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VOL.287『夜の睡眠が免疫力を上げる』 [眠り]

◆睡眠の重要性
 睡眠とはどれほど重要なのでしょうか。近年、夜間の睡眠が予想以上に心身の健康に良い影響を及ぼすことが分かってきました。睡眠に対する欲求は食欲や喉の渇きなどと同様で生理的なものです。そして睡眠の目的は、免疫機能の働きから適切なホルモンバランス、精神の健康、学習や記憶、脳からの有害物質の排除など、様々な生理的過程を最適な状態に機能修復させることです。
 人間は睡眠なしでは生きられません。かつて睡眠は、皮膚の表面から血液が後退し、胃で温かい蒸気が溜まることによって誘発されると考えられていました。20世紀末になると睡眠と脳波の活動、呼吸パターン、血中ホルモンなどの分子量の日内変動を調べる試みが進みました。その結果、心身が適切に機能するには夜間に十分な睡眠をとることが無条件に必要であることが分かりました。しかし現代人はギリシャ神話の夢の神、モルペウスの鎮静の手に自らを委ねる時間がどんどん少なくなっています。

◆睡眠不足と病気
 1989年には、睡眠が不可欠であることを示す明確な証拠がエバーソンによって発表されました。根拠として睡眠を完全に奪われたラットが1ヶ月以内に死んだからだとしています。ラットの直接の死因は解明されていません。ストレスの増加や過度のエネルギー消費、体内の温度調節機構や免疫機能の失調なども死因ではありませんでした。
 通常、一晩徹夜して睡眠時間が不足しただけでもホルモン作用や感染症に対する防御機構が損なわれることが知られています。肝炎ウイルスの予防接種に対するカラダの反応を調べた研究では睡眠時間が短いと免疫力が急激に低下することが分かっています。2003年の研究では大学生にA型肝炎ワクチンを注射し、半数はその日の夜に通常通り睡眠をとらせ、残りの半数には一晩中起きているように指示しました。4週間後、大学生から血液のサンプルを採取して、ワクチンに含まれているウイルスに反応した免疫が作り出される抗体量を測定した結果、睡眠をとった大学生の方が睡眠をとらなかった大学生よりも97%以上も高値の抗体濃度を示しました。また、成人に標準的なB型肝炎ワクチンを6ヶ月間に3回接種した実験(3回繰り返すことで免疫力が高まる)で夜の睡眠時間も記録した結果、1回目のワクチン接種から1週間の平均睡眠時間と2回目のワクチン接種後の抗体濃度を比較したところ、睡眠時間が1時間増えると抗体濃度が56%増加しました。そして、最後のワクチン接種から6ヶ月後、最初のワクチン接種後1週間の平均睡眠時間が5時間以下だったヒトは血中の抗体量が極めて少なかったことも分かり、その後にB型肝炎ウイルスに感染した場合に再感染する可能性や保護されない確率が7倍以上と高い結果になりました。
 睡眠不足がホルモン機能を低下させるという研究では、若い健常人に睡眠時間を4時間に制限して5日間続けると、血液中のブドウ糖量が40%減少しました。別の研究では同じく睡眠時間を4時間に制限し、2日続けた結果、血中の食欲促進ホルモンであるグレリンが30%増加し、食欲抑制ホルモンのレプチンが20%減少しました。つまり、睡眠時間の減少が体重増加につながるというのです。6〜9歳の小児では睡眠時間が6時間以下で生活していると肥満になる確率が50%上昇し、2型糖尿病発症のリスクが高まります。

◆7〜8時間は眠ろう
 睡眠時間は免疫機能やホルモン機能に多大な影響を与えます。今や、日本国内でも感染経路が分からない新型コロナウイルスの感染が広がっています。医師や看護師などの医療従事者の感染も起こっています。ワクチンも治療薬もない今、各自が積極的に予防することが必須です。その1つとして、自分の免疫力を高める必要があります。夜間に大人なら7〜8時間、子供なら10時間の十分な睡眠時間を確保することは極めて重要です。そして人が多く集まる密閉空間での集会や食事はできるだけ避けて身を守りましょう。

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VOL.179『小児の慢性疲労症候群について』 [眠り]

◆小児の慢性疲労症候群とは 
 最近は幼児や小児が大人の生活習慣に合わせて夜遅くまで起きています。その結果、睡眠不足が続いて慢性的な疲れや倦怠感があり、朝起きられない子供が増えています。これを小児の慢性疲労症候群と呼びます。このような小児の脳をCTで画像診断してみると、大人で見られるような複雑な内容や課題を処理する神経が過剰に働き、脳に疲労が見られます。
 国際慢性疲労症候群学会の診断基準によれば、小児の慢性疲労症候群は疲労や倦怠感が3ヶ月以上続き、安静状態にしても回復せず、教育や社会面での機能が著しく低下している病気とされています。

◆原因は?
 そこでその発症の仕組みを解明するため、この病気が同時に複数の課題を処理する際に注意力や集中力の低下・注意配分機能の低下を示すことに注目し、慢性疲労症候群の子供15人、健康な子供13人を対象にテストを実施しました。問題は、ひらがなで「まりこはみつめた」「あおいうみをみた」などの文字を次々に表示し、文章の内容を理解できるかを調べると共に、その文章の中に母音が含まれているかについても質問しました。このように2つの課題を同時にこなす際に脳の働きがどう変化するかをMRIを用いて調べたところ、健康な子供は、脳の左側の前頭葉2箇所で効果的な情報を素早く処理していたのに対し、慢性疲労症候群の子供は合計6箇所の部位を活動させていたことが分かりました。この結果から、小児の慢性疲労症候群では課題を処理する脳の活動部位が広範囲にわたるため、脳が過剰に働いて疲労が増してしまう、つまり脳の機能が低下しているのではなく、脳の機能低下を他の脳神経部位を使って補おうとするため、脳を過剰に活動させていたのです。これが慢性疲労や倦怠感となって、脳の機能低下や能力低下を引き起こすのです。
 小児の慢性疲労症候群の国際診断基準の概要によれば、
1)少なくとも3ヶ月以上の睡眠や休養によっても改善しない疲労状態が続き、日常生活が障害されている。2)初期は甲状腺機能障害など一般検査でも異常が見られない。3)次の症状が中程度以上である(階段の昇り降りが遅い、本を読む行為で認知力の疲労があり回復が遅い、毎日居眠りし寝つきが悪い、昼夜が逆転する、筋肉痛・腹痛・胸部痛・眼痛・吐き気・嘔吐などの症状がある、記憶障害・集中力の低下・理解が悪い・関心がないなどの症状がある、ふらつく・四肢の冷感・微熱などの症状がある)
 以上のような症状があれば小児の慢性疲労症候群と診断されます。

◆親子で一緒に取り組みましょう
 このような子供に対し親子一緒に睡眠指導を行って慢性疲労を改善し、不登校を減らす取り組みが行われています。2009年から全国7つの自治体では、中学生や高校生の睡眠調査や指導を実施し、睡眠状態を改善したところ、不登校が減少したという成果があります。
 24時間眠らないコンビニや漫画喫茶などによってヒトの日内変動や体内時計が変化しています。そしてそれは子供達の健康にも影響を及ぼしています。睡眠時間が減少している現代、睡眠不足が子供の脳神経に記憶力の低下・集中力の低下・判断力の低下・残虐性の増加などの障害を与えています。未来を担う子供達の健康を管理するのは私たち大人の責任と言えるでしょう。脳や免疫力が急激に発達する思春期を、健康的な生活習慣で過ごさせるように指導しましょう。まずは正しい睡眠習慣から。

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VOL.143『子供の睡眠不足は要注意』 [眠り]

◆10歳頃までが特に大切
 最近、睡眠時間が少ない子供(小学生・中学生)が増えています。塾や部活動などで超多忙な毎日を送りながら、夜にはパソコンやスマートフォンに夢中になるためどうしても睡眠時間が短くなってしまうのです。必ずしもそのせいとは言えませんが発達障害や自閉症・注意力欠陥多動性障害(ADHD)の子供の多くは睡眠時間が短いという共通点があります。
 規則正しい睡眠リズムが脳を発達させ、運動能力や言語中枢・記憶中枢・コミュニケーション能力の形成に影響を与えます。乳幼児期は母親の生活スタイルに合致するので、母親が朝起きるのが遅かったり、夜更かしをする生活習慣であれば、子供の脳の発育に障害が生じるのは自然の成り行きです。また、脳の機能が完成する10歳頃までの学童期に慢性的な睡眠障害があれば、体内時計や脳機能の低下が起きるのは明らかで、学校が嫌いになったり、学校に行きたくても行けない不登校、ひきこもりとなりやすいのです。これを小児の慢性疲労症候群といいます。

◆脳の働きと睡眠
 今日の日本は、コンビニやゲームセンター・ネットカフェ・飲食店などが24時間年中無休で営業する短眠大国となっており、夜10時以降に寝る人が50%と欧米諸国と比べて突出しています。そしてこの習慣は、小学生、中学生、高校生と学年が上がるに従って日常化しています。中学生や高校生では、20〜30%が午前1時以降も起きています。夜更かしと成長ホルモンとの関係を示した報告によれば、カラダの成長を促す成長ホルモンは、夜10時頃〜午前2時頃にかけてが分泌のピークとなり、ぐっすり熟睡することで多量に分泌され、体内の細胞が活性化されます。
 睡眠時間の減少は、授業中の居眠り・学習意欲の低下を招き、血液中の鉄不足による貧血(疲れやすい・立ちくらみ・動悸・頭痛・息切れ・顔面蒼白など)の症状を示します。また脳のシナプス作用や情報処理能力の活動低下を招き、脳の記憶中枢である海馬を縮小させるので学力が低下します。
 脳は、常に新しい情報を入手し、識別を繰り返し、蓄積して記憶します。この脳内の情報には脳神経細胞を結ぶシナプスや神経伝達物質が関与します。脳神経はこれらのネットワークで情報を処理します。学力が低下するのは、シナプスと神経伝達物質の活動が低下してしまうからなのです。シナプスと神経伝達物質の点検/修理は睡眠中に行われ、それによって脳は働きを回復します。シナプスと神経伝達物質を最も元気に働かせるには良好な睡眠が不可欠なのです。頭(脳)が回らないとか、気持ちが乗らない・イライラする・不安が消えないなどの状態は、脳の情報処理能力のバランスが崩れているのです。本来、子供の脳は柔軟で、何事に対しても吸収力が優れているものなのに、脳の機能が低下した老人の認知症のような状態になります。

◆規則正しい睡眠を
 夜更かしは、成長ホルモンの分泌バランスを崩すだけでなく、他のホルモン系にも影響を与えます。睡眠不足では食生活が乱れ、これが自律神経やホルモン分泌に悪影響を及ぼすので肥満を引き起こします。昔は『寝る子は育つ』と言われましたが、今は『寝ない子は太る』と言えます。
 毎日の規則正しい生活や睡眠リズムが、子供の脳の発育・発達につながります。子供の生活習慣が乱れがちな夏休みは大人が気をつけてあげることも重要です。

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VOL.94『睡眠時無呼吸症候群とは』 [眠り]

◆睡眠時無呼吸症候群(SAS)
 健康には、バランスの良い食事・適度な運動・適正な睡眠の3つがそろっていなければいけません。特に、しっかりと睡眠をとることは健康の源です。前の晩眠れず、疲れがとれない時には翌日の活動にも支障が生じます。その日の疲労をとり、脳神経細胞の傷を修復するのも睡眠です。
 大イビキをかき、肥満体の人は睡眠時無呼吸症候群(SAS)である可能性が高いので注意が必要です。SASという睡眠障害は、寝つきは良く、朝早く目ざめますが、その睡眠の質は悪く、眠りが浅いので、翌日の昼間には強い眠気に襲われます。
 SASは、眠っている間に喉の奥の気道が塞がり狭くなるので、呼吸が小さくなる、あるいは、気道が完全に塞がって一時的に無呼吸となります。そのままでは死んでしまうので脳から『起きろ』という指令が出ます。すると、呼吸が停止していた間に喉にたまった二酸化炭素がイビキとともに口から一気に吐き出されます。呼吸停止が10秒以上続き、それが1時間に5回以上ある人はSASと診断されます。1時間に10~20回の人は治療が必要となります。

◆夜眠れないと、いろいろな支障が現れる
 1時間に10回以上も呼吸が停止すれば、当然熟睡できないし、脳も休む暇がありません。熟睡できないので朝の起床時には、頭痛や疲労感が強く出ます。そのような日々が続くと昼間に眠気をきたすという悪循環となります。現在患者数は200万人ぐらいで、その睡眠障害が仕事上でも深刻な問題となります。2003年に起きた運転士の居眠りによる新幹線緊急停止の事故の原因がSASだったことは社会に衝撃を与えました。SASの症状を持つ人は、昼間寝ないように努力しますが、いつの間にか眠ってしまうのです。
 昼間眠気に襲われると、コーヒーを飲んだり、タバコを吸ったりして眠気の誘惑から逃れようとします。また、常に何かを食べることで眠気を防ごうとします。脳は何かを食べている間は活動しているので眠ることはありません。眠らないために間食や夜食を摂ることが、さらに太る原因となり、悪循環となって肥満度が高まってしまいます。そして食べ過ぎたり、食べることをやめると直ちに眠くなります。この状態が10年以上も続くと、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こし、死へのリスクが高まります。
 SASは昼間の眠気と夜のイビキ以外には特に自覚症状がないので、本人は重大な病気との自覚がありません。そのため知らず知らずのうちに糖尿病や高脂血症・前立腺ガン・大腸ガンなどの発症につながることがあります。
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◆規則正しく、健康的に
 SASは肥満の関与が強いので、まずは生活習慣を改善しましょう。朝起きる時刻や寝る時刻を一定にする、一日の体内時計をカラダに覚えさせる、体重を減らす、塩分摂取量を減らす、酒・タバコをやめる、コーヒー(カフェイン)を控える、ミネラル成分が豊富な水を十分に飲む、有酸素運動を習慣づけるなど、規則正しい健康的な生活を心がけましょう。睡眠をサポートするサプリメントを飲むのもいいでしょう。
 やっと涼しくなり、寝苦しさから開放された秋の夜長、質の良い眠りで脳とカラダに活力を与えましょう。

VOL .72 『子どもの睡眠不足は要注意』  [眠り]

◆ミネラルを摂取しましょう
 秋の夜長といいますが、子どもの睡眠障害やうつ状態で最も心配されるのが、この時期なのです。子どもの睡眠を快適にさせるには、ミネラル成分のカルシウム(以下Ca)やマグネシウム(以下Mg)を十分に摂取させましょう。CaやMgはカラダの緊張を取り除き、神経細胞を活性化してリラックスさせると同時に、昼間運動で疲れた筋肉を回復させ、リラックスさせます。特に子どもはCaやMgの摂取が不足する傾向にあるので、これらを豊富に含むナッツや豆類・玄米などの全粒穀物・緑黄色野菜・魚介類などを積極的に摂取させましょう。
 また、赤ちゃんは母親のCaやMgの摂取が不足していると、母乳に含まれるCaやMgも不足してしまうので、よく眠れなくなってしまいます。その場合、水に溶けるCaやMgを多く含むサプリメントを摂取すると良いようです。

◆睡眠不足になると…
 子どもの睡眠不足は、脳の成長や身体の発達に影響を及ぼします。一晩でも眠れないと、カラダは明確にストレスの徴候を示します。気分が悪くなったり、集中力や記憶力が低下し、欠如するとともに、適切な単語を選択できない・新たなアイデアを生み出すことができない・新しい環境に対応できないなどの影響がでます。
 ヒトは思春期と同時に成長期を迎え、その時期には成長ホルモンが大量に分泌されます。成長ホルモンにはその名の通り、骨や筋肉を成長させる働きがあります。これは寝始め3時間の深い眠りの時に多く分泌されるので、睡眠が足りない子どもは、成長ホルモンが十分に分泌されず発育・発達も遅れます。そして成長期が終わると骨はそれ以上伸びなくなるので、この時期の睡眠がいかに大切かが分かります.
 また、成長ホルモンには代謝を促し、細胞を新しく生まれ変わらせる働きがあります。子どもは昼間、疲労した脳とカラダを、成長ホルモンによって回復・修復するのですが、よく眠れないとそれができません。このように睡眠不足は子どもの健康や成長に極めて重大な障害となります。
 さらに、ミネラル成分である亜鉛やCa・Mgが不足すると、ビタミンC・B群など、眠りに関与するビタミンが急速に消費されるため、脳は興奮状態が続き睡眠が妨げられてしまいます。睡眠が不十分だとストレスが高まり、気分が落ち込み、うつ状態になることもあります。

◆自然なサイクルへ
 脳とカラダは、昼間にはエネルギーやホルモン・神経伝達物質を産生し、夜には心身の活動を低下させ眠りへと導く準備に入ります。この時、ストレスがかかっていたり、神経が興奮状態になっていると、睡眠を維持することも、朝元気に目ざめることも困難となります。夜中に熟睡できない子どもは、昼間の血糖値も安定せず、入眠が困難となります。
 子どもが積極的に運動するのは良いことですが、夜遅くまで及ぶと脳が興奮状態となり、眠りに入れなくなります。脳を興奮させるテレビやパソコン・ゲームなども睡眠障害の原因となるので、夜更かしをさせずに、早く寝かせる習慣を作りましょう。同時にCaやMgなどのミネラル成分の十分な摂取も望まれます。

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VOL .59 『体内時計と睡眠』 [眠り]

◆社会環境と睡眠
 脳研究の進歩によって、睡眠や体内時計の役割が明らかになってきました。特に、睡眠は健康維持や脳にとって極めて重要な役割を果たしています。
 私たちはかつて、硬度経済成長期には睡眠時間を惜しんで働き、生産性の向上に努めてきました。その結果、休息にハイテク化し、生活様式が激変した現代では、昼も夜も活動するという社会が出現してしまいました。また、あまりカラダを動かさずに、1日中大脳ばかり酷使する人々も増えています。
 このような社会は、人々にストレスを与えており、ストレスは『睡眠障害』という難病の温床になっています。長年睡眠を軽視してきたツケが、噴き出しているのです。現在、日本人の成人の約20%が不眠に悩んでいます。また、社会が高齢化した現代では、加齢に伴う睡眠障害が増加していますし、一方で、若者の睡眠障害も深刻です。夜型社会のあおりで生活リズムが乱れ、社会的時間割になじめない人も増えています。このような人々は、睡眠不足のため大脳が十分に休息できず、イライラする・興奮する・キレるなどという状態になりやすいようです。また、健康生活の観点から見ても著しく不健康で、夜間の不眠に加えて、昼間の眠気に悩まされています。

◆眠りの基本法則
 睡眠には、1日を周期とするリズムで、脳内の体内時計が関与しています。脳内の体内時計が刻む周期を概日リズム(サーカディアンリズム・生体リズム・生物リズム)と呼びます。地球上の生物の多くは、昼夜が規則的に交代する限られた範囲内に存在するので、昼夜の日周変化に同調し、それに合わせて活動と休息のリズムを繰り返しています。ヒトの体内時計は、自律神経の中枢である間脳の視床下部にある松果体で、メラトニンが関与し、眠りの質と量が脳内で自動的に決められています。
 また、脳には『眠る脳』(大脳)と大脳を『眠らせる脳』(脳幹)があり、無意識のうちに睡眠・覚醒をコントロールしています。昼間ぼんやりしたり、居眠りをすると、夜になっても眠くならずに寝つきにくくなります。逆に、昼間活動的にしていれば、夜間の眠りは深く連続します。脳内の体内時計のリズムに従うことと、眠らせる脳が自動的に眠りの質や量を決めることが眠りの基本法則です。この2つがうまく作動すれば、快適な睡眠を得ることができます。生活にメリハリをつけ、規則正しい生活を心がけることで、体内時計の正しいリズムをカラダに記憶させることが大切なのです。

◆健康維持のために
 体内時計のリズムが乱れ、睡眠障害となってしまうと、医師や薬に頼らざるを得ない場合も生じてきます。
 快適な睡眠をとり、健康を維持するためには、昼間は活動的に過ごし、夜はゆっくり休むことが基本です。それには夜に眠るきっかけを作ることも必要となります。カラダを温めたり、水分を摂取したり、天然由来のサプリメントを活用するなど、眠るための環境作りも大切です。
 『眠る脳』『眠らせる脳』については、また次の機会に詳しくお話しします。

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VOL .55 『睡眠と健康』 [眠り]

◆ 睡眠と血圧
 睡眠中の血圧は始めは低下しますが、後半には徐々に上昇し、明け方、覚醒とともにさらに上昇します。浅い眠りのレム睡眠期には、血圧が突然上昇したり、低下したりすることがあります。これは『自律神経の嵐』とも呼ばれ、レム睡眠中にしばしば起こる乱れ現象の一つです。
 このような乱れ現象は脈拍にもみられ、レム睡眠に入る度に脈拍数は急上昇します。この急上昇は、前後のノンレム睡眠での脈拍数と比較すると、およそ10%の増加に相当します。もともと循環器系の障害を持つ人にとっては、この急変動はかなり危険なものとなります。実際、狭心症の発作は早朝に起こりやすく、その80%がレム睡眠中に起こっているという報告もあります。狭心症の発作は激しい痛みを伴うため、不眠症の原因にもなります。

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◆いびきと無呼吸症候群
 レム睡眠に入ると、呼吸のリズムも不規則になり、時には数秒間止まったりします。平均するとノンレム睡眠での呼吸数より10~20%の増加がみられます。
 いびきは深い眠りで起こると考えられていますが、実際には浅い眠りでも起こります。人は眠ると舌根が後退し、咽頭筋の緊張が緩むので、上気道が狭くなります。そこを空気が通過する時に振動音が起こります。それが『いびき』です。そしてひどくなると気道が閉じてしまい、呼吸とともにいびきは止まります。これが閉塞型無呼吸です。無呼吸状態が数秒~数十秒間続くと、睡眠は浅くなるか覚醒の方向へと変化します。覚醒水準が上がると、咽頭筋などの緊張が戻り上気道に隙間ができます。そこで、大きなため息のような音をたてて呼吸が再開します。閉塞型睡眠時無呼吸症候群では、深く眠ると上気道が塞がってしまうので、どうしても睡眠は中断されることになり不眠症になりやすくなります。

◆理想的な眠りを
 入眠時には深部体温は低下し、手足の皮膚温は上昇します。この現象は乳幼児では特に顕著にみられ、眠くなってくると1.5℃くらい上昇します。したがって低体温期には入眠しやすく、(午後の眠気は例外として)高体温期には入眠しにくくなります。
 空腹は睡眠を妨害する方向で作用しますが、胃腸の運動や胃液の分泌は睡眠中に減少するので、夜食を摂るのであれば炭水化物や牛乳などのタンパク質が良いでしょう。脂肪や糖分の多い食品は好ましくありません。
 よく『寝る子は育つ』と言います。これは子どもの成長に欠かせない成長ホルモンが睡眠の開始と同時に分泌が高まるので、そのように言われるのです。
 以上のように、睡眠は健康と密接に関わっています。自分はよく眠れると思っている人でも、毎日理想的な睡眠がとれている人はどれくらいいるでしょうか。横になったらすぐに寝つけて、一度も目覚めることなくグッスリ眠り、翌朝爽快に目覚められる…これが理想的な睡眠です。理想的な眠りを身につけ、毎日を健康に過ごしましょう。


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VOL .53 『うつ病と睡眠障害(不眠)』 [眠り]

◆うつ病の症状
 うつ病は、誰もが日常的に経験する「なんとなく気持ちが晴れない」「何をするのも面倒くさい」「人と会うことがおっくうだ」「食欲がない」など、ごくありふれた症状から始まります。幻覚や、幻聴もありません。現実と非現実も明確に区別できます。どちらかといえば真面目で完璧主義の人がかかりやすく、強いストレスにさらされたり、急激な環境の変化に見舞われたりすることが2週間以上続くと発症することが多いようです。そして、心身の過労が、休息や睡眠によって回復されない状態が続き、悪化していきます。
 うつ病患者の80~100%は睡眠障害に苦しんでいます。症状は、早朝3時頃に目が覚めてしまう早朝覚醒型や、昼間に眠気を感じる睡眠過多の人が多いようです。朝、新聞を読もうとしても読む気がしない、頭では何かをやらなければいけないと思うのにカラダが動かない、何だかダラダラしている、前夜よく眠れなかったために心身のエネルギーが低下してカラダが動かない…。このようなうつ病の症状は、軽度の場合ならしばらく仕事を休み、のんびり過ごして十分に睡眠をとれば改善されます。抑うつ感や疲労・食欲不振・頭痛などとともに睡眠障害が1ヵ月以上も続く場合には重症の可能性があり、医師による薬物治療が必要となります。

◆対策と予防
 不眠はうつ病に最も多い症状です。不眠を改善することでうつ病自体も良くなります。正しい睡眠(安眠・快眠・熟眠)のためには、正しい寝姿勢・正しい寝具・正しい生活習慣・眠りに関する正しい知識と理解が必要となります。本人が心地良く感じる睡眠は、心にとってもカラダにとっても心地良いものであるため、睡眠環境の整備は大切です。
 例えば、枕が合わないために寝る姿勢が悪くなり、不眠を助長している可能性があります。寝室の照明は柔らかい光にした方が心地良く、防音対策も大切です。睡眠環境は、部屋の位置や向きも影響します。東南の角部屋なら、朝の太陽光が生体リズムを覚醒状態にする刺激となります。南向きの温かい部屋は、カラダが暖まりやすく活動リズムをスムーズにします。
 アロマテラピーは、心地良い香りが入眠を促進します。入浴は、心身をリラックスさせ入眠を助けますが、お湯が熱すぎると交換神経が刺激されるのでかえって眠れなくなります。また、過剰のアルコール摂取も睡眠障害となります。
 以上のように、うつ病や睡眠障害の予防には、体調や心理状態のケアだけでなく、視覚・聴覚・嗅覚などの五感を刺激することも大切です。睡眠を助長するための環境の整備や、カラダに優しい天然由来のサプリメントなどの活用もおすすめします。

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VOL .45 『みなさんよく眠れていますか?』 [眠り]

◆5人に1人が睡眠障害
 『秋の夜長』と言いますね。みなさんよく眠れていますか?
 十分な睡眠がとれないと、日中激しい睡魔に襲われる、集中力が低下する、疲労が蓄積してしまうなどの症状がでてしまいます。さらに、眠れないことがストレスになって眠れなくなるという悪循環も生じます。このような生活を続けていると、日常生活や仕事に支障をきたしてしまいます。
 不眠に陥る主な原因は、日常生活からくるストレスや生活習慣の乱れとされています。そのため、周囲に理解してもらえなかったり、必要以上に自己嫌悪に陥ってしまったりして、精神的に不安定になりがちです。こうした不安を抱えたまま生活するのはとても辛いですし、苦しいものです。このような不眠の症状を抱えている人は、日本国内だけでも実に5人に1人で、もはや国民病と言っても過言ではないでしょう。
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◆不眠の原因と症状
 一口に不眠と言ってもその症状はさまざまで、なかなか寝つけない入眠障害・途中で何度も目覚める中途覚醒・起きた時に満足感があまり感じられない熟睡障害・朝早く目覚めてしまい再度眠ることができない早期覚醒など、こういった症状に悩んでいる人の中には精神科もしくは内科に通院している人もいます。
 病院では睡眠薬や睡眠導入剤が処方されます。また、通院まではしなくても不眠に悩まされている人の中には、自ら薬局で睡眠薬を購入し服用している人も少なくありません。睡眠薬や睡眠導入剤はあくまでも薬なので、薬の効果が翌日まで持ち越され、寝起きの悪さや日中のぼんやり感・頭重感・倦怠感・ふらつき・脱力感などの副作用がでたり、薬を飲まなければ眠れない依存症になるという心配もあります。睡眠薬は、不眠を一時的に対症するものであって、不眠の根本原因を取り除くものではないのです。
 また、不眠の原因の一つに下アゴのズレがあります。現代人は食生活の変化や運動不足・ストレスによる歯ぎしりなどによって、奥歯が十分に発達していない場合があります。歯が十分に伸びていないと、噛み込みが深くなり、下アゴが前後左右にズレてきます。その結果、頬にある筋肉がたるんできます。脳は反射的にそのたるみを解消しようとして、筋肉の緊張を高める指示を出します。それが交感神経です。交感神経は、筋肉だけでなく精神も緊張させます。奥歯の高さが足りない状態が続く限り、この緊張を命ずる指示は昼夜を問わず出続けるため、筋肉も精神も緊張を強いられます。この交感神経から副交感神経に切り替わらないと、熟睡に必要なホルモンも減少してしまい、熟睡することができません。これが何時間寝ても疲れがとれない理由の一つとなります。

◆心地良い睡眠を
 睡眠に関する悩みを感じた時には、薬を服用することも解決法の一つですが、生活習慣の改善やほどよい運動を心がけること、精神をリラックスさせる、ハーブ香料や寝具など睡眠環境を整えることなども有効な方法といえるでしょう。また、食物や天然由来のサプリメントなどにも心地良い眠りを促すものがありますので、上手に取り入れると良いでしょう。


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VOL .31 『睡眠不足が良くない理由』 [眠り]

 日本人の平均睡眠時間は8時間くらいといわれますが、最近では短くなっているようです。睡眠不足でボーッとするというような経験はありませんか?気力・体力ともに充実している若い頃なら、1日や2日眠らなくても大丈夫かもしれませんが、カラダに無理がきかなくなってくると、不規則な生活がたたって不眠症に悩まされることは珍しくありません。最近では、この不眠症が直接的に健康に悪影響を与えることも分かってきました。

◆なぜ睡眠が大切か
 人は、目覚めている間は神経細胞がグルタミン酸という神経興奮物質を出し続けています。この物質が増え過ぎると脳の神経細胞が壊されてしまいます。ところが、眠っている間はグルタミン酸が減少します。また、脳にはグルタチオンという物質があって、眠っている間に生成されグルタミン酸の作用を打ち消す働きをします。そ
のため、不眠が続くと脳の神経興奮物質のグルタミン酸が過剰となり、それがさらに不眠を促進させ、ついには自律神経失調症やうつ病を誘発してしまうのです。睡眠は食事と同様に毎日のことなので、おろそかにしていると、気づかないうちに不眠症やうつ病になってしまいやすいのです。そうなると、頭がボーッとするだけでは済まされなくなります。
 仕事やつきあいで忙しいとか、受験勉強のために寝る時間が惜しくて十分な睡眠時間がとれない、眠る時間は十分あっても寝つきが悪い、熟睡できずに寝た気がしないなど…さまざまな理由で眠れない人が増えています。しかし、せっかく寝る間も惜しんで勉強しても、眠らないとその日に覚えた内容の記憶の保存はできないのです。長期記憶(いつまでも記憶しておくこと)のためには睡眠がとても大切で、眠らないと忘れてしまう確率が高いのです。
 一般的に睡眠は、深い眠り(ノンレム睡眠)と浅い眠り(レム睡眠)の繰り返しで、それが約90分の周期で繰り返されます。この睡眠の周期には体温の変化が深く関与しています。眠りたい欲求は体温が下がるにつれて起こり、体温が最も低くなった時に一番深い眠りとなります。ぐっすり眠れる人は明け方近くに最も体温が低くなっています。

◆よりよい眠りのために
 睡眠には脳の休養や、長期記憶の定着、成長ホルモンの分泌のほか、人が生きていく上で極めて重要な数多くの役割があります。しかし、睡眠には個人差があります。短い時間でも十分な満足感を得られる人もいれば、長時間の睡眠を必要とする人もおり、何時間眠るのがベストであると断定することはできません。
 心地よい眠りを得るためには、睡眠を妨げないことが大切です。まず、寝具は硬めで、かけ布団は軽い方が良く、枕も自分に合っていることが大切です。また、眠る前にはお茶やコーヒーなどカフェイン(神経を興奮させる物質)の摂取を避けましょう。アルコールには覚醒作用があり、質の良い眠りを得ることはできません。寝室はゆったりとし、アイマスクなどで暗くすることや、低音量の環境音楽を聴く、ハーブやアロマテラピー系の気分を和らげる芳香類など…睡眠を促す努力をしてみるといいでしょう。また、リラックス効果のある食材やサプリメントも注目されています。

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