておきます。すると、試合中に水分を失っても運動能力の低下が防げます。

◆ミネラル成分が溶けている水を
 水をこまめに飲んでいると血管内壁の内皮細胞の柔軟性が高まり、血液の流れが良くなります。その結果、体内の新陳代謝が活性化します。この水の飲み方は体質改善にも有効で、免疫力強化にも役立ちます。その際の水は体液に近い弱アルカリ性であること、弱アルカリ性の水は酸化還元力が高いので、活性酸素によって酸化された細胞を元の状態に戻す力が強くなります。天然水であれば、pH7.5以上の水が良いでしょう。
 体内は通常、体表面の皮膚や胃の中などを除いて弱アルカリ性に保たれています。しかし、疲れてくると酸性に傾くので、弱アルカリ性の水は体内のpHを調整してくれ、老廃物を排泄し、内臓を活性化する作用があります。近年、炭酸水が疲労回復や血流促進の働きがあるとして人気となっていますが、炭酸水は酸性水なので、飲む時はチビリチビリではいけません。食事の前にコップ1杯の炭酸水を一気に飲むと満腹感が得られて、ダイエットにつながります。それ以外の飲み方はお勧めしません。
 体質改善に最も大事なミネラル成分は、カルシウム・マグネシウム・ケイ素です。これらは免疫細胞を正しく働かせ、腸のぜん動運動を活発にして便通を良くします。また、皮膚や粘膜の炎症を抑える作用があるので、ウイルス感染症を防ぐのにも適しています。そのためにはこれらのミネラル成分がイオン化して含まれている弱アルカリ性の水をチビリチビリ、絶えず飲むことです。これは手をアルコールで消毒するくらいに必要なことなのです。イオン化された粒子は細かく、体内での吸収性に優れています。カルシウムの吸収性を高めるにはマグネシウムの補助が必要です。マグネシウムは腸内細菌を活性化するとともに糞便の塊を大きくする働きがあり、便秘解消作用があります。水に溶けているカルシウムやマグネシウムはイオン化しているといい、これらの量は硬度という数値で表します。体質を改善するには硬度が高い水が良いといいます。

◆寝る前にはコップ1杯の水
 就寝前には弱アルカリ性の常温の水をコップ1杯飲むようにしましょう。夜中にトイレに起きた時にも1杯飲むと良いでしょう。水を飲むとトイレに行きたくなり眠れないと言って水分補給を控える人がいますが、就寝中は体内の水分が失われて血液がドロドロになるので高血圧の方では起床後、動脈硬化で脳梗塞や心筋梗塞を起こす危険性が増します。
 逆に、就寝前の食事は胃腸に負担がかかるので避けましょう。日頃からマイボトルを持ち歩き、水をチビリチビリと飲み、ウイルスを胃へと流し込みましょう。食べ物と一緒にウイルスが気管に入ると誤嚥性肺炎が起こります。高齢者は免疫力が低下し、吐き出す力も弱くなっていますので感染すると重症化しやすくなります。日頃から密閉空間には行かない、大声を出して人と話をしない、宴会や食事会にも行くのもやめましょう。子供や若者は感染しても症状を示さないので、高齢者は子供などと接触する機会を作らないようにしましょう。よく手を洗い、プロスポーツ選手のようにマイボトルからのウォーターローディング法で水を飲む習慣を身につけましょう。

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VOL.287『夜の睡眠が免疫力を上げる』 [眠り]

◆睡眠の重要性
 睡眠とはどれほど重要なのでしょうか。近年、夜間の睡眠が予想以上に心身の健康に良い影響を及ぼすことが分かってきました。睡眠に対する欲求は食欲や喉の渇きなどと同様で生理的なものです。そして睡眠の目的は、免疫機能の働きから適切なホルモンバランス、精神の健康、学習や記憶、脳からの有害物質の排除など、様々な生理的過程を最適な状態に機能修復させることです。
 人間は睡眠なしでは生きられません。かつて睡眠は、皮膚の表面から血液が後退し、胃で温かい蒸気が溜まることによって誘発されると考えられていました。20世紀末になると睡眠と脳波の活動、呼吸パターン、血中ホルモンなどの分子量の日内変動を調べる試みが進みました。その結果、心身が適切に機能するには夜間に十分な睡眠をとることが無条件に必要であることが分かりました。しかし現代人はギリシャ神話の夢の神、モルペウスの鎮静の手に自らを委ねる時間がどんどん少なくなっています。

◆睡眠不足と病気
 1989年には、睡眠が不可欠であることを示す明確な証拠がエバーソンによって発表されました。根拠として睡眠を完全に奪われたラットが1ヶ月以内に死んだからだとしています。ラットの直接の死因は解明されていません。ストレスの増加や過度のエネルギー消費、体内の温度調節機構や免疫機能の失調なども死因ではありませんでした。
 通常、一晩徹夜して睡眠時間が不足しただけでもホルモン作用や感染症に対する防御機構が損なわれることが知られています。肝炎ウイルスの予防接種に対するカラダの反応を調べた研究では睡眠時間が短いと免疫力が急激に低下することが分かっています。2003年の研究では大学生にA型肝炎ワクチンを注射し、半数はその日の夜に通常通り睡眠をとらせ、残りの半数には一晩中起きているように指示しました。4週間後、大学生から血液のサンプルを採取して、ワクチンに含まれているウイルスに反応した免疫が作り出される抗体量を測定した結果、睡眠をとった大学生の方が睡眠をとらなかった大学生よりも97%以上も高値の抗体濃度を示しました。また、成人に標準的なB型肝炎ワクチンを6ヶ月間に3回接種した実験(3回繰り返すことで免疫力が高まる)で夜の睡眠時間も記録した結果、1回目のワクチン接種から1週間の平均睡眠時間と2回目のワクチン接種後の抗体濃度を比較したところ、睡眠時間が1時間増えると抗体濃度が56%増加しました。そして、最後のワクチン接種から6ヶ月後、最初のワクチン接種後1週間の平均睡眠時間が5時間以下だったヒトは血中の抗体量が極めて少なかったことも分かり、その後にB型肝炎ウイルスに感染した場合に再感染する可能性や保護されない確率が7倍以上と高い結果になりました。
 睡眠不足がホルモン機能を低下させるという研究では、若い健常人に睡眠時間を4時間に制限して5日間続けると、血液中のブドウ糖量が40%減少しました。別の研究では同じく睡眠時間を4時間に制限し、2日続けた結果、血中の食欲促進ホルモンであるグレリンが30%増加し、食欲抑制ホルモンのレプチンが20%減少しました。つまり、睡眠時間の減少が体重増加につながるというのです。6〜9歳の小児では睡眠時間が6時間以下で生活していると肥満になる確率が50%上昇し、2型糖尿病発症のリスクが高まります。

◆7〜8時間は眠ろう
 睡眠時間は免疫機能やホルモン機能に多大な影響を与えます。今や、日本国内でも感染経路が分からない新型コロナウイルスの感染が広がっています。医師や看護師などの医療従事者の感染も起こっています。ワクチンも治療薬もない今、各自が積極的に予防することが必須です。その1つとして、自分の免疫力を高める必要があります。夜間に大人なら7〜8時間、子供なら10時間の十分な睡眠時間を確保することは極めて重要です。そして人が多く集まる密閉空間での集会や食事はできるだけ避けて身を守りましょう。

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VOL.286『アレルギー疾患で免疫力が低下している』 [生活]

◆2人に1人がアレルギー疾患
 今や、日本人の2人に1人がアレルギー疾患の時代ですが、日本にアレルギーが登場したのは1960〜1970年代です。当時は高度経済成長期で、工場からの排出ガスや車の排気ガスによる大気汚染が社会問題となっていました。その後、日本人の清潔志向と公衆衛生の改善により、大気汚染の規制が強化され、自然環境や生活環境の改善が進んだため、寄生虫などによる感染症は激減しました。一方で、住宅構造の密閉化が進み、そのせいでダニやカビが増殖し、アレルギーの原因となってアレルギー疾患が急増したのです。これは日本人の体質の弱体化であり、免疫力の低下を示しています。
 本来、体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体を攻撃し排除するのが免疫の働きです。しかし、抗菌薬や除菌薬、抗生物質の過度の使用によって、免疫機能が弱体化し、アレルギー疾患となる人が急増したのです。アレルギー疾患には花粉症やアレルギー性鼻炎・アレルギー皮膚炎・アトピー性皮膚炎・気管支喘息・食物アレルギーなどがあり、発現には個人差があります。しかし、いずれのアレルギー発症にも根底には免疫力の低下があるのです。

◆免疫力の低下
 今日、日本人は最も清潔志向の強い国民で、世界一免疫力が低下した国民であると言えます。抗菌薬・除菌薬・抗生物質の過剰使用によってウイルスが耐性を持ち、生き延びて増殖しやすくなっているからです。その証拠が院内感染で、最も怖いのが老人ホームや介護施設での感染です。入居者のほとんどは高齢者で、免疫力が極端に低下している状態のため、感染すれば重症化し、死に至る可能性が高くなります。過去に日本ではウイルス感染者にも抗菌薬や抗生物質を治療薬として使用していました。これらの薬は細菌には効果がありますが、ウイルスに対しては効果がありません。また、それらの薬剤を家畜や養殖の魚の餌にも使用してきました。その目的は病気の予防と成長の促進です。現在、薬剤耐性菌が最も多い国は中国で、ついでインドとなっています。日本ではアレルギーの増加によって薬剤の使用量が減りましたが、免疫力は最も低い国民のままです。アレルギー疾患の改善や薬剤耐性菌の脅威から身を守るためには免疫力を強化するしかありません。
 通常、田舎に住む人より都会に住む人の方がアレルギーになりやすく、しかも、都会では15歳以下からの発症率が高く、特に花粉症の低年齢化が進んでいます。1960年以前の人はスギ花粉を吸い込んでも花粉症にはなりませんでした。アレルギーは体質を変えなければ改善しません。そのためにまず変えるべきは飲み水です。身体は60〜70%が水分でできています。幼児に至っては80%以上が水分です。体内の水は血液やリンパ液として循環し、栄養素や酸素を運び老廃物を排出します。体温や体内の浸透圧を常に一定に保ち、細胞間の乱れをチェック調節してバランスを整えます。体質を変えるのも水です。ミネラル成分を豊富に含む自然水や天然水で、弱アルカリ性(pH7.5以下)で酸化還元力を持つものが最適です。ミネラル成分では特にケイ素・カルシウム・マグネシウムが重要で、これらは細胞膜を強くする働きがあります。細胞膜が丈夫であれば炎症を抑えられます。水溶性のケイ素は体内のコラーゲン生成を助け、免疫機能であるNK細胞の働きを活性化します。

◆免疫力を上げて感染症を防ごう
 感染症を防ぐために石鹸で手を洗うことは大切ですが、皮膚には常在菌がいて弱酸性のバリアでウイルス感染を防いでいるので、薬用石鹸を使用すると皮膚常在菌まで減らしてしまい、ウイルスが付着しやすくなります。頻繁に薬用石鹸で手を洗うと弱酸性のバリア力が低下してしまいます。
 新型コロナウイルスの感染症を防ぐには、ケイ素やカルシウム・マグネシウムなどのミネラル成分が豊富な弱アルカリ性の水を飲んで、体内の水分バランスを整え、免疫力を上げることです。水分量を増やして細胞粘膜の間隔を無くすことでウイルスの侵入が防げます。また、細胞間の間隔を塞ぐことは、タンパク質による抗体産生を防ぎアレルギー発症の予防にもなります。

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VOL.285『心臓の老化を防いで長生きしよう』 [長寿]

◆心臓病のリスク年齢
 60歳を超えると心臓病(不整脈や心房細動)の発症が急激に増えて、若年層の10倍以上となることから、60歳は心臓病のリスク年齢と呼ばれます。2018年の人口統計によれば60歳以上の人は6000万人を超え、全人口の34.6%となりました。
 なぜ60歳を超えると不整脈や心房細動が増えるのでしょうか。それには老化現象が関係しており、心臓も老化するからです。近年、50歳以上の女性の中には美魔女と呼ばれる実際の年齢にはとても見えない若々しい人が増えています。しかし、一見若々しく見える人でも、手や首筋にはシミやシワが出てきます。視力も低下しますので拡大鏡メガネが流行しています。つまり、悲しいことですが老化はすべての臓器や器官で進むということです。

◆心臓も老化する
 例えば、首筋の皮膚をつまんで離すとなかなか元に戻らないのは皮膚の柔軟性が失われている証拠で、同様に心臓も老化するので柔軟性が失われます。心臓の柔軟性が失われると、一番影響を受けるのが心臓の拡張です。心臓は動脈血を心室に送る臓器ですが、その心室の拡張がうまくいかなくなると同時に心房にも影響が出ます。左心房と左心室の間では血液が一方向にだけ流れます。左心房には逆流しないように僧帽弁があり、僧帽弁は左心室が収縮する時には閉じて逆流を防ぎます。拡張する時には僧帽弁が開き、左心房から左心室に血液が送られます。この時、左心室がうまく拡張しないと左心室の圧力が高まり、左心房にも圧力がかかります。左心室は全身に血液を送るので筋肉が厚く、左心房は薄くできています。そのため、心臓の老化現象が進むと左心房の方が圧力で拡大します。こうして不整脈や心房細動が生じます。すると、疲れやすさや息切れ、心不全などの症状が起きます。
 特に、健康のためマラソンやジョギングをしている60歳以上の人に心臓の老化が進んでいます。若い頃にスポーツをしていたので、いつまでも体力に自信があり、走ることにも抵抗がないという人が最も危険な状況を作ります。また、仕事に集中し、人生を自分中心に生きてきたキャリアウーマンにもこの傾向は強く、40〜50代でも心臓の老化が進んでいる人がいます。女性の場合は特に、老化しないようにと紫外線から肌を隠すなど様々な対策をします。基礎化粧品にこだわり、肥満を防ぐためにジムに通って運動し、食事は糖質の摂取を控え、肉類などのタンパク質を中心にサプリメントや栄養ドリンクを常飲するなど、美容を心がけて若さを保つためにあらゆる知識を入手し利用しています。それでも心臓の老化は防げないのです。老化を予防するカギは、毎日の食生活にあるようです。

◆老化を防ぐポリアミン
 最近、ポリアミンと呼ばれる物質が注目されています。まだ動物実験の段階ですが、ポリアミンをマウスの餌に混ぜて与えると心臓の老化が予防され、寿命が延びることが分かりました。ポリアミンはヒトの体内の各部位に存在する物質で、特に母乳中に豊富に含まれています。ポリアミン量は出生後10日から2週間位に最も多くなり、加齢とともに徐々に減少します。ポリアミン量と老化の関係はマウスでの実験結果から推測すると、80歳まで生きた人は100歳まで生き延びるという計算になります。しかし、寿命が延びても健康でないと意味がありません。動物実験の結果がそのままヒトにあてはまるとは言えませんが、ポリアミンは寿命だけでなく加齢に伴う認知機能の改善にも有効なようです。
 ポリアミンを多く含む食品は大豆や小豆・しいたけ・マッシュルーム・ピーマン・えんどう豆・とうもろこし・オレンジなどの柑橘類・小麦胚芽・ピスタチオ・ブルーチーズ・サザエやバイ貝の内臓・たらこ・いくら・牛モツ・鶏レバーなどがあります。そして人気の高い地中海料理などに使われる魚介類やオリーブオイル・ナッツ類は老化防止や心臓病の予防に効果があると言われています。和食にも魚類・貝類・キノコ類・納豆・大豆・小豆などが多用されるのでポリアミンが豊富に含まれています。
 心臓が元気なら健康で長生きできます。50歳を過ぎたら走る運動よりも歩く運動に変えましょう。規則正しい生活週間、水分補給、睡眠時間の確保、笑いの絶えない人間関係などを基本に心臓に負担をかけずに生活することで老化を予防し、元気に長生きしましょう。

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VOL.284『カラダを守る苦味成分』 [体]

◆苦味受容体(T2R)
 舌にある味蕾は食べ物の苦味・甘味・塩味・酸味・うま味の5つの味を感じます。そして消化器系の門番として口から入った食べ物に関するすべての情報を脳に提供し、脳が飲み込んでも良いものか否かの判断をします。
 味蕾を形成する細胞には味覚受容体が存在しており、その中の苦味受容体がアルカロイドと呼ばれる植物性由来の毒性化学物質を検知します。苦味は毒物である可能性が高いので「苦い」と表現すると脳が不快であると感じます。苦味受容体は害を及ぼす可能性がある化学物質の存在を知らせるために進化してきました。有害物質の検知は生存に不可欠であることから、苦味受容体(T2R)は25種類もあります。これに対し、甘味・塩味・酸味・うま味を感じる受容体は各々1種類ずつしかありません。

◆T2Rの働き
 2009年、アメリカ・アイオワ大学の研究者が肺の内面を覆う上皮細胞にT2Rが存在することを発見しました。肺に吸い込まれた病原体や刺激物質は上皮細胞の粘液で捕らえられ、細胞表面の線毛が1秒間に8〜15回動いて喉に向かって押し戻されます。戻された刺激物質は体外に吐き出されます。この時、T2Rが苦味物質によって刺激されると肺上皮細胞の線毛運動が激しくなることが分かっています。さらに、コロラド大学の医療研究チームは鼻腔内で刺激物質に反応する特殊な細胞表面で苦味受容体が活発に働くことを見つけました。ヒトでは鼻や副鼻腔の内面の線毛に数種類のT2Rタンパク質があります。舌上の味蕾には2つのタイプのT2Rが存在します。
 白色人種では特定の苦味物質を全く感じない味盲者が30%おり、非常に苦いと感じる超味覚者が20%います。この2つの違いは遺伝子の塩基配列を解読して分かりました。一般的にT2Rの味覚検査に使われるフェニルチオ尿素(PTC)を細胞表面に滴下すると超味覚者は大量の一酸化窒素を作るのですが、味盲者は何も生産しません。この実験結果から苦味受容体(T2R)と免疫に関連性があることが分かったのです。 一酸化窒素が気道の細胞を刺激して線毛運動を活発にすることで侵入した病原体を直接殺します。一酸化窒素は気体なので気道の上皮細胞から粘液中に速やかに拡散します。そして病原体内に入ると膜酵素やDNAに損傷を与えます。通常副鼻腔は常に大量の一酸化窒素を作り出しています。それが気道中に拡散して病原体への感染を防いでいます。つまり、T2Rが舌と鼻腔で病原体の侵入を防いでいるのです。
 舌や鼻腔のT2R苦味受容体が刺激されると、細胞は周囲の細胞にシグナルを送り、ディフェンシンと呼ばれる抗菌タンパク質を気道の粘膜中に放出させます。ディフェンシンは緑膿菌やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの病原体を殺します。しかし甘味受容体が刺激されると苦味受容体の活動を遮断します。これは不適切な時にディフェンシンを放出し過ぎるのを防ぐためです。

◆苦味成分で感染予防
 早期警戒タンパク質としてはToll様受容体が知られていますが、Toll様受容体もT2Rと同様に病原体が作り出した特定の分子に刺激されて免疫反応を活性化します。Toll様受容体が数秒から数分以内に反応すると、それを受けて苦味受容体は一種の臨戦態勢となり、即座に反応を起こすので感染初期には最も重要な防御機構であると言えます。2014年には尿路系の泌尿器でもT2R苦味受容体が最も重要な防御機構であることが分かりました。T2Rを使って膀胱を刺激し、排尿を促すことで膀胱の感染症を防げます。
 感染症の新薬として使われるのはまだ先になりそうですが、毎日食べたり飲んだりする食べ物に含まれる苦味物質の研究が急速に進んでいます。現在、新型肺炎C型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、感染者や死亡者が増えています。発症していなくてもウイルスを持っている可能性があり、本人が気づかないうちに感染を広げているかもしれません。自衛するしか方法はありません。苦味成分を多く含む食品を摂って感染防御力を高めましょう。

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