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VOL.276『オステオカルシンが老化を予防する』 [長寿]

◆オステオカルシンって何?
 若さを保つ骨の働きとは何でしょう?その中心となるのが『オステオカルシン』です。
コロンビア大学の教授J.カーセンティのグループは2007年の論文で、骨から出るオステオカルシンが全身の臓器に指令を出していると発表しました。糖尿病では膵臓や腸、肝臓、脂肪などに働きかけてインスリンなど糖尿病の発症に関与するメーセージ物質の量を調節し、実験的にオステオカルシンを作れなくしたマウスでは海馬が小さくなり、記憶力が低下しました。また、筋力を保つ効果や生殖能力を上げる効果も見られ、オステオカルシンは若さを保つというメッセージとして働いているというのです。骨から出るホルモンにはオステオカルシンの他にオステオポンチンがあります。オステオポンチンは免疫細胞の数を増やす効果があり、免疫力を上げる効果があります。

◆骨は生きている
 なぜ骨が若さを保つためにコントロールしているかというと、それは人類の進化とも関連があります。爪や毛髪、皮膚などの新陳代謝は目に見えるので分かりやすいですが、新陳代謝は体内でも起きており、硬い組織である骨においてもそれは同じです。骨は日々、骨芽細胞と破骨細胞によって作られたり壊されたりしていて、これを骨の代謝回転と呼びます。常に破骨細胞が優位に働けば、骨はスカスカになりボロボロの骨粗鬆症となります。逆に骨芽細胞が優位に働けば骨は成長し、丈夫になります。骨細胞が分泌するスクレロスチンと呼ばれるホルモンは骨芽細胞に働きかけ、骨の形成にブレーキをかけます。骨細胞はこの物質で骨全体をコントロールしています。
 若さを保つという骨の働きは、骨への刺激が多いほど活性化する傾向があります。運動による刺激を感知する骨はその衝撃のセンサーです。運動をしないとそのセンサーは働かずに退化していきます。すると骨折しやすくなり、寝たきりを招き、死亡率が上がります。現代人は昔の人に比べると歩いたり走ったりする時間が激減しています。健康寿命を目指すのであれば体重を重力に逆らって支えている骨を刺激して自分に適した運動で鍛えることです。
 硬い骨の中心部には空間があり、その内部には骨髄という細胞組織が詰まっています。この骨髄から赤血球や白血球などの血液成分が作られます。白血病はこの骨髄に異常が起こり、血液が作れなくなる病気です。治療のためには他人の骨髄を移植しなければなりません。骨髄内の造血幹細胞を増殖させるためにドナー(骨髄を提供する人)にG-CSF(コロニー刺激因子)を注射すると、数日後には血球細胞が大量に増えます。造血幹細胞は、胎児の時に大動脈の周辺で生まれ、その後肝臓に移って血液を作り続け、出産が近づくと骨に移動します。つまり、最も重要な細胞は安全に守られる硬い骨の中に移動するということです。骨細胞が運動の刺激を検知し、造血幹細胞に働きかけて血液成分の若さを保ちます。血液成分は次から次へと新しい細胞に作り替えられていくので、若さが維持されるのです。

◆運動で刺激を与えて若々しく
 血糖値が高い糖尿病ではインスリンの分泌量が減少するので骨の強度が低下し、骨質が悪化します。同時にコラーゲンの劣化も起こります。特に、関節軟骨のコラーゲンは皮膚のコラーゲンに比べて長寿命なので、老化のダメージも長く大きく受けます。
 その時、オステオカルシンが骨や関節の若さを保つように働きます。オステオカルシンを活性化して働きやすくするのがカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分です。これらのミネラル成分は、水溶性で小腸からの吸収性に優れた弱アルカリ性のイオン化した成分であることが重要です。
 骨は常に体内にオステオカルシンを放出して各臓器の働きをコントロールしています。骨や関節軟骨は子供の頃から重力に逆らってカラダを支えています。運動をすることで骨や関節軟骨に刺激を与え、オステオカルシンを働かせることがカラダ全体の老化の予防につながります。

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VOL.275『生活習慣が胃腸を傷つける』 [生活]

◆日本の食生活
 日本には『喉元過ぎれば熱さを忘れる』という言葉があります。たとえ苦しいことがあっても過ぎてしまうとそのことをすっかり忘れてしまい、また同じことを繰り返すという意味ですが、苦しかった時に他人から受けた恩を軽んじるという意味でも使われます。この言葉のように口から熱いものを飲み込んだ時、熱いと感じるのは食道に近い喉の部分です。食道
・胃・十二指腸・小腸・大腸には熱さを感じる神経がありません。昔の人はこのことを経験から知っていたと思われます。温かいお茶を飲むとお腹が温まるのは胃ではなく消化管の周囲の組織が温かさを感じるからなのです。
 関西地方の郷土料理に、ほうじ茶に米を入れて炊く茶粥があります。奈良の大仏を建立した際にはすでに食べられていたので、1300年以上の歴史を持つ料理です。熱い茶粥を食べる地域には食道ガンが多いことが知られています。急いで熱いまま流し込むことで食道の粘膜が傷つくためガンを発症するのです。粘膜が火傷して傷つき、その火傷を治そうと粘膜の細胞が活発に分裂し、それを繰り返すうちに粘膜細胞内の遺伝子に異常が生じて、そこから食道ガンが発症します。同じように、唐辛子の辛味成分カプサイシンは少量であれば胃粘膜の血流を良くして粘膜を守りますが、大量に摂取すると粘膜を刺激します。コショウや生姜の辛味成分もカプサイシンに類似した作用があり、摂りすぎには注意が必要です。

◆塩分と脂肪分
 また、日本では昔から塩分を大量に摂ってきました。食物の保存に塩分は欠かせませんが、塩分を摂りすぎると高血圧のリスクが高まります。さらに塩分摂取の多い地域では胃ガンの発症率が高いことも分かっています。昔は冬場に新鮮な食材を入手しにくかったため、魚や野菜を塩漬けにして保存していました。男性には塩を舐めながら酒を飲むという習慣もあり、動脈硬化から高血圧や脳卒中を発症し、若くして亡くなる人も少なくありませんでした。
 胃はpH1〜3の胃酸の攻撃から身を守るためにアルカリ性の粘液を出して胃壁を守っています。しかし、食道にはこの仕組みがないため、胃酸が逆流すると食道の壁がただれます。すると、食物が食道を通る際にしみる・胸がつかえる・胸やけがするなどの症状が出ます。この症状がひどくなると、胃酸が食道上部まで上がってきて気管に入り込み咳が出たり、喉が痛くなったりします。これが逆流性食道炎です。
 ガン細胞は1つが発生してガンと診断されるまでに10〜20年かかります。ガンを予防するには若いうちから生活習慣に気をつけることが重要です。肥満になると内臓脂肪が蓄積します。内臓脂肪は脂肪の量が多いだけでなく、大腸ガン・肝臓ガン・膵臓ガン・食道ガンの発症に深く関与します。20歳頃に肥満だと膵臓ガンの危険性が高まります。女性の肥満は乳ガンの発症に関与します。また10代の思春期に脂肪分の多い食事をしていると成人になって乳ガンになりやすいことも分かっています。
 脂肪分の多い食事がガンのリスクを高めるのは、脂肪分を摂取すると、胆汁が十二指腸に分泌され、脂肪を分解する時、大腸内に悪玉菌が多いと胆汁を分解してしまうのでガンを発症しやすくなってしまうからです。

◆生活習慣は変えられる
 仕事をバリバリこなす人や努力家で闘争心が強い人は交感神経が優位に働き、心が常に緊張して生活しているのでストレスを受けやすくなります。集中すると歯を噛みしめる癖がある人、首や肩が凝る人、頭痛を起こしやすい人もストレスを受けやすい人です。また、自律神経のバランスが乱れる人は生活リズムの乱れで交感神経が優位に働くので肥満になりやすくなります。健康な人は、交感神経と副交感神経が常にバランス良く働いています。この自律神経は消化管だけでなく、多くの臓器の働きを調節しています。
 規則正しい生活を続けること、塩分・脂肪分の少ない食生活をすること、適度な運動の習慣、睡眠時間の確保、弱アルカリ性でカルシウムやマグネシウムを豊富に含む水を毎日飲むことが健康につながります。生活習慣はその気になれば変えられます。心の持ち方が重要です。

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