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VOL.295『骨粗鬆症の原因は腎臓にある』 [体]

◆健康が保たれるために
 現在、日本では高齢化が進み、高齢者における骨粗鬆症が大きな問題となっています。骨粗鬆症の予防や治療は高齢者のQOL(生活の質)に深く関わります。骨粗鬆症の原因はカルシウム不足です。カルシウムは骨や歯に99.9%が存在し、残りの0.1%が血液中にカルシウムイオンとして存在しています。この血液中のカルシウム量は精密・厳密にコントロールされ一定の範囲内の濃度に保たれています。この状態が続けば健康体が維持されます。

◆カルシウム吸収に密接に関わる腎臓
 摂取する食物中のカルシウムは、ビタミンDの働きを介して腎臓に送られます。ビタミンDは腎臓で代謝を受け太陽の光を浴びることで活性化ビタミンD3に変換され、小腸からのカルシウムの吸収を補助促進します。しかし、肝臓や腎臓の機能が低下していると、骨を強化するためのビタミンD剤を服用してもビタミンDはそのまま便となって排出されてしまいます。つまり、腸管からカルシウムは吸収されず、血液中のカルシウム濃度が低下することで低カルシウム血症となります。この状態が続くと骨中のカルシウム量が減少し骨粗鬆症になってしまいます。
 低カルシウム血症になると生命維持ができなくなるので、脳の司令塔である下垂体が血液中に副甲状腺ホルモン(PTH)を大量に分泌させます。すると骨や歯に存在するカルシウムを溶かし出し、血液中にカルシウムイオンとして放出します。その結果、血液中のカルシウム濃度は上昇して正常値にまで回復します。骨や歯に含まれるカルシウムが溶かされて放出されることから、骨は脆くなって骨粗鬆症に、歯は弱く欠けやすくなります。
 カルシウムには骨や歯の構成成分であるリンがエネルギー代謝や代謝酵素として生命維持に関わっています。リンは血液中に0.03%がリン酸塩として存在し、尿や糞便中に排泄することでバランスを整えています。リン酸塩はカルシウム欠乏になるとシュウ酸カルシウムやリン酸カルシウムとなって血管壁や組織中に石灰化し沈着します。人工透析でカルシウム欠乏が急速に進むと各組織の石灰化による結石が急増します。人工透析や腎不全の人はビタミンDを大量に摂取しても活性化ビタミンD3の産生が起きないので、ビタミンDの服用は逆効果となります。腎機能が低下するのでリン酸塩の排泄も低下して高リン酸血症となり、低カルシウム血症と同様にリンを制限することとなります。
 しかし、リンの吸収力は強いためリンを制限してもカルシウムが吸着されて高カルシウム血症となり、石灰化や結石が増します。人工透析を5年以上続けていると副甲状腺ホルモン分泌が促進し、ビタミン剤を服用しても活性化ビタミンD3が産生されず、カルシウムの吸収力も低下して低カルシウム血症の状態となります。よって、腎機能が低下した腎不全の人や人工透析の人は健康を維持することが困難となります。
 通常、健常者でも加齢とともに腎臓の働きが徐々に低下してくるので、どうしてもカルシウム欠乏が進み、副甲状腺ホルモンの分泌が亢進してきます。その結果、急激にカルシウム不足となります。腎臓は沈黙の臓器と呼ばれるように、機能が徐々に低下していきます。低下に気づいた時にはすでに遅いのです。

◆ミネラル豊富な水を飲めば
 若い頃から、遅くとも中高年になったらカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分を豊富に含む弱アルカリ性の水を飲み始めましょう。2005年に骨粗鬆症の予防や改善に向けての研究として、未焼成サンゴカルシウムをマウスに4〜7ヶ月摂取させ、骨重量・骨成分・骨強度の変化を調べた結果、骨強度・たわみ率・強靭性の増強が見られました。コラーゲン代謝回転や骨代謝回転が刺激され、骨形成が優位に進み維持されたものと思われます。特にカルシウム・マグネシウム・ケイ素が骨の代謝改善への効果を示しました。未焼成サンゴカルシウムにはイオン化したカルシウム・マグネシウム・ケイ素などミネラル成分が豊富に含まれています。これらが溶け出た水を飲み続けることで副甲状腺ホルモンの分泌を抑え、骨粗鬆症の進行を遅らせることを示した研究成果です。

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VOL.294『自分の免疫力の状態を知ろう』 [体]

◆免疫力は3歳までに決まる
 人間の身体は3歳までに完成した組成を基に免疫力が構築され、風邪をひきやすいとか、アレルギーになりやすい、ガンになりやすいなどの体質が決まります。そしてこれはその後にどのような生活を送っても変えることができません。しかし、腸内細菌の組成(善玉菌・悪玉菌・日和見菌のバランス)は3歳以降も生活環境や食事内容によって変わります。特に薬剤や清潔志向で身の周りの常在菌(病原菌とは異なる)を排除する生活を続けていると、腸内細菌の善玉菌は増殖力を失って数量も種類も減ってしまいます。

◆腸内細菌にはほとんどの免疫機能が存在する
 人間は母親の胎内ではほぼ無菌の状態で存在し、産道を通る時に膣内に存在する細菌が新生児に吸い込まれ、外界に出た直後に母の持つ常在菌が新生児に受け継がれます。新生児はこれらの細菌によって免疫力が形成されます。ところが新生児はどんな常在菌でも受け入れるわけではありません。免疫機能によって強い選択性を受け、選ばれた細菌だけがその個体を形成するのです。
 腸内細菌の組成を決めているのが個人の抗体です。抗体(免疫抗体)は外部からの異物や病原体を排除し、個体を守る武器として働きます。同時に腸内細菌の種類を選ぶ働きもしているので、腸内細菌には個体のほとんどの免疫機能が存在するのです。生後3歳までに腸内に侵入してきた細菌の中で、どの細菌を腸内に住まわせ、どの細菌を排除するのかは個体のIgA抗体が決めています。このIgA抗体は母親の母乳、特に出産から数日間に出る初乳中に大量に含まれています。そのため昔から初乳を飲ませることが免疫抵抗力を維持するのに必要とされています。
 ではIgA抗体は何を基準に細菌を選択するのでしょう?これは明確ではありませんが、IgA抗体の免疫力が強くないと新生児は生まれず、生後の発育にも影響があります。新生児の成長には栄養素の吸収が必要です。小腸の繊毛と呼ばれる粘液細胞には細かな突起が多数あり、分解された栄養素(水・糖・アミノ酸・ビタミン・ミネラル成分など)の専用の入り口があります。栄養素の吸収はトランスポーターによって厳密にコントロールされており、体内で必要とされない栄養素や異物は糞便として排出されるため、小腸粘膜細胞の選別機能は神の手と呼ばれます。
 体内に取り込まれた食品は大きなタンパク質のままでは吸収されず、アミノ酸に分解され最小成分になって小腸から吸収されます。しかし、食品中のタンパク質がそのまま小腸から吸収される場合があります。この時、体内の免疫機能はこれを異物と認識し、T細胞やB細胞などの免疫細胞がこのタンパク質を攻撃排除します。これが炎症反応です。食物アレルギーの人は免疫抗体が働いてアナフィラキシーショックを起こし、血圧が急激に低下し、意識が喪失して死に至ることもあります。

◆免疫細胞とウイルスの闘いの場所が炎症となる
 アレルギーはタンパク質が小腸粘膜細胞から吸収されて発症します。このアレルギーを起こすのがIgE抗体です。IgE抗体はヒスタミンと呼ばれる化学物質を短時間のうちに放出し、激しい症状を示します。この典型例が花粉症です。日常的に食べる加工食品や和菓子などでアレルギーになる、これはIgG抗体によります。IgG抗体はIgE抗体よりも分子量が小さいので発症までに数時間から数日かかります。免疫機能が働くと外敵との闘いの場所が炎症となります。例えば風邪をひいて発熱し、喉の腫れや痛みが起き、咳や鼻水・関節痛が生じる時、免疫細胞はウイルスと闘って炎症を起こします。
 新型コロナウイルスに感染すると症状が出て肺炎になります。しかし、免疫力が高い人や若者は無症状のままで気づかずに感染源となります。毎日排便の際に自己チェックすると良いでしょう。糞便がしっかりと大きな塊であれば、あなたの免疫機能は正常に働き健康体であると言えます。糞便の色や形に変化があり、軟便や下痢の場合には無症状であっても何らかのウイルスに感染していることが考えられるので、ウイルス検査を受けましょう。

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