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VOL.285『心臓の老化を防いで長生きしよう』 [長寿]

◆心臓病のリスク年齢
 60歳を超えると心臓病(不整脈や心房細動)の発症が急激に増えて、若年層の10倍以上となることから、60歳は心臓病のリスク年齢と呼ばれます。2018年の人口統計によれば60歳以上の人は6000万人を超え、全人口の34.6%となりました。
 なぜ60歳を超えると不整脈や心房細動が増えるのでしょうか。それには老化現象が関係しており、心臓も老化するからです。近年、50歳以上の女性の中には美魔女と呼ばれる実際の年齢にはとても見えない若々しい人が増えています。しかし、一見若々しく見える人でも、手や首筋にはシミやシワが出てきます。視力も低下しますので拡大鏡メガネが流行しています。つまり、悲しいことですが老化はすべての臓器や器官で進むということです。

◆心臓も老化する
 例えば、首筋の皮膚をつまんで離すとなかなか元に戻らないのは皮膚の柔軟性が失われている証拠で、同様に心臓も老化するので柔軟性が失われます。心臓の柔軟性が失われると、一番影響を受けるのが心臓の拡張です。心臓は動脈血を心室に送る臓器ですが、その心室の拡張がうまくいかなくなると同時に心房にも影響が出ます。左心房と左心室の間では血液が一方向にだけ流れます。左心房には逆流しないように僧帽弁があり、僧帽弁は左心室が収縮する時には閉じて逆流を防ぎます。拡張する時には僧帽弁が開き、左心房から左心室に血液が送られます。この時、左心室がうまく拡張しないと左心室の圧力が高まり、左心房にも圧力がかかります。左心室は全身に血液を送るので筋肉が厚く、左心房は薄くできています。そのため、心臓の老化現象が進むと左心房の方が圧力で拡大します。こうして不整脈や心房細動が生じます。すると、疲れやすさや息切れ、心不全などの症状が起きます。
 特に、健康のためマラソンやジョギングをしている60歳以上の人に心臓の老化が進んでいます。若い頃にスポーツをしていたので、いつまでも体力に自信があり、走ることにも抵抗がないという人が最も危険な状況を作ります。また、仕事に集中し、人生を自分中心に生きてきたキャリアウーマンにもこの傾向は強く、40〜50代でも心臓の老化が進んでいる人がいます。女性の場合は特に、老化しないようにと紫外線から肌を隠すなど様々な対策をします。基礎化粧品にこだわり、肥満を防ぐためにジムに通って運動し、食事は糖質の摂取を控え、肉類などのタンパク質を中心にサプリメントや栄養ドリンクを常飲するなど、美容を心がけて若さを保つためにあらゆる知識を入手し利用しています。それでも心臓の老化は防げないのです。老化を予防するカギは、毎日の食生活にあるようです。

◆老化を防ぐポリアミン
 最近、ポリアミンと呼ばれる物質が注目されています。まだ動物実験の段階ですが、ポリアミンをマウスの餌に混ぜて与えると心臓の老化が予防され、寿命が延びることが分かりました。ポリアミンはヒトの体内の各部位に存在する物質で、特に母乳中に豊富に含まれています。ポリアミン量は出生後10日から2週間位に最も多くなり、加齢とともに徐々に減少します。ポリアミン量と老化の関係はマウスでの実験結果から推測すると、80歳まで生きた人は100歳まで生き延びるという計算になります。しかし、寿命が延びても健康でないと意味がありません。動物実験の結果がそのままヒトにあてはまるとは言えませんが、ポリアミンは寿命だけでなく加齢に伴う認知機能の改善にも有効なようです。
 ポリアミンを多く含む食品は大豆や小豆・しいたけ・マッシュルーム・ピーマン・えんどう豆・とうもろこし・オレンジなどの柑橘類・小麦胚芽・ピスタチオ・ブルーチーズ・サザエやバイ貝の内臓・たらこ・いくら・牛モツ・鶏レバーなどがあります。そして人気の高い地中海料理などに使われる魚介類やオリーブオイル・ナッツ類は老化防止や心臓病の予防に効果があると言われています。和食にも魚類・貝類・キノコ類・納豆・大豆・小豆などが多用されるのでポリアミンが豊富に含まれています。
 心臓が元気なら健康で長生きできます。50歳を過ぎたら走る運動よりも歩く運動に変えましょう。規則正しい生活週間、水分補給、睡眠時間の確保、笑いの絶えない人間関係などを基本に心臓に負担をかけずに生活することで老化を予防し、元気に長生きしましょう。

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