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VOL.296『水の大切さを再認識しましょう』 [生活]

◆地球は水の惑星
 地球は水の惑星と呼ばれ、地球の表面は水で満たされています。大気中に蒸発した水分は雨や雪となって地上に降り注ぎます。その中で人類が使用できるの水は全体の0.05%にすぎません。世界の全人口の25%の人しか生活用水を確保できていないのです。さらに地球の温暖化が進み、生活用水の汚染問題も深刻で、清潔な飲料水自体が貴重なものとなっており、その水の良し悪しが生死を分ける原因ともなっています。
 日本は衛生環境が整っており、水道水の汚染を防ぐために生活排水を減らそうとする人も増え、水の大切さをに気をつける人も増えてきました。一方、清潔志向が進む中、水道水で満足できなくなった日本人はほとんどが浄水器やペットボトルの水を飲んでいます。

◆水の汚染が進んでいる
 水は生命の維持に欠かすことができません。健康維持・美容・老化防止・寿命は毎日飲む水によってコントロールされていることをご存知でしょうか?正しく水を飲むべきところで飲まなかったり、飲んではいけないところで水を飲むような間違った水の飲み方は命を縮めます。つまり、病気や老化を早めるのです。
 日本の水道水には消毒剤として塩素が使われており、その量は他国より群を抜いて大量で、これがまずい水道水の原因にもなっています。水道水への塩素注入は飲料水を酸化還元電位の高い水に変化させ、高濃度の塩素は皮膚や粘膜を損傷します。塩素によってトリハロメタンと呼ばれる発ガン性物質も発生し、もはやこれは常識となっています。そのため、水道水をそのまま飲まなくなったとも言えるのです。また、土壌の汚染によって井戸水や地下水の水源が悪化し、産業廃棄物や金属部品加工、ドライクリーニング洗浄水、有機化学物質などによる汚染が進んでいます。しかし、日本はまだ諸外国に比べれば水に恵まれています。中には酒やジュースよりもミネラルウォーターが高価な国もあります。その理由は水の絶対量です。降水量の多い湿潤な気候、流れる河川の多さ、日本では1人あたりに供給される水の量がまだ十分に確保されています。

◆こまめに水を摂ることの大切さ
 人間のカラダは水でできていると言っても過言ではありません。喉が渇けば水を飲む、この単純なことこそ脱水症の予防に重要です。今日、カラダに良い水・世界の名水・長寿や健康維持と飲料水との関係が医学会で熱心に研究されています。日本では昔から病気を予防し、治す水として信頼が高い水が存在します。また世界各地にもそのような水があり、水が良ければその地域に住む人は長寿なのです。
 各地に名水として名高い水が存在し、その水には治癒力があります。特に多いのがミネラル成分のカルシウムやマグネシウムを多く含む水です。ストレスやイライラを和らげる効果があるので眠る30分前にこの水を飲むと安眠できる効果があり、高血圧症の人は頭に上った血が腹部に下がります。加えて硝酸性窒素が少ない水、酸化還元電位の低い水は酸化力が低く還元力が強いので、抗酸化作用が強く老化防止に役立ちます。その中心的存在がミネラル成分です。ミネラル成分は生命に欠かせない栄養素として働きます。体内で合成することができないため外部から摂取することが必要となります。特にカルシウム・マグネシウム・セレン・亜鉛・鉄・マンガン・ヨウ素・ケイ素が有効です。弱アルカリ性の水は疲労感・血流停滞・抵抗力(免疫力)の低下など新陳代謝による体調不良を防ぎ、カラダの酸性状態を中和し、体内を弱アルカリ性の健康体に導いてくれます。ミネラル成分を多く含む水は酸素原子と水素原子が結合した水分子の集合体(クラスター)を小さくして良い水になります。クラスターが小さい水ほど味を感じる味蕾が反応して美味しく感じます。さらに、水は小腸で吸収されるので細胞内への浸透力が高まって吸収性が良くなり、動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞の予防になります。
 人は水がなければ生きられません。呼吸にも水分が使われます。気温が高くなる熱中症の時期にマスクをつけているこの夏は汗を大量にかくでしょう。つまり脱水症になりやすくなります。おいしい水をこまめに飲むことで熱中症やコロナウイルスから身を守りましょう。

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VOL.293『健康意識が高く、長生きした戦国武将』 [生活]

◆戦国時代の武士
 戦国時代の人は寿命が短かったのでしょうか?戦国時代は1467年の応仁の乱から1568年織田信長の上洛までとされています。応仁の乱以降、室町幕府の権威は失われ、世の中は乱れに乱れた時代になりました。平安時代の中期から室町時代にかけては様々な災害が発生し、大飢饉や疫病(感染症)が続いて餓死しなかった人でも疫病によって死んでいく悲惨な事態が全国的に続きました。
 社会の秩序が崩壊する中で、各地に現れたのが武力・知力に優れ、人間的に魅力ある武将たちです。織田信長が舞ったことで有名になった『人間50年、下天の内をくらぶれば夢幻の如くなり』と言う敦盛の一節があります。織田信長は48歳で亡くなりました。当時の平均寿命は、武士が42歳ほどで、庶民が30歳くらいでした。戦国の武士は戦いの日々を過ごすことで庶民より寿命が短かっただろうと思われますが、武士の方が一般的に栄養や医療の面で恵まれていたようです。

◆織田信長と徳川家康
 その頃日本に30年以上も滞在していたルイス・フロイスによれば、織田信長は中位の背丈で華奢な体つきをしており、声は少し高くよく通る声だったそうです。アフリカ系の宣教師であるフロイスを見た信長は肌が黒いので墨を塗っていると思い、体を洗わせたそうです。フロイスが地球儀を見せて地球が丸いことを説明すると、信長はすぐに理解し、外国の情勢を話すように求めたといいます。性格は名誉を重んじ、正義において厳しく、戦いを好み、侮辱を許さず、決断が速く、尊大で、他の戦国武将を軽蔑していたそうです。桶狭間の戦いの前には、焼き味噌をご飯にのせて湯をかけ、立ったまま掻き込んでから出陣したそうです。
 そんな信長は日頃、早起きで睡眠時間は4〜6時間と短く、酒はあまり飲まず、月に4〜5回ほどご馳走を食べる機会がありましたが、普段は粗食で肉や魚をあまり食べませんでした。その方が胃腸がスッキリすると言って、好きなものでも食べ過ぎずに残すようにしていました。また、綺麗好きで家臣には入浴を勧め、用を足した後には下帯をほどいて衣類を振り臭気を除いてから下帯を締めなおすように細かく指示したそうです。
 一方、徳川家康は、最先端の医学書や薬学書を読み、医師を招いて議論するような健康オタクでした。家康に特に影響を与えたのが天海和尚です。天海は福島県で生まれ、家康に重んじられて107歳まで生きたと言われています。天海が家康に長生きの秘訣として伝えたのが発酵食品と粗食でした。粗食と言っても粗末な食事という意味ではありません。新鮮な食材を使いあまり手を加えず、量を少なく制限するという意味でした。
 ある年の冬、信長から家康に立派な桃が贈られてきました。桃の旬は初夏です。家康は信長の凄さを褒め称えましたが、季節外れの食材は体に良くないと考えていた家康は、桃には手をつけずに家臣に与えたそうです。天海は野菜や果物に含まれるビタミンやミネラルなどの栄養は旬の時期に最も多く、季節外になると急速に失われることを知っていました。特に家康は腐敗した食材には用心していたそうです。その頃の武士は陣中食として干飯を食べていました。焼いた米を数日間天日干しした保存食で、それを湯に浸し戻して食べるのです。それに狩りで捕らえた野鳥を焼き鳥にして食べました。肉は血管を丈夫にして筋肉がつきます。肉の中でも脂肪が少なく、タンパク質が豊富な鳥肉は健康的でした。健康に注意していた家康は73歳で生涯を閉じました。家康に仕えた大久保彦左衛門も家康を真似て質素な食事で規則正しい生活をしたので79歳まで生きました。

◆いつの時代にも通じる健康法
 戦国時代の武将は戦いの日々の中、いつ命を落とすやもしれないという不安で、常に神経をすり減らした生活の中で生きていました。大酒を飲んでいた武将は脳卒中で早死にしています。豊臣秀吉はストレス性の胃ガンだったと言われています。一方、健康を意識して普段から粗食だった武将は当時としては長生きしたようです。暴飲暴食を避け、規則正しく生活することはいつの時代にも通じる健康法であるようです。


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VOL.292『笑い方や水の飲み方で免疫力が変わる』 [生活]

◆笑うことで免疫力が上がる
 新型コロナウイルス感染症のせいで私たちは1日中自宅で過ごすことが多くなり、テレビやスマホを見ながらだらだらと過ごしがちになっていますが、ウイルスに感染しないためには免疫力を高めておくことが必要です。免疫力の70%は腸の細胞で作られます。残りの30%は心の持ち方で、ストレスを溜めないことが重要です。そのためには基本的に大笑いすることで、少なくとも1日1回以上は大声を出して大笑いする機会を増やしましょう。テレビを見ていてもつまらないと思わないで無理やりにでも笑うと、免疫力が上がります。

◆ウイルスは粘膜から感染する
 しかし、ウイルスの増殖が速く体内に侵入してしまうと、発熱・咳・味覚嗅覚障害、体調不良の症状を示します。この状態でも体内の免疫系細胞はウイルスを除去しようと闘っています。免疫系細胞の免疫力の方が強ければウイルスが感染しても症状が現れない無症状の状態が続きます。これを不顕性感染と呼びます。密閉・密集空間などウイルス感染者が多い場所に居れば濃厚接触することで大量のウイルスが体内に侵入します。また感染者と食事や飲酒、大声で話すなどすれば感染確率が高まり、ソーシャル・ディスタンスを取ったとしてもあまり意味がありません。ウイルスに感染しても直ちに症状は出ないので、自分が感染しているかどうか分かりません。また、この状態では消毒・手洗いやマスクをしてもほとんど効果がありません。
 ウイルスは通常、口腔粘膜や鼻腔粘膜、眼瞼粘膜など粘膜から感染し、皮膚からは感染しません。ウイルスが付着した手指で鼻や口、目を触ることで粘膜を介して感染するのです。人は知らず知らずのうちに鼻や口、目を1日に数10回触っており、ウイルスは人を介して生き続けるので、感染を避けるには他人との接触を避ける以外にないのです。いくら免疫力を高めても感染力の強い新型ウイルスには感染してしまいます。若い人は一般的に免疫力が高くて元気ですから、感染しても無症状のことが多く、本人も気づきません。感染しても発熱しても重症化することが少なく、軽症のまま回復します。抗体はできずに再感染したりします。

◆免疫力の上げ方
 高齢者の場合、慢性疾患を持っている人が多く、免疫力も下がりがちです。ただでさえ風邪を引きやすいため、老人性肺炎を発症し死に至ることもあります。また、高齢者は自宅にいることが多いので運動不足になりやすくなります。そこで大声を出して笑うようにすると、横隔膜の上下運動と、腹圧の増減で内臓器官が刺激され、同時に小腸や大腸の蠕動運動も活発になります。笑うことで腸が刺激され、腸の働きが良くなるので免疫力が高まります。内臓全体が刺激されることで、血液の流れが良くなり、脳の前頭葉に興奮が起こります。前頭葉はおでこの部分で思考を司る脳の司令塔です。ここがまず刺激されるので幸福感や快楽を伝える幸せホルモンが大量に分泌されます。するとさらに陽気になり、大声で笑ったり、やる気も出てきます。考え方も前向きな思考になります。声を出すと喉が乾くので、その際には水をチビリチビリと飲みましょう。水の飲み方のタイムスケジュールは、まず朝起きたら飲みます。朝は口内に細菌やウイルスが繁殖しています。これらを水とともに胃腸に入れます。胃は強い酸性なので細菌やウイルスは生きられませんし、朝の水は胃腸を目覚めさせ、便通を良くして自律神経の乱れも整います。睡眠中には体内の水分が失われ、血液がドロドロ状態になるので、朝飲む水が免疫力を高めます。その後はウォーターローディング法で水を飲みましょう。お風呂に入る前と後にも水を飲みましょう。そして夜、寝る前に飲む水は命の宝水と言われ、心筋梗塞や脳梗塞の予防につながります。特にミネラル成分豊富な弱アルカリ性の水が良いでしょう。運動不足の解消には早朝、人通りの少ない道での20〜30分の散歩が効果的です。大笑いやウォーターローディングで免疫力を高めましょう。

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VOL.286『アレルギー疾患で免疫力が低下している』 [生活]

◆2人に1人がアレルギー疾患
 今や、日本人の2人に1人がアレルギー疾患の時代ですが、日本にアレルギーが登場したのは1960〜1970年代です。当時は高度経済成長期で、工場からの排出ガスや車の排気ガスによる大気汚染が社会問題となっていました。その後、日本人の清潔志向と公衆衛生の改善により、大気汚染の規制が強化され、自然環境や生活環境の改善が進んだため、寄生虫などによる感染症は激減しました。一方で、住宅構造の密閉化が進み、そのせいでダニやカビが増殖し、アレルギーの原因となってアレルギー疾患が急増したのです。これは日本人の体質の弱体化であり、免疫力の低下を示しています。
 本来、体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体を攻撃し排除するのが免疫の働きです。しかし、抗菌薬や除菌薬、抗生物質の過度の使用によって、免疫機能が弱体化し、アレルギー疾患となる人が急増したのです。アレルギー疾患には花粉症やアレルギー性鼻炎・アレルギー皮膚炎・アトピー性皮膚炎・気管支喘息・食物アレルギーなどがあり、発現には個人差があります。しかし、いずれのアレルギー発症にも根底には免疫力の低下があるのです。

◆免疫力の低下
 今日、日本人は最も清潔志向の強い国民で、世界一免疫力が低下した国民であると言えます。抗菌薬・除菌薬・抗生物質の過剰使用によってウイルスが耐性を持ち、生き延びて増殖しやすくなっているからです。その証拠が院内感染で、最も怖いのが老人ホームや介護施設での感染です。入居者のほとんどは高齢者で、免疫力が極端に低下している状態のため、感染すれば重症化し、死に至る可能性が高くなります。過去に日本ではウイルス感染者にも抗菌薬や抗生物質を治療薬として使用していました。これらの薬は細菌には効果がありますが、ウイルスに対しては効果がありません。また、それらの薬剤を家畜や養殖の魚の餌にも使用してきました。その目的は病気の予防と成長の促進です。現在、薬剤耐性菌が最も多い国は中国で、ついでインドとなっています。日本ではアレルギーの増加によって薬剤の使用量が減りましたが、免疫力は最も低い国民のままです。アレルギー疾患の改善や薬剤耐性菌の脅威から身を守るためには免疫力を強化するしかありません。
 通常、田舎に住む人より都会に住む人の方がアレルギーになりやすく、しかも、都会では15歳以下からの発症率が高く、特に花粉症の低年齢化が進んでいます。1960年以前の人はスギ花粉を吸い込んでも花粉症にはなりませんでした。アレルギーは体質を変えなければ改善しません。そのためにまず変えるべきは飲み水です。身体は60〜70%が水分でできています。幼児に至っては80%以上が水分です。体内の水は血液やリンパ液として循環し、栄養素や酸素を運び老廃物を排出します。体温や体内の浸透圧を常に一定に保ち、細胞間の乱れをチェック調節してバランスを整えます。体質を変えるのも水です。ミネラル成分を豊富に含む自然水や天然水で、弱アルカリ性(pH7.5以下)で酸化還元力を持つものが最適です。ミネラル成分では特にケイ素・カルシウム・マグネシウムが重要で、これらは細胞膜を強くする働きがあります。細胞膜が丈夫であれば炎症を抑えられます。水溶性のケイ素は体内のコラーゲン生成を助け、免疫機能であるNK細胞の働きを活性化します。

◆免疫力を上げて感染症を防ごう
 感染症を防ぐために石鹸で手を洗うことは大切ですが、皮膚には常在菌がいて弱酸性のバリアでウイルス感染を防いでいるので、薬用石鹸を使用すると皮膚常在菌まで減らしてしまい、ウイルスが付着しやすくなります。頻繁に薬用石鹸で手を洗うと弱酸性のバリア力が低下してしまいます。
 新型コロナウイルスの感染症を防ぐには、ケイ素やカルシウム・マグネシウムなどのミネラル成分が豊富な弱アルカリ性の水を飲んで、体内の水分バランスを整え、免疫力を上げることです。水分量を増やして細胞粘膜の間隔を無くすことでウイルスの侵入が防げます。また、細胞間の間隔を塞ぐことは、タンパク質による抗体産生を防ぎアレルギー発症の予防にもなります。

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VOL.280『硝酸性窒素を含まない水を飲んでいますか?』 [生活]

◆ミネラル豊富な水
 水にはミネラル成分が豊富に含まれていることが重要です。特にカルシウムやマグネシウムが多く含まれる水を硬水といい、世界中のどの場所でも硬水を飲んでいる人の方が健康で長寿です。WHO(世界保健機関)でも硬水を飲んでいると心臓病による死亡率が低下すると報告しています。
 高齢になるとカルシウムやマグネシウムの摂取量が不足する上に、栄養素の吸収率も下がるので血液中のカルシウム濃度が低下します。すると副甲状腺ホルモンが分泌されて骨を溶かし、カルシウムイオンとして血液中に戻します。副甲状腺ホルモンの分泌は微調整が効かないので、血液中のカルシウム濃度が正常範囲に戻っても骨のカルシウムは溶け出し続け、余ってしまったカルシウムが血管壁に付着するので動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こします。さらに余ったカルシウムが組織や臓器で石灰化して結石を作ります。
 日本人は軟水に近い硬水を飲んでいる方が血液中のカルシウム濃度は適量に保たれます。カルシウムやマグネシウムを含む硬水は欧米諸国など大陸地域に多く分布するため、日本人は硬水を飲むと腸内細菌のバランスが乱れ、腹痛や下痢を起こします。古来から欧米人に比べて硬度の低い水を常飲し、和食という健康食品で世界でも指折りの長寿となりました。

◆水に含まれる硝酸性窒素
 水は自然界ではH2Oの重合体として存在します。カルシウムやマグネシウムを含む水は弱アルカリ性を示すのでアルカリイオン水と呼ばれます。イオン化した水は粘度が高く腸管からの吸水性に優れています。カルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分の比率が低い水を飲んでいる地域の人には尿路結石症が多く発症することが知られています。また、偏食だったり、肉類や脂肪の多い食品、酸性食品を過剰に摂取していても腸の働きが低下して、酸性体質(アシドーシス)となり、尿路結石が生じます。
 日本で尿路結石が多い地域は、東海や近畿、中国、北九州などです。これらの地域の地質を調べると花崗岩や深成岩が多く、飲料水に含まれる硝酸性窒素が多いため糖尿病の発症リスクが高いことも分かりました。
 野菜や果物の栽培には肥料として窒素酸化物である硝酸性窒素を多く使用します。肥料の中の硝酸性窒素は野菜や果物の栄養成分であり、特に野菜の葉の部分に蓄積して青々とさせます。硝酸性窒素を多く含む野菜や草を食べるウシやブタの肉の中には硝酸塩が蓄積します。硝酸塩や硝酸性窒素が還元した亜硝酸塩は二級アミンと結合してニトロソアミンという発ガン物質を体内で生成します。ニトロソアミンは肉類に含まれるタンパク質と野菜や水中の硝酸性窒素が化学反応を起こして発ガン物質として形成されます。これらの食品を温めるために電子レンジを使用すると今度は活性酸素が発生します。これも加えてニトロソアミンの生成は増加します。また、糖尿病を発症させる原因としてニトロソアミンが膵臓のβ細胞を損傷することでインスリン分泌を減少させます。
 毎日のようにタンパク質として肉類や脂肪分の多い食事を続けることでカラダは酸性体質となり、肥満となります。最近の女性の胸が大きくなっているのも肉類摂取量の増加が関係しており、乳ガン発症の増加にも関連しています。

◆水は生命維持装置
 仕事が忙しく過労状態であるとか、ストレスが加わることで酸性体質は促進されます。すると酸性体質を中和するために、骨や歯に含まれるカルシウムが自然に溶け出てしまいます。
 生野菜に含まれる硝酸性窒素を取り除くには、硝酸性窒素を取り除いた水で洗浄するか、湯がきしましょう。そして、忙しくてもできるだけ電子レンジの使用は控えましょう。海藻や豆類・発酵食品などのアルカリ性食品の摂取も有効です。カルシウムやマグネシウム、ビタミンD、アルブミンに結合する炭酸カルシウムを摂取することで栄養素の腸からの吸収性が高まります。
 水は生命維持装置です。ミネラル成分を豊富に含む弱アルカリ性の水を飲んで健康維持に努めましょう。
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VOL.275『生活習慣が胃腸を傷つける』 [生活]

◆日本の食生活
 日本には『喉元過ぎれば熱さを忘れる』という言葉があります。たとえ苦しいことがあっても過ぎてしまうとそのことをすっかり忘れてしまい、また同じことを繰り返すという意味ですが、苦しかった時に他人から受けた恩を軽んじるという意味でも使われます。この言葉のように口から熱いものを飲み込んだ時、熱いと感じるのは食道に近い喉の部分です。食道
・胃・十二指腸・小腸・大腸には熱さを感じる神経がありません。昔の人はこのことを経験から知っていたと思われます。温かいお茶を飲むとお腹が温まるのは胃ではなく消化管の周囲の組織が温かさを感じるからなのです。
 関西地方の郷土料理に、ほうじ茶に米を入れて炊く茶粥があります。奈良の大仏を建立した際にはすでに食べられていたので、1300年以上の歴史を持つ料理です。熱い茶粥を食べる地域には食道ガンが多いことが知られています。急いで熱いまま流し込むことで食道の粘膜が傷つくためガンを発症するのです。粘膜が火傷して傷つき、その火傷を治そうと粘膜の細胞が活発に分裂し、それを繰り返すうちに粘膜細胞内の遺伝子に異常が生じて、そこから食道ガンが発症します。同じように、唐辛子の辛味成分カプサイシンは少量であれば胃粘膜の血流を良くして粘膜を守りますが、大量に摂取すると粘膜を刺激します。コショウや生姜の辛味成分もカプサイシンに類似した作用があり、摂りすぎには注意が必要です。

◆塩分と脂肪分
 また、日本では昔から塩分を大量に摂ってきました。食物の保存に塩分は欠かせませんが、塩分を摂りすぎると高血圧のリスクが高まります。さらに塩分摂取の多い地域では胃ガンの発症率が高いことも分かっています。昔は冬場に新鮮な食材を入手しにくかったため、魚や野菜を塩漬けにして保存していました。男性には塩を舐めながら酒を飲むという習慣もあり、動脈硬化から高血圧や脳卒中を発症し、若くして亡くなる人も少なくありませんでした。
 胃はpH1〜3の胃酸の攻撃から身を守るためにアルカリ性の粘液を出して胃壁を守っています。しかし、食道にはこの仕組みがないため、胃酸が逆流すると食道の壁がただれます。すると、食物が食道を通る際にしみる・胸がつかえる・胸やけがするなどの症状が出ます。この症状がひどくなると、胃酸が食道上部まで上がってきて気管に入り込み咳が出たり、喉が痛くなったりします。これが逆流性食道炎です。
 ガン細胞は1つが発生してガンと診断されるまでに10〜20年かかります。ガンを予防するには若いうちから生活習慣に気をつけることが重要です。肥満になると内臓脂肪が蓄積します。内臓脂肪は脂肪の量が多いだけでなく、大腸ガン・肝臓ガン・膵臓ガン・食道ガンの発症に深く関与します。20歳頃に肥満だと膵臓ガンの危険性が高まります。女性の肥満は乳ガンの発症に関与します。また10代の思春期に脂肪分の多い食事をしていると成人になって乳ガンになりやすいことも分かっています。
 脂肪分の多い食事がガンのリスクを高めるのは、脂肪分を摂取すると、胆汁が十二指腸に分泌され、脂肪を分解する時、大腸内に悪玉菌が多いと胆汁を分解してしまうのでガンを発症しやすくなってしまうからです。

◆生活習慣は変えられる
 仕事をバリバリこなす人や努力家で闘争心が強い人は交感神経が優位に働き、心が常に緊張して生活しているのでストレスを受けやすくなります。集中すると歯を噛みしめる癖がある人、首や肩が凝る人、頭痛を起こしやすい人もストレスを受けやすい人です。また、自律神経のバランスが乱れる人は生活リズムの乱れで交感神経が優位に働くので肥満になりやすくなります。健康な人は、交感神経と副交感神経が常にバランス良く働いています。この自律神経は消化管だけでなく、多くの臓器の働きを調節しています。
 規則正しい生活を続けること、塩分・脂肪分の少ない食生活をすること、適度な運動の習慣、睡眠時間の確保、弱アルカリ性でカルシウムやマグネシウムを豊富に含む水を毎日飲むことが健康につながります。生活習慣はその気になれば変えられます。心の持ち方が重要です。

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VOL.269『便秘に自己流の対策をしていませんか?』 [生活]

◆便秘は実は高齢者に多い
 日本人の食生活は欧米化が進み、肉類の摂取が増えた結果、便秘になる人が増えました。何日に1度しか出ない、思い切り力んでみても出るのは少しで残便感が残る、硬くて黒い便しか出ないなどの悩みを持つ人は多いことでしょう。また、なんとか便を出そうと強く力むのは心臓発作や脳梗塞・くも膜下出血などを起こしかねないので危険です。
 便秘はダイエットする若い女性に多いとされますが、実は最も多いのは70歳以上の高齢者なのです。高齢者は便秘を防ぐために下剤を飲みがちで、下剤のせいでトイレの不安から引きこもりがちになります。外出しないで自宅にいる生活を続けていると、筋力が衰えてしまい転倒して寝たきりになる危険性が増します。つまり、便秘は寝たきりになる可能性のある病気なのです。薬局やコンビニで下剤を買って自己流の間違った治療を続けていると、大腸の蠕動運動の低下につながり、むしろ便秘は重症化してしまいます。一方、病院で処方される便秘薬は通常、酸化マグネシウムやセンナ系薬です。酸化マグネシウムには血中のマグネシウムが増える高マグネシウム血症という副作用があります。センナ系薬は習慣性や依存性・薬剤耐性のある一種の麻薬です。

◆江戸時代に便秘がなかった訳
 江戸時代には便秘の人がいませんでした。その理由は民衆の食事といえば一汁三菜で、味噌汁と野菜・豆類・海藻類・魚類などのおかずにご飯は玄米を1日に5合ほど食べていたそうです。そして玄米が足りない時にはアワやヒエなどの雑穀に大根やサツマイモなどの野菜を入れて混ぜ合わせて食べていました。玄米100gに含まれる食物繊維を3gとすると、5合(780g)の玄米には23gの食物繊維が含まれます。現在、厚生労働省が定める食物繊維の所要量は1日20gですから江戸時代の人は玄米だけで所要量を満たしていたことになります。それにアワやヒエ、大根やサツマイモなどを含めるとかなりの量の食物繊維を摂取していたことになります。だからこそ、江戸時代には便秘になる人がいなかったのでしょう。現代人の食物繊維摂取量は1日平均15gほどで、1日に1〜2gしか摂らないような人は便秘になって当たり前なのです。
 アメリカの調査によると戦前の日本人は1日平均400gほどの排便量があり、食物繊維摂取量は現在の3倍ほどでした。食生活の変化に伴い食物繊維摂取量が減少し、便秘が急増しました。便秘増加の原因は食事だけに限りません。江戸時代の人々はどこに行くにも歩いていたのですから運動量も激減しています。江戸時代後期の浮世絵師である葛飾北斎は88歳まで生きました。当時としては大変な長寿です。その葛飾北斎が83歳以降に江戸と信州の小布施を4度も往復しているのです。その距離240kmを5泊6日で歩いたそうです。80歳を超えた老人が1日平均40km歩いた計算になります。今日、240kmを5泊6日で歩ける高齢者がいるでしょうか?江戸時代の人々は食事から食物繊維を摂り、体を動かしていたおかげで便秘とは無縁だったのです。

◆健康的な便秘対策
 現代人は医療の進歩により長生きになりました。それでも健康的に過ごすための便秘対策には食物繊維を多く摂って、体を動かすことです。そうすれば軽度の便秘なら改善され、便秘薬が必要なくなります。すると次第に排便量も増えます。排便量が増えることは大腸の蠕動運動が活発になったことを意味します。便の中には栄養素が消化吸収された後に残った食物繊維や小腸や大腸の粘膜が剥がれ落ちた上皮細胞の残骸、水分が含まれます。消化に使われる胆汁の分泌量も減少するので大腸ガンの発症も抑制されます。
 食物繊維を多くすると腸内フローラのバランスも変化し、善玉菌・悪玉菌・日和見菌の割合が善玉菌中心になります。食物繊維が腸内細菌の栄養素となるからです。無理なダイエットや極端なカロリー制限をしなくても体重は徐々に減少し、一定の体重で安定し、持続するようになります。そして知らぬ間に便秘も治ります。食物繊維と運動で腸と腸内細菌を元気にしましょう。


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VOL.261『清潔志向が免疫力を下げる』 [生活]

◆免疫力が高い人
 2019年は年明けからインフルエンザが猛威をふるい、はしかも過去10年で最多のペースで流行しています。日本では季節の変わり目に風邪をひく人が増えます。気温差が激しくなるので着る服を選ぶにも苦労しますが、すべての人が風邪をひくわけではありません。体調の良い人は寒い日に薄着で出かけても風邪をひきません。これは免疫力の高い状態です。
 日常生活で野菜や発酵食品などを多く摂っていると腸内環境が良くなり、免疫力が高まって風邪などウイルスによる感染症にかかりにくくなります。免疫力が高い人は、腸が活発に動いているので病気のウイルスが侵入しても腸内細菌が作った免疫力で処理してくれます。

◆免疫力が下がる理由
 一方、乱れた食生活や栄養不足で疲労回復のために肉類や脂っこいものばかり食べている人は免疫力が下がり、風邪をひきやすくなります。朝起きて夜寝るという基本的なリズムが重要で、免疫力が下がる夜に外出すると病気にかかりやすくなるのです。夜間に仕事をする人も同様で風邪をひきやすくなります。免疫力の低い人は、侵入したウイルスを攻撃できずウイルスが体内に長く留まります。すると腸内細菌が疲弊して免疫力がさらに下がるので病気が長引きます。その状態が長く続くとガンの発症にもつながります。なぜ自分はガンになってしまったのか?理由がわからないという人が多くいますが、原因はあるのです。不規則な生活や、栄養過多な食生活、ストレス過多な環境などによって知らず知らすのうちにガンになってしまうのです。
 常に免疫力が低い状態なので風邪をひいても何度もぶり返し、その度に薬を飲みます。休みが取れないので無理をしてその状態を繰り返し、自分が好きなものばかりを食べ、常にイライラしていて、仕事上のストレスを他人に対して大声を出したり、怒鳴ったりすることで解消するような人は、まずその生活習慣を正す必要があります。
 神経質で清潔志向の人は何かにつけて薬をよく飲み、その薬は抗菌薬であることが多いようです。抗菌薬を飲むと腸内細菌自体が減少してしまいます。さらに、肉類の摂取が多いと腸内では大腸菌やウェルシュ菌などの悪玉菌が増えます。腸内環境が変化し、そこに過度のストレスが加われば病原性の弱い大腸菌まで病原性が高まってしまいます。すると大腸ガンになるばかりか他のさまざまなガンの発症を誘引する原因となります。

◆腸内環境を整えよう
 ガンは1981年以降、日本人の死因の1位を維持しています。3人に1人と言われた時代から2人に1人の割合に増えました。日本人の規則正しい生活習慣が乱れた結果、ガンが増えてきたのです。これは脳心疾患で死亡する人が減少した結果でもあります。この状態を改善するには正しい知識を持つとともに正しい生活習慣が必要です。つまり、毎日規則正しく朝起きて、バランスの良い食事を摂り、散歩などの適度な運動をして、楽観的かつ前向きな思考を心がけ、十分に水分を摂ることで腸内細菌のバランスが整い、腸内環境が良好になります。腸内環境が良くなれば免疫力が上がり、ガン発症の予防につながります。ガンを直接攻撃するのは免疫細胞の中のNK細胞です。NK細胞は時間帯によって攻撃力が変わります。朝9時頃と夕方5時頃が最大となり、夜9時以降は攻撃力が低下します。
 必要以上な清潔志向は腸内細菌を減らします。日本人の抗菌グッズ好きがアレルギー疾患を増やしたとも言われます。農薬や防腐剤、化学調味料や食品添加物の摂取、除菌石鹸の使用による皮膚の常在菌の減少などが免疫力を低下させアレルギー疾患を増やしました。免疫力の低下は風邪ウイルスやインフルエンザ感染症を増やしました。ワクチンを接種してもインフルエンザには感染します。介護老人ホームでは集団感染の末に死者も出ています。不規則な生活や日本人の清潔志向が免疫力の低下を招き、感染症への抵抗力を低下させ、ガンを増やしています。

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VOL.251『夏の疲れをのこさないために』 [生活]

◆体の疲れ、脳の疲れ
 今年の秋は、残暑が続いたかと思えば、初冬のように肌寒い日が続き、おまけに幾つもの台風が直撃するなど、気候変動が激しいので体調を崩しがちになっています。一般に疲れには肉体労働によって感じるものと、頭脳労働によって感じるものがありますが、これらをヒトは明確には区別できません。通常、ストレスは脳で感じ、疲労はストレスを増やします。ストレスを感じるとそれに対抗するため、脳から副腎を刺戟するコルチゾールというホルモンを分泌し、ストレスを緩和します。

◆疲れの原因物質
 脳には常にエネルギーとしてグリコーゲンが貯蔵されています。このグリコーゲンが疲労を伴う長時間のストレスを減らします。グリコーゲンの原料はブドウ糖で、血糖値を維持する役目を果たしています。肝臓内にグリコーゲンが蓄積していれば低血糖やめまいで立ちくらみすることはありません。しかし、長時間運動する際には肝臓や筋肉内のグリコーゲンが使われるため、脳に届く血液中の糖が減って低血糖になります。すると脳内のセロトニン濃度が増加し、必須アミノ酸の1つであるトリプトファンが脳内に取り込まれます。また、これを補うために別の必須アミノ酸である分岐鎖アミノ酸(バリン・ロイシン・イソロイシン)がトリプトファンと同様に脳内に輸送されます。
 通常、アミノ酸が脳の関所(血液脳関門:BBB)を通過する際にはトランスポーターと呼ばれる運搬役が必要となります。分岐鎖アミノ酸はトリプトファンよりもアミノ酸トランスポーターに優先的に乗って血液脳関門のゲートを通過できます。ですから分岐鎖アミノ酸濃度が低下すると、血液中のトリプトファンよりも分岐鎖アミノ酸が脳内には優先的に取り込まれ、セロトニン濃度が上昇します。その結果、トリプトファンの運搬が促進され脳の疲労が進みます。運動時や運動後に分岐鎖アミノ酸を摂取すると、運動による疲労や脳疲労が
取れてくるのはこの作用によるものです。
 長時間の運動は脳の温度も上昇させるので、うまく機能しなくなります。通常、暑い日などに脱水することで体温や脳の温度は上昇し、それが脳の疲労となります。例えば、熱中症は水分不足とミネラル成分の不足が脳の疲労となって発症します。疲労の症状といえば、倦怠感・だるさ・体が重いなど、感覚的な症状や筋肉の病気を思い浮かべます。筋肉が疲れると乳酸が溜まります。乳酸がたまると筋肉痛になるので、疲労物質は乳酸ということになります。乳酸は運動時にグリコーゲンやブドウ糖が使われると同時に生成されます。
 乳酸が大量に発生するとビタミンB群が消費されます。疲労はストレスなので、ビタミンB群が不足すると疲労症状が増し、集中力が続かなくなり、イライラします。疲れの原因は体力の低下です。疲れを取るには食事によるビタミンやミネラルなどの栄養素の補給です。暑い日にはエネルギーが不足するので、肉類や脂肪分、乳製品を大量に摂取すると、逆に疲労を助長してしまいます。不足するのは水分やナトリウム・カルシウム・マグネシウム・カリウムなどのミネラル成分、加えて分岐鎖アミノ酸をはじめとするアミノ酸なので、適量のタンパク質摂取で十分なのです。

◆分岐鎖アミノ酸・ミネラル成分・十分な睡眠
 分岐鎖アミノ酸は運動時の筋肉の疲労を減少させる作用がありますが、脳の疲労はとれません。冷房が効いた室内でパソコンに向かって仕事をする人や会議をしている人でも脳の疲労は進みます。ストレスが過剰になると脳はさらに活発に活動します。疲れを解消しようと休憩時間に甘いものを食べると逆に脳の疲労が増します。また、仕事帰りにビールなどのアルコールを飲むと一時的にストレガ解消したように思えますが、むしろ疲労を増強しているのです。それよりも早く帰宅し、ゆっくり入浴する方が副交感神経が優位になり、リラックスできます。また、肉体と脳の疲れを取るのに不可欠なのは睡眠時間の確保です。無理にスタミナ食を食べるのではなく、適度に分岐鎖アミノ酸やミネラル成分を補給して、十分に睡眠をとることが疲労回復の秘訣です。

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VOL.248『「養生訓」に学ぶ健康長寿の心得』 [生活]

◆エピジェネティクス
 今から300年ほど前の江戸時代、江戸の人口は100万人を数え、世界一の大都市でした。その頃の日本はヨーロッパからは文化の遅れた野蛮な国とされていましたが、実際は下水道や上水道が整備され、糞尿処理と野菜生産という今で言うリサイクルシステムも存在しており、パリなどより進んだ都市でした。
 この時期に儒学者の貝原益軒が健康で長生きするための心得をまとめたのが『養生訓』です。健康と長寿は昔から人類にとって最大の願いでもありました。秦の始皇帝は日本にその秘訣があるとして、何度も日本を攻めようとしましたが実現しませんでした。日本人の健康と長寿の秘訣は、先人たちの経験や観察を通じて体に良いとされる手がかりを見つけ、仲間に伝えながら代々語り継がれてきたもので、現在、これが科学的な研究と結びつき、多くのことが明確になってきています。
 例えば、ヒトの体質をつくるのには遺伝的要素と環境要因があるということです。生まれながら病気になりやすい遺伝的素因を持っているヒトと、そのような遺伝子を持っていないヒトでは、遺伝的素因を持っているヒトの方が何倍もの確率で病気を発症します。しかし、遺伝的素因に加えて生後の食生活など、環境要因が遺伝子を刺激することで遺伝子に変異が生じて病気になることも解ってきたのです。これをエピジェネティクスと呼びます。

◆食文化に秘訣あり
 ガンは細胞内の遺伝子が刺激を受けて変異し、段階的に異常が起きることで発症して進行します。しかしこれは生活習慣の修正によって70%ほどは予防できるという報告があります。環境要因を変えることによっても病気の発症を抑えられる可能性があるということです。環境要因の一つに日本の伝統的な食生活があります。日本では古来より和食の文化や食生活が維持されてきました。最近の科学的な研究報告によれば、和食はガンをはじめとするほとんどの生活習慣病を防ぐ上で有効なほど健康的に優れていることが分かりました。日本では飢餓の時代が長く続いたため、日本人は遺伝的に生活習慣病の原因となる内臓脂肪が蓄積しやすい民族となり、遺伝的に糖尿病を発症しやすい民族でもあります。基本的には農耕民族で、欧米人の狩猟民族とは遺伝的に大きく異なります。脂肪分はあまり摂らず、野菜や炭水化物を多く摂取、主に魚や大豆製品・野菜・海藻を食べてきました。日本人は海藻を食べる特有な民族で、海藻を消化分解する酵素や腸内細菌叢が存在します。これに対して、欧米人には海藻を消化分解する酵素や腸内細菌叢が存在しないため、海藻を食べられません。
 和食はこれらの食品を上手に料理することで動脈硬化の進行を遅らせ、内臓脂肪の蓄積を抑え、膵臓のβ細胞からのインスリン分泌を少なくすることで糖尿病を予防してきました。和食によって日本人は遺伝的に善玉菌(乳酸菌・ビフィズス菌)を多くし、善玉コレステロール(HDL)を多くすることで、心筋梗塞や脳出血による死亡率を極めて低い水準に維持してきました。その結果、高齢になっても肥満や認知症になりにくく、ガンの発症も遅らせてきました。また、大豆製品によるイソフラボン効果(エストロゲン様作用)や小魚からカルシウムを摂取することで骨粗鬆症を予防し、骨折を防いでいます。発酵食品を和食に利用することで日本人の腸内細菌叢は善玉菌の割合が増え、世界一の長寿国となりました。

◆歴史に学ぼう
近年、食の欧米化により肉類や乳製品を多量に摂取することで、肥満や病気の発症が若年層に広がりました。味付けも濃い味が好まれるようになり塩分量が増しました。さらに、飲酒や脂肪摂取量の増加と運動不足によって肥満や生活習慣病になる人が増えました。つまり、エピジェネティクスによる病気の発症です。
 日本人は長い歴史の中で、健康と長寿と文化が相まって、毎日規則正しく働くという生活習慣の中で生きてきました。これは長い飢餓の時代を経験した日本人の遺伝子の中に組み込まれた記憶です。日本人が健康で長生きできる生き方は、すでに300年前に出版されていた貝原益軒の養生訓からも読み取れます。日本人は今一度歴史から学ぶべきなのではないでしょうか。

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