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VOL.254『尿トラブル対策にできること』 [体]

◆洋式トイレの弊害
 日本では近年、多くの家庭で洋式のシャワートイレとなり、和式トイレはわずかに残るのみとなっています。特に高齢女性では洋式トイレが楽で便利なため、和式トイレを使う人がいません。しかし、排尿や排便時の姿勢から見ると、女性の排尿・排便には和式が適しているのです。
 洋式トイレは膀胱炎になりやすいという報告があります。膀胱炎の原因は大腸菌で細菌が外尿道口から侵入することで感染します。女性は尿道が短く、外尿道口から侵入した大腸菌が膀胱内に入りやすいため、圧倒的に男性より感染しやすいのです。肛門付近には大腸菌が多数存在しており、洋式トイレで足を閉じて排尿することで感染しやすくなります。特に、便秘の人は排便が困難なので膀胱炎になるリスクが高くなります。一方、和式トイレは足を大きく開くので肛門と外尿道口の距離が離れて大腸菌の侵入を防ぐことができます。また足を開いて踏ん張ることは、排尿・排便を調整することに関与する骨盤底筋を自然に鍛えることができる上に、排便を促進し、腸の蠕動運動も活発にします。高齢の女性では夜間の頻尿や尿失禁の予防にもつながります。全てにおいて和式の方が好都合であると言えるでしょう。そこで洋式を使用するときにも足を開いて便座に座るといいでしょう。

◆尿トラブルには水分補給
 膀胱炎を予防するためには、尿道周囲を清潔に保つことに加えて、大腸菌が定着しないように水分をたくさん摂り排尿量を増やすことも大切です。もちろんトイレを我慢するのは厳禁です。夜中にトイレに行く回数が増えて睡眠不足になるからと寝る前に水分を摂るのを控える人がいますが、むしろ寝る前にはコップ1杯の水を飲んだ方が健康には良いのです。人は加齢とともに睡眠時間が減る傾向にあり、減少した睡眠時間は15〜20分程度の昼寝で補えば睡眠不足を解消できます。
 また、高齢の女性は頻尿や尿漏れを気にするあまり、トイレに行く回数を減らそうとして水分の摂取量を減らしてしまいます。頻尿や尿漏れの原因は水分摂取量ではなく、膀胱の筋力低下による機能低下です。水分量を減らすと水分不足の脱水状態となり、逆に頻尿や尿漏れ、尿失禁は悪化します。水分不足のため血液もドロドロ状態になり、血流が悪化します。その結果、動脈硬化となり脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすくなります。体内の水分量が減り、脱水状態になることで排尿の機会が減りカラダが酸性に傾くと、体内の有害物質を排泄する機会が減ってしまいます。体液のpHバランスは崩れ、感染症を起こす確率も高まります。
 水分は1日あたり1.5〜2リットルを目安に摂取します。頻繁に水を飲むとトイレに行く回数が増えますが、頻尿や尿漏れを理由に外出を控えてはいけません。自宅で寝ていないで尿失禁対策グッズなどを利用し、外に出ましょう。歩くことで骨盤底筋に負荷をかけ、股関節を動かし、変形性関節を予防しましょう。それが肥満を予防し、解消することにもつながります。食事は食物繊維豊富な和食を摂り、腸内細菌のバランスを整えることで便秘が防げます。アルコールやコーヒーなどのカフェインを含む飲み物は適度に嗜みましょう。

◆運動で筋肉を鍛えよう
 高齢者向けの運動教室も尿トラブルの改善に役立ちます。週に1度、60〜90分ほどで十分です。カラダを動かすことが大切で、教室へ自分の足で行くことにも価値があります。健康体操や柔軟体操では同年代の人と会話できるので認知症対策に効果的です。運動が目的なら、散歩が一番です。肥満の予防や解消になり、骨盤底筋や大腿骨筋を鍛えることができるとともに、足腰を強くできるので、骨折や寝たきりなどの要介護の予防にもつながります。散歩する際には汗をかくので、水を持参し、こまめに水分補給することが大切です。
 頻尿や尿漏れは加齢に伴う生理現象であり、誰もが経験する当たり前のことです。これは腎臓や膀胱の機能が低下していることを示しており、特に気をつけたいのは膀胱炎などの感染症です。和式トイレの姿勢で排尿・排便してみてはいかがですか。

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VOL.253『基礎代謝と水溶性食物繊維』 [体]

◆日本人にとって肉食は
 近年、子供や若い女性の肉食化が急速に進んでいます。もともと狩猟や家畜飼育の民族であり、肉食が中心でそれが遺伝子に組み込まれている欧米人には肉類を分解消化する酵素が大量に分泌されます。それに対して農耕や木の実を採取して野菜や魚類が食事の中心であった日本人はそのような遺伝子を持っていないので、肉類を分解消化する酵素の分泌量はわずかです。そのため肉類は小腸でアミノ酸まで分解されず、未消化のタンパク質のまま吸収されずに存在します。アミノ酸まで分解されれば小腸から吸収されます。大量の肉をよく噛まないで食べ続けると、肉を分解消化する酵素を分泌する臓器は徐々に疲弊してきます。そのため、最近、中年から高齢女性に膵臓ガンが急激に増加しているのです。

◆日本人の遺伝子と腸内細菌
 日本人は、飢餓の時代を生き延びるため脂肪を蓄える遺伝子を受け継いできたので、両親が太っている子供が肥満になる確率は80%以上となります。一方、両親とも普通体重の子供の肥満は10%以下となっており、太りやすい体質は遺伝することが分かります。そして、日本人の肥満では遺伝の他にその人の持つ基礎代謝の環境要因が遺伝子の発現を強めます。同じものを同じように食べても太りやすい人と太りにくい人がいるように個人差が生じるということです。しかし、基礎代謝が低いから太るとは限りません。肥満は遺伝よりも生活習慣に起因することが多いので、太りやすい体質の人は生活習慣に気をつけることです。若い頃には普通体重であっても40歳を過ぎると基礎代謝が下がり、積もり積もった不適切な生活習慣によって太り、皮下脂肪、特に内臓脂肪が増えてきます。しかも、太りやすい遺伝子を持つ人が太りやすい生活習慣を送っていると急激に肥満になります。
 肥満は腸内細菌ともリンクしています。通常、腸内細菌は100兆個生息していると言われます。それらは腸内でしか生きられず、その人と一生共に過ごします。腸内細菌は、食物に含まれる消化しにくい食物繊維を酵素で分解し、栄養素として利用できるようにします。そのため腸内細菌の種類とその比率が変化すると、カラダの健康を維持できなくなり、肥満も導きます。マウスを用いた実験で、太った人の腸内細菌を移植するとそのマウスは太ってきます。これは腸内細菌の種類の違いによるものです。ダイエットで体重を減らすと、肥満に関連する腸内細菌が減少し、痩せ型に関連する腸内細菌が増えます。このように、腸内細菌のバランスは肥満度に関連しているのです。
 肥満を導く腸内細菌は食物から栄養素を取り出す力が強いため、この種類の腸内細菌が多量に生息していればエネルギーを吸収して太ります。これに対して、痩せた人の腸内細菌は短鎖脂肪酸を合成します。短鎖脂肪酸は水溶性食物繊維を腸内細菌が分解することで合成される脂肪酸です。水溶性の食物繊維を多量に摂取するとエネルギー消費が高まり、内臓脂肪が中性脂肪を取り込むのを防ぐので、太らなくなるのです。水溶性食物繊維は海藻類やキノコ類、山芋などに豊富に含まれています。食事の際にはまず水溶性食物繊維を含む食品から食べ始めることで、腸内細菌のバランスが変化し、中性脂肪の取り込みを抑制するので太らなくなります。

◆筋肉量を保ってダイエット
 筋肉は30歳頃から徐々に落ちてきます。太ももの筋肉量は毎年1%ずつ失われます。筋肉は足から減少するのです。筋肉量が減少すると基礎代謝も減少するので、脂肪が蓄積してきます。これに甘い食べ物の摂取が加わると、急激に脂肪の蓄積が進みます。適度な運動をせず、食事だけで脂肪を減らすダイエットは一時的で効果が続きません。つまり、元の食生活に戻ると減量した分が直ちに戻り、筋肉量だけが減った肥満となります。これは健康的にとても問題があります。健康的にダイエットするには、野菜や水溶性の食物繊維を摂取して、散歩程度の適度な運動を続けることです。これが脂肪を減らし、肥満を予防します。
 
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