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VOL.314『長寿遺伝子を活性化させるレスベラトロール』 [長寿]

◆フレンチパラドックス
 フラン人は脂っこくてこってりとした料理を食べているのに、太っている人が少なく、心臓病による死亡率が低く、平均寿命も長いことから『フレンチパラドックス』という言葉があります。理由の一つは食事の時に赤ワインを水のように飲むからだろうと言われています。フランスもドイツも水が硬水なのでカルシウムやマグネシウムの含有量が多いため水が苦くて渋みがあるせいで水の代わりにワインやビールを飲むのです。
 フランスに至っては子供の頃から赤ワインを水代わりに飲み、赤ワインにはポリフェノールの一種レスベラトロールが多量に含まれているので健康的なのだと自負しています。

◆レスベラトロールの効果
 レスベラトロールには長寿遺伝子を活性化する働きがあるという研究者の報告があり、これが日本のお茶の間でも話題となりました。レスベラトロールの効果は科学的には明確ではありませんが、この研究の根拠となったのはマウスでの実験です。マウスを3群に分け、1群には普通の餌、2群には高カロリーの餌を与えます。3群には高カロリーの餌にレスベラトロールを混合したものを与え、2年間肝硬変や心臓疾患、肥満、生死の状況を調べたところ、2軍のマウスは肥満で1年〜1年半で早死にし、肝臓には脂肪肝が見られました。3群のレスベラトロールを混合した餌のマウスには脂肪肝は見られず対照群の1群と同様に正常な幹細胞でした。この研究によりレスベラトロールは健康長寿に効果があるとされ、フランス料理と一緒に摂取すれば、肥満を防止し、健康長寿を維持できるとなったのです。
 この研究論文は2010年ハーバード大学から発表され世界中で話題となりました。アメリカでは、どんなに食べ過ぎても、高カロリー食でも、体重50kgの人は20g、75kgの人は30gのレスベラトロールを摂取すれば体重増加を抑制できると言われたほどです。この計算によりますと、赤ワインに含まれるレスベラトロールの量はグラス1杯で0.3〜1 mgなので毎食3万杯の赤ワインを飲まなければならないことになります。つまり、赤ワインを飲むだけではフレンチパラドックスは起きないということです。
 その後も老化や寿命に関連するレスベラトロールの論文は1000件以上発表され、結果はいずれも肯定的なものでした。レスベラトロールは1度に大量に摂取しても副作用の不安はないと言いますが、効果は明確ではありません。夢と可能性を信じてアメリカには今でもレスベラトロールを摂取する人が存在します。フランス人は頑固な国民性のようで、食事の時に赤ワインを飲むことで健康寿命が伸びると信じている人が多いようです。

◆寿命は遺伝子に委ねられている
 ヒトの細胞には60回ほどしか分裂できないという限界があります。しかし、分裂回数を変動させることは可能で、カロリー制限をすることで分裂回数を減らし寿命を伸ばせます。ところが、カロリー制限するとインスリン感受性が上がるので糖尿病状態になります。糖尿病になって長生き?と思いますが、ヒトの寿命は遺伝子によって制御されていて、その遺伝子には寿命を伸ばすものも縮めるものもあります。すべては寿命遺伝子に委ねられており、遺伝子が変異することで機能が停止したり、弱まったりするのです。通常、細胞や組織は成長を促す経路で活動を抑えると長寿化します。過度の成長は老化を促進します。ですからミトコンドリアの活動を弱めると長生きになります。また、活性酸素による過酸化が進むと細胞機能が低下します。細胞内のタンパク質合成もゆっくりすると酸化的リン酸化が抑えられます。これらが長寿に関連します。
 適度に赤ワインを飲み、ゆっくりとリラックスする生活を送り、硬水に近い水を飲む、フレンチパラドックスも全く嘘の話ではありません。

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VOL.302『長生きや健康維持に関わる食生活』 [長寿]

◆100歳以上の人の食生活
 日本では100歳以上の高齢者が増えています。長生きをしている人の食生活の特徴を調べると、肉や魚などの動物性タンパク質や大豆製品などの植物性タンパク質をバランス良く少量ずつ摂取していることが分かりました。一般的には高齢になると食事は淡白になり、肉や魚を食べなくなる人が増えますが、免疫機能を高めるためにはそれは有利な食生活とは言えません。だからと言って高齢者が肉を食べることは本当に健康長寿に役立つのでしょうか?60歳を過ぎた人は積極的に肉を食べるべきなのでしょうか?

◆肉や魚の効能
 肉の赤身の部分にはミネラル成分や亜鉛が含まれています。亜鉛は身体の生命維持の基となる新陳代謝に必要な多くの酵素を作る成分やタンパク質の合成、遺伝子情報を伝えるDNAの転写にも関与しています。亜鉛は牛肉に14.5mgと食肉の中で最も多く含まれています。豚肉や鶏肉にも牛肉の半分ほどの亜鉛が含まれています。また、牛肉に含まれるコレステロールは男性ホルモンのアンドロゲンの原料になります。週に1度はステーキを食べ、亜鉛を摂って新陳代謝を盛んにすることで免疫力の増強を図れます。さらに牛肉の赤身に含まれるエラスターゼという酵素は血管や筋肉の腱などを支えるエラスチンという繊維の働きを抑制するので、筋肉をバランス良く保つことで血管の弾力を保ち動脈硬化を予防します。
 徳川幕府、最後の将軍となった徳川慶喜は健康長寿のために豚肉を食べたことが知られています。豚肉はビタミンB1が他の肉よりも多く、焼いて調理するとさらに含有量が増えます。ビタミンB1の働きは糖代謝の補酵素としてブドウ糖をエネルギーに変換します。ビタミンB1が不足すると脳神経が働かなくなり、心臓発作の原因となります。
 牛肉、豚肉と並んで肉の御三家が鶏肉です。まず鶏肉は低カロリーで、タンパク質量は牛肉にも劣りません。なので、鶏肉は成長期の子供や高齢者に適しています。毎日鶏肉を食べても肥満や動脈硬化の心配は要りません。他に羊肉のマトンがあります。マトンは不飽和脂肪酸が多いのでコレステロールや中性脂肪を増やさないため、動脈硬化の予防に役立ちます。また、新陳代謝を活性化するアミノ酸のカルチニンも含まれています。カルチニンが欠乏すると筋肉の働きが低下し、ミオパチーと呼ばれる低血糖を起こし、心筋梗塞を起こすこともあります。カルチニンは身体のエネルギー代謝を参観にし、免疫力を高めます。
 魚類に含まれる不飽和脂肪酸のEPAやDHAの脂肪酸は血管の弾力性や若々しさを維持します。また、日本人はタコやイカをよく食べます。タコにはタウリンが奥含まれており、カキなどの貝類にも多く含まれています。イカは高タンパク質で低脂肪、タコと同じようにタウリンも豊富です。

◆新陳代謝を高めて免疫力を上げよう
 免疫力を高めるには新陳代謝を高めることです。新陳代謝とは体内で行われる生理反応のことであり、すべての臓器が順調に働くことです。新陳代謝を活性化するには亜鉛やカルシウムが必要です。特に女性は更年期以降に女性ホルモンが急激に減少するとカルシウムが溶け出しやすくなってしまうため、カルシウム不足が目立つようになります。すると骨粗鬆症が起きて骨折しやすくなります。肉類や魚介類のタンパク質を摂り、吸収性に優れた弱アルカリ性のカルシウムイオン水を飲むことでカルシウムを補うことが重要です。
 活性酸素は血管の動脈硬化を起こし、老化やガン発症の原因となるのですが、鮭の紅色の色素であるアスタキサンチンはカルテノイドで、活性酸素の働きを抑えます。また魚類には動脈硬化を防ぐEPAやDHAが含まれています。歴史的に魚料理や海藻、魚介類や大豆食品を食べ続けてカルシウムを含む弱アルカリ性の水を飲んできた日本人は知らず知らずのうちに良質のタンパク質やアミノ酸を摂取しており、新陳代謝を活性化することで健康長寿になったようです。

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VOL.299『100歳以上の長寿者に免疫力を学ぶ』 [長寿]

◆100歳以上の長寿者が増えている
 近年、日本では100歳以上の長寿者が急激に増えています。1980年代は1000人以下だったものが、1998年には1万人を超え、2012年には5万人、2019年には7万人を超えました。さらに2015年の国勢調査では110歳以上のスーパーセンチナリアンが146人おり、そのうち9人が男性、137人は女性でした。
 2019年に理化学研究所と慶応大学医学部研究センターが共同でスーパーセンチナリアン7名の血液を調べたところ、免疫細胞、特にキラーT細胞の中にあるCD4陽性と呼ばれる免疫細胞が20〜80代の人に比べて10倍以上も多く存在することが分かりました。つまり、110歳以上まで生きる人には免疫細胞に秘密があったのです。過去にも長生きする人と短命な人の違いはその人に備わった免疫力の差であるという報告がありましたが、その原因は生活習慣でした。長寿を目指すには免疫力を高めることが不可欠なようです。通常は加齢に伴って免疫力は低下するため、ガンの発症やウイルス感染症のリスクが高まるものなのですが、長寿者は免疫力が高いため致命的な病気を回避でき高齢になっても免疫機能が良好な状態を保つことができます。

◆免疫力を高める方法
 人間は、生まれつき持っている自然免疫と後天的に獲得した獲得免疫によって生命が維持されています。獲得免疫の主役を占めるのがリンパ球です。超長寿者ではリンパ球自体の生命力が驚異的に強いことが分かっています。リンパ球には、リンパ球、顆粒球(好中球・好酸球・好塩基球)、単球(マクロファージ)、単球から分化した樹状細胞があります。
 細胞の寿命は赤血球が120日、血小板が8〜12日であるのに対してリンパ球は数十年も生きられます。リンパ球はなぜそんなに長く生きられるのでしょうか?自然の中で人類が
生命を長く維持できるようになったのは免疫という防衛機能を獲得できたからです。絶えずウイルスや細菌の攻撃を受け、生存競争に明け暮れていた人類は、リンパ球が存在しなければ地球上で生存できなかったでしょう。21世紀に入ってからもSARSやMARS、今回の新型コロナウイルスなどによって生命を脅かされています。
 人類はウイルスとの生存競争に打ち勝つだけの武器をまだ手に入れていません。それまでは体内の免疫力を高める努力をしなければなりません。リンパ球に守ってもらえるよう、全身全霊を傾けるしかないのです。免疫力を高める免疫細胞の70%は腸管内に存在し、免疫が長寿の鍵を果たす役割を腸管免疫と呼びます。腸内には膨大な数の腸内細菌が住み着いています。健康な人では善玉菌が20%、悪玉菌が10%、日和見菌が70%の割合で存在し、このバランスが崩れると体調が悪化します。
 腸内細菌叢の中には腸管免疫細胞群と呼ばれる免疫細胞の集団が存在し、小腸粘膜には免疫力を高めるパイエル板があります。このパイエル板に免疫細胞が触れるだけで免疫細胞は攻撃的になり、ウイルスや細菌の特徴や戦い方を学習します。この教育を受けた免疫細胞が腸内から全身に拡散されて免疫力を高めます。

◆免疫細胞を活性化するために
 腸管免疫力には体内時計が関与しています。体内には24時間周期の体内時計が組み込まれており、その中枢は視床下部にあって朝と夜の生体リズムを調節することで生命活動を促します。その結果、免疫細胞やリンパ球、キラーT細胞が活性化します。朝に太陽を浴びることで活性型ビタミンD3が働いてカルシウムの腸からの吸収を高め。活性型ビタミンD3のカテリシジンと呼ばれるアミノ酸を生合成します。カテリシジンは免疫力を強化します。免疫力の強化にカルシウムは補助的な役割を果たします。体内時計が乱れるとリンパ球やキラーT細胞が活性化しません。若い人の中には昼間寝ていて夜になると仲間と食事や酒を飲みに出かける人がいます。そういう人は免疫力が落ちているので集団で新型ウイルスに感染する恐れがあります。40代を過ぎるとさらに感染しやすくなります。体内時計の乱れを直し、朝の太陽を浴びて免疫細胞を活性化し、スーパーセンチナリアンを目指しましょう。
 
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VOL.285『心臓の老化を防いで長生きしよう』 [長寿]

◆心臓病のリスク年齢
 60歳を超えると心臓病(不整脈や心房細動)の発症が急激に増えて、若年層の10倍以上となることから、60歳は心臓病のリスク年齢と呼ばれます。2018年の人口統計によれば60歳以上の人は6000万人を超え、全人口の34.6%となりました。
 なぜ60歳を超えると不整脈や心房細動が増えるのでしょうか。それには老化現象が関係しており、心臓も老化するからです。近年、50歳以上の女性の中には美魔女と呼ばれる実際の年齢にはとても見えない若々しい人が増えています。しかし、一見若々しく見える人でも、手や首筋にはシミやシワが出てきます。視力も低下しますので拡大鏡メガネが流行しています。つまり、悲しいことですが老化はすべての臓器や器官で進むということです。

◆心臓も老化する
 例えば、首筋の皮膚をつまんで離すとなかなか元に戻らないのは皮膚の柔軟性が失われている証拠で、同様に心臓も老化するので柔軟性が失われます。心臓の柔軟性が失われると、一番影響を受けるのが心臓の拡張です。心臓は動脈血を心室に送る臓器ですが、その心室の拡張がうまくいかなくなると同時に心房にも影響が出ます。左心房と左心室の間では血液が一方向にだけ流れます。左心房には逆流しないように僧帽弁があり、僧帽弁は左心室が収縮する時には閉じて逆流を防ぎます。拡張する時には僧帽弁が開き、左心房から左心室に血液が送られます。この時、左心室がうまく拡張しないと左心室の圧力が高まり、左心房にも圧力がかかります。左心室は全身に血液を送るので筋肉が厚く、左心房は薄くできています。そのため、心臓の老化現象が進むと左心房の方が圧力で拡大します。こうして不整脈や心房細動が生じます。すると、疲れやすさや息切れ、心不全などの症状が起きます。
 特に、健康のためマラソンやジョギングをしている60歳以上の人に心臓の老化が進んでいます。若い頃にスポーツをしていたので、いつまでも体力に自信があり、走ることにも抵抗がないという人が最も危険な状況を作ります。また、仕事に集中し、人生を自分中心に生きてきたキャリアウーマンにもこの傾向は強く、40〜50代でも心臓の老化が進んでいる人がいます。女性の場合は特に、老化しないようにと紫外線から肌を隠すなど様々な対策をします。基礎化粧品にこだわり、肥満を防ぐためにジムに通って運動し、食事は糖質の摂取を控え、肉類などのタンパク質を中心にサプリメントや栄養ドリンクを常飲するなど、美容を心がけて若さを保つためにあらゆる知識を入手し利用しています。それでも心臓の老化は防げないのです。老化を予防するカギは、毎日の食生活にあるようです。

◆老化を防ぐポリアミン
 最近、ポリアミンと呼ばれる物質が注目されています。まだ動物実験の段階ですが、ポリアミンをマウスの餌に混ぜて与えると心臓の老化が予防され、寿命が延びることが分かりました。ポリアミンはヒトの体内の各部位に存在する物質で、特に母乳中に豊富に含まれています。ポリアミン量は出生後10日から2週間位に最も多くなり、加齢とともに徐々に減少します。ポリアミン量と老化の関係はマウスでの実験結果から推測すると、80歳まで生きた人は100歳まで生き延びるという計算になります。しかし、寿命が延びても健康でないと意味がありません。動物実験の結果がそのままヒトにあてはまるとは言えませんが、ポリアミンは寿命だけでなく加齢に伴う認知機能の改善にも有効なようです。
 ポリアミンを多く含む食品は大豆や小豆・しいたけ・マッシュルーム・ピーマン・えんどう豆・とうもろこし・オレンジなどの柑橘類・小麦胚芽・ピスタチオ・ブルーチーズ・サザエやバイ貝の内臓・たらこ・いくら・牛モツ・鶏レバーなどがあります。そして人気の高い地中海料理などに使われる魚介類やオリーブオイル・ナッツ類は老化防止や心臓病の予防に効果があると言われています。和食にも魚類・貝類・キノコ類・納豆・大豆・小豆などが多用されるのでポリアミンが豊富に含まれています。
 心臓が元気なら健康で長生きできます。50歳を過ぎたら走る運動よりも歩く運動に変えましょう。規則正しい生活週間、水分補給、睡眠時間の確保、笑いの絶えない人間関係などを基本に心臓に負担をかけずに生活することで老化を予防し、元気に長生きしましょう。

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VOL.278『長寿遺伝子を働かそう』 [長寿]

◆子孫を残すためのプログラム
 人体には子孫を残すために有利に働くプログラムが数多く組み込まれています。それを動かすにはまず、健康であることが重要です。そして、生殖可能な年齢を過ぎると自然選択は原理的に働かなくなり、それ以降の長生きは保障されなくなります。つまり、若い頃には特に何も考えずに行動しても、ある程度は健康でいられるようにプログラムされていますが、加齢とともにその仕組みは崩れていくということです。しかも若いからといって、健康で長生きするために良くない行動ばかりとっていると当然障害が出ます。特に、暴飲暴食・睡眠不足・無理な体力使用などが生殖年齢を超えたときの急激な体力低下を誘引します。

◆長寿遺伝子『サーチュイン遺伝子』
 人間の本体は長生きするようにはできていません。イギリスの生物学者リチャード・ドーキンスは『利己的な遺伝子』という言葉を提唱しました。生物は遺伝子の乗り物に過ぎず、生殖が終わってしまえば遺伝子にとって個体は必要なくなるということです。サケなどは産卵を終えると死んでしまいます。それが生命の本質であるというのです。
 ところが、人間にはサーチュイン遺伝子という長寿遺伝子が見つかっています。すべての人がこの遺伝子を持っていますが、必ず長生きできるというものではありません。この遺伝子がオンになっている人が長生きで、オフのままの人は長生きできないのです。
 この長寿遺伝子のオン・オフは生活習慣や毎日の行動の結果で入れ替わり、その個体の生き方を見極めて長寿にするかどうかを決めています。最近の研究で究極の長寿の秘訣が分かってきました。それは子孫の繁栄に資する行動をとることです。子孫の生存に役に立っている個体は結果的に自分の遺伝子を多く残せます。そうすることで長寿遺伝子がオンになり、進化の過程で有利に働きます。子孫といっても自分の子供や孫の意味ではなく、社会に貢献することや若い世代の役に立つことで次世代に役立つ行動をしていると長寿になるようにプログラムされます。
 これは遺伝子の仕組みから導き出された当然の結論で、よく動き回り、子供や孫の世話をよく見ると長寿遺伝子が活性化し、スイッチがオンになります。しかし、よく動き回って働いても、食べ物や利益を独り占めにする強欲者は次世代の役に立たないので、自己中心的や自分勝手で常に自分のことしか考えない人の長寿遺伝子はオンにはなりません。人に分け与える優しさを持ち、心穏やかに生活していると長寿遺伝子がオンになるのです。

◆思いやる心でスイッチオン
 人類は飢餓の時代を経験したため、次世代の食べ物を奪ってしまうと急速に淘汰されることを遺伝子が記憶しています。それゆえ、次世代の繁栄に資する場合にのみオンになる長寿遺伝子が有利に働いたことで、人間は他の動物より非常に長生きになりました。長寿につながる仕組みが最も発達した、高度な知性と複雑な感情を持つ人類は次世代に対して目に見えない貢献をするだけではありません。人間は自分も老い、いつか死ぬことを認識して生きています。生殖年齢を超えてから生きることは人の役に立つことです。若い頃から人のために役立つことを考えて生きる人は早く長寿遺伝子がオンになります。生命の本質は長寿遺伝子をオンにして他人の役に立ち、次世代に影響を与えることです。これは人類の進化の過程で組み込まれた遺伝子が人間を高度な生き物に作り上げた結果です。
 同時に24時間の日内サイクルも次世代へと受け継がれました。人は毎日規則正しい生活習慣で、カラダを動かし、自分と同じ性質を持つ人と集団生活をすることで子孫が増え、遺伝子を外部から入れることで高度な人間として進化しました。また、自然の動きに合わせ、規則性を生活習慣に加えることで新しい文化へと発展させました。その結果、長寿遺伝子はさらに働き、活性化され、人はさらに長生きになりました。今日、日本は世界屈指の長寿国です。長寿遺伝子であるサーチュイン遺伝子が規則正しい生活習慣や運動習慣、他人を思いやる心でオンになっています。これも日本人の美徳であると言えるでしょう。

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VOL.276『オステオカルシンが老化を予防する』 [長寿]

◆オステオカルシンって何?
 若さを保つ骨の働きとは何でしょう?その中心となるのが『オステオカルシン』です。
コロンビア大学の教授J.カーセンティのグループは2007年の論文で、骨から出るオステオカルシンが全身の臓器に指令を出していると発表しました。糖尿病では膵臓や腸、肝臓、脂肪などに働きかけてインスリンなど糖尿病の発症に関与するメーセージ物質の量を調節し、実験的にオステオカルシンを作れなくしたマウスでは海馬が小さくなり、記憶力が低下しました。また、筋力を保つ効果や生殖能力を上げる効果も見られ、オステオカルシンは若さを保つというメッセージとして働いているというのです。骨から出るホルモンにはオステオカルシンの他にオステオポンチンがあります。オステオポンチンは免疫細胞の数を増やす効果があり、免疫力を上げる効果があります。

◆骨は生きている
 なぜ骨が若さを保つためにコントロールしているかというと、それは人類の進化とも関連があります。爪や毛髪、皮膚などの新陳代謝は目に見えるので分かりやすいですが、新陳代謝は体内でも起きており、硬い組織である骨においてもそれは同じです。骨は日々、骨芽細胞と破骨細胞によって作られたり壊されたりしていて、これを骨の代謝回転と呼びます。常に破骨細胞が優位に働けば、骨はスカスカになりボロボロの骨粗鬆症となります。逆に骨芽細胞が優位に働けば骨は成長し、丈夫になります。骨細胞が分泌するスクレロスチンと呼ばれるホルモンは骨芽細胞に働きかけ、骨の形成にブレーキをかけます。骨細胞はこの物質で骨全体をコントロールしています。
 若さを保つという骨の働きは、骨への刺激が多いほど活性化する傾向があります。運動による刺激を感知する骨はその衝撃のセンサーです。運動をしないとそのセンサーは働かずに退化していきます。すると骨折しやすくなり、寝たきりを招き、死亡率が上がります。現代人は昔の人に比べると歩いたり走ったりする時間が激減しています。健康寿命を目指すのであれば体重を重力に逆らって支えている骨を刺激して自分に適した運動で鍛えることです。
 硬い骨の中心部には空間があり、その内部には骨髄という細胞組織が詰まっています。この骨髄から赤血球や白血球などの血液成分が作られます。白血病はこの骨髄に異常が起こり、血液が作れなくなる病気です。治療のためには他人の骨髄を移植しなければなりません。骨髄内の造血幹細胞を増殖させるためにドナー(骨髄を提供する人)にG-CSF(コロニー刺激因子)を注射すると、数日後には血球細胞が大量に増えます。造血幹細胞は、胎児の時に大動脈の周辺で生まれ、その後肝臓に移って血液を作り続け、出産が近づくと骨に移動します。つまり、最も重要な細胞は安全に守られる硬い骨の中に移動するということです。骨細胞が運動の刺激を検知し、造血幹細胞に働きかけて血液成分の若さを保ちます。血液成分は次から次へと新しい細胞に作り替えられていくので、若さが維持されるのです。

◆運動で刺激を与えて若々しく
 血糖値が高い糖尿病ではインスリンの分泌量が減少するので骨の強度が低下し、骨質が悪化します。同時にコラーゲンの劣化も起こります。特に、関節軟骨のコラーゲンは皮膚のコラーゲンに比べて長寿命なので、老化のダメージも長く大きく受けます。
 その時、オステオカルシンが骨や関節の若さを保つように働きます。オステオカルシンを活性化して働きやすくするのがカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分です。これらのミネラル成分は、水溶性で小腸からの吸収性に優れた弱アルカリ性のイオン化した成分であることが重要です。
 骨は常に体内にオステオカルシンを放出して各臓器の働きをコントロールしています。骨や関節軟骨は子供の頃から重力に逆らってカラダを支えています。運動をすることで骨や関節軟骨に刺激を与え、オステオカルシンを働かせることがカラダ全体の老化の予防につながります。

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VOL.273『限界寿命まで生きるために』 [長寿]

◆虚弱(フレイル)とは
 近年、肥満やメタボが健康維持に障害となると問題視されていますが、後期高齢者が増加している日本では、むしろ痩せている状態の方が問題なのです。通常、高齢になると体重は減少してきます。75歳以上の高齢者でBMI(ボディマス指数)20以下の痩せ気味の人は女性が20%、男性が10%と女性の痩せ方が深刻です。
 痩せは虚弱(フレイル)という病気を引き起こします。虚弱と診断されるのは次の5項目のうち3項目が当てはまる場合です。1)体重が年間4.5kgあるいは5%以上減少する。2)歩行速度が0.3m/秒以下に低下する。3)握力が男性で26kg以下、女性で18kg未満に低下する。4)疲れやすい。5)身体の活動レベルが低下する。
 歩行速度が0.3m/秒以下のスピードとは、信号が青に変わって横断歩道を渡り始め、赤に変わる頃にようやく渡りきれる速度です。虚弱と診断されて問題となるのは健常者に比べて転倒の発生が1.3〜2倍、移動能力の悪化が1.5〜2倍、日常生活レベルの悪化が2倍以上になることで、その後、寝たきりや要介護になるということです。高齢者では75〜79歳で7%、80〜84歳で12%、85〜89歳で25%、90歳以上で44%が虚弱となります。虚弱の原因は筋肉量の低下で、サルコペニアと呼びます。脳が冴えている高齢の女性は多いですが、サルコペニアになる人も多いのです。

◆アメリカでの研究
 アメリカのボストン大学では100歳以上の長寿者を3群に分けて研究しました。1群は80歳以前に糖尿病や心筋梗塞を経験した人(43%)、2群は80歳以降にこれらの病気を経験した人(45%)、3群は100歳を過ぎても病気らしい病気をしていない人(12%)です。調査の結果、病気の圧縮という考え方が生まれました。病気をなるべく人生の最後に押しやることができる人が長生きするという考え方です。また、95歳以上の人とそれ以下の人で、ガン・心臓病・糖尿病・高血圧・骨粗鬆症がいつ起きたかを比較した結果、95歳以上の人の方が遅く起こり、発症時期には18〜24年の差がつきました。よって、病気にかかりにくいと寿命が長くなる確率が上がることが分かりました。この研究では長生きしている人は全体の33%で、男性が27%、女性は34%でした。長生きの人は病気にならないだけでなく、身体障害も防いでいます。そして、長寿の秘訣は、病気になってもそれを乗り越える元気さを持つことであると結論しました。

◆健康寿命から幸福寿命へ
 人間の限界寿命は115〜120歳位だといわれます。日本には100歳以上の百寿者は6万人以上います。ところが、110歳以上の人は146人しかいません。(平成27年国勢調査)90万人に1人の割合です。彼らは人生を限界寿命まで生きているのです。生きることにかけて完璧な成功者であり、長寿エリート、奇跡の人です。その壁は100歳と110歳の間にあります。今後も100歳までの人は増加しますが、110歳を超える人は多くはならないでしょう。110歳を超える長寿の人は高血圧や糖尿病、脂質異常症、ガン、認知症などにはなりません。肥満ではなく、血液中の炎症の度合いを示す数値が極めて低いという共通点があります。
 脂っこい食品をたくさん食べると腸に炎症が起こり、それが引き金となって全身の臓器に炎症が拡散します。腸内細菌がいつまでも若々しく保たれて腸が健康ならば全身の健康を長く維持でき、栄養状態が良好であれば免疫力が強く維持されて長寿につながります。よく食べて、風邪をひかないことで80以降の人生が充実し、幸福になります。
 加齢とともに頑固になり、人の言うことを聞かなくなるのが老化の始まりです。イライラや不機嫌さが増し、不幸せな気持ちになることが認知症を誘引します。高齢者は愉快に過ごしていれば動脈硬化が中程度で止まります。健康寿命からさらに進んで幸福寿命になることで認知症は防げます。幸福寿命で生きられれば限界寿命まで生きられて天寿を全うできるのです。すべてのことに感謝し、人の言うことに耳を傾け従うことが幸福につながります。毎日を楽しく過ごせるかどうかが重要なのです。あなたも長寿エリートを目指してみましょう。

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VOL.259『老化を予防するために』 [長寿]

◆高齢になると
 日本人の年齢別死因によれば90歳までの死因の1位はガンですが、90歳を超える頃からガンで亡くなる人は減少します。その理由は、高齢になって体力が低下し、食べられなくなるので老衰が進んだり、肺炎などの感染症にかかって死亡するので、ガンであっても死因は老衰や肺炎になるからです。
 高齢になると血圧が上がり、血糖値が高くなり、ガンになったりするので、それぞれの病気の症状を抑える薬物を次々に体内に入れ続けるため、最終的には薬が毒となり腎機能が低下します。すると腎臓が機能しなくなり、食べたものが腸で消化吸収されなくなって衰弱していきます。老化を予防するということは、このようになる前の対応です。

◆老化とは
 口から入った食物は胃や腸で消化・吸収され、タンパク質はアミノ酸に分解されて吸収されます。分解されたアミノ酸は再び合成されて新たなタンパク質となり、再び細胞に取り込まれて利用されます。これを新陳代謝と呼びます。新陳代謝は加齢とともに遅くなります。このサイクルはストレス・酸化・炎症などによって劣化し、AGE(終末糖化産物)を生じ、組織タンパク質は変性します。それが老廃物として蓄積し、細胞の機能障害となります。
 細胞内ではエネルギー産生の際に活性酸素が生じ、周囲の細胞組織を酸化させます。これは生理的に避けることができず、この活性酸素が細胞や組織を老化させます。活性酸素によって遺伝子DNAが損傷されると、遺伝子の一部が酸化し、8ヒドロキシ・デオキシグアノシン(8−OHdG)を生成します。その後、直ちに損傷を受けたDNAは修復され、8−OHdGは血中に排泄され尿中に出ます。そこで8−OHdGを測定すれば体内の酸化度が分かり、DNAの損傷度が分かることになります。
 老化とは体内の酸化度であり、カラダや肌など組織の老化をいいます。カラダはタンパク質と糖質の結合で構成され、そこに異常が生じるとAGEが生産されます。AGEが増加すると加齢とともに糖尿病・動脈硬化・高血圧・ガン・腎機能障害・骨粗鬆症・神経疾患などの障害が進みます。これに病気が加わることで、さらにAGEの生成が促進されます。糖化反応は、血糖値を急激に上昇させます。不規則な生活や、甘い物の過剰摂取、油分の多い食品の摂取、酸化物質の過剰摂取などの食生活で糖化反応は進行し、AGE生成を増やして蓄積します。

◆食物繊維をたっぷり摂ろう
 つまり老化を予防するということは、活性酸素の発生を抑え、酸化を減らし、糖化や炎症を最小限にすることです。カラダは酸化や活性酸素から逃れることはできませんが、酸化を還元して戻すことはできます。それが水素の役目です。水素分子はH2で軽くて可燃性が高く無味無臭です。水素は濃度が4%以上にならなければ燃えません。したがって自然の状態で水素が集まっても爆発することはありません。水素は地球上では酸素・ケイ素に次いで3番目に多い豊富に存在する元素です。軽い気体で放置すると上昇します。単体では自然界に存在できず、水(H2O)の化合物として存在します。気体でH2となり、水中では水素イオンとしては存在できません。
 活性酸素は水素に接触し結合することで安定化します。これが還元です。老化とは細胞膜が酸化することで細胞が劣化することです。酸化は隣り合う周囲の細胞膜を次々に劣化させ、それが細胞に連鎖していきます。細胞の酸化を防ぐのが細胞膜を還元する抗酸化物質です。酸化の除去と予防が老化防止です。老化の原因は酸化であり、酸化を防止できる可能性があるのが水素です。体内では食物繊維を食べる腸内細菌が水素ガスを作り発生させます。また、糖分を食べることでも水素は発生します。糖の吸収をゆっくりさせるのが食物繊維です。腸内細菌の栄養素は食物繊維で、体内環境を弱アルカリ性に保ち、腸内バランスが整い、善玉菌が活躍できれば水素ガスが増えてカラダは元気に働きます。若いうちから適度な糖分と、たっぷりの食物繊維を一緒に食べることが老化防止には良いようです。

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VOL.193『長寿遺伝子を働かせましょう』 [長寿]

◆長寿遺伝子とは
 日本は世界に先駆けて長寿国となり、100歳以上の長寿者は5万人を超えました。2003年、アメリカ・マサチューセッツ大学で酵母の長寿遺伝子が発見され、全てのヒトにもこの長寿遺伝子があることが分かりました。この長寿遺伝子は、若い頃には働く必要がないので細胞の中で休んでおり、50歳以上になると働き出します。100歳以上の長寿者はこの長寿遺伝子が働いたのです。
 ヒトが活動する時にはエネルギーが産生されますが、同時に2〜3%の活性酸素が産生され、細胞内の遺伝子を傷つけます。細胞は分裂するごとに傷ついた遺伝子によって障害されます。つまり、老化は遺伝子の傷が原因で起こり、肉体の変化として現れます。活性酸素が引き起こす細胞の傷から遺伝子を守るのが長寿遺伝子で、老化の速度を遅らせる働きがあります。そして長寿遺伝子の働きには個人差があります。

◆飽和脂肪酸・不飽和脂肪酸
 ヒトのエネルギー源の中心となるのが糖質です。若い頃は基礎代謝が大きいので、糖質を過剰に摂取しても肥満になりにくく、糖質を制限するとエネルギー不足となります。40〜50代からは糖質を過剰に摂取すると基礎代謝が低下しているので肥満になり、長寿遺伝子が働きません。
 長寿遺伝子を働かせるには糖質を制限することであり、これが肥満や糖尿病を防ぐ要因となります。糖質を制限するだけでは栄養バランスが乱れるので、肉類や魚介類、豆類などのタンパク質を摂取しましょう。肉類は毎日もしくは週に2〜3回摂取し、同時に野菜の食物繊維を摂りましょう。肉類は飽和脂肪酸が多いので、血液中の悪玉コレステロールや活性酸素が増加しますが、一緒に野菜や果物、豆類や海藻類を食べると腸内バランスを整います。
 50歳前後から男女ともに更年期障害になります。女性は女性ホルモン(エストロゲン)の減少によって男性よりも症状が明確で、倦怠感・不安感・集中力の低下などが起きます。男性も男性ホルモン(テストステロン)の分泌量が減少し、性欲や性機能・筋肉量が低下します。飽和脂肪酸は常温で固まりますが、不飽和脂肪酸は常温でも固まりません。常温で液体状のものを油、固体状のものを脂肪といい、両者をまとめて油脂といいます。飽和脂肪酸は牛・豚・鶏の肉類や牛乳・卵・バターなどの乳製品で、ヒトの体内では固まりやすいので血液をドロドロにします。不飽和脂肪酸は魚介類や野菜に含まれる油で体内でも固まらず血液はサラサラな状態で流れます。
 不飽和脂肪酸は脳の細胞膜、神経細胞やシナプスの細胞膜に欠かせない材料です。特に、50歳以上の認知症予防に有効な不飽和脂肪酸であるDHAやEPAは青魚に多く含まれています。週に3回以上の頻度で魚を食べる人は認知症になる確率が低いという調査結果もあります。

◆健康で長生きを
 50歳以上になると、肥満解消のために急に運動を始める人が増えます。運動は男性ホルモンの分泌に役立ち筋肉量を増やしますが、活性酸素の発生量も増やします。激しい有酸素運動やマラソンは、肉体(筋肉)を鍛えるのには良いですが、老化も早めます。過度の負担をカラダにかけると、活性酸素の発生量が増し、長寿遺伝子が働かないので、老化が進みます。
 50歳を過ぎたら、カラダを冷やさないように温泉やお風呂で体を温め(ヒートショックプロテイン)、深呼吸で新鮮な空気を吸い込み、ミネラル成分を豊富に含む水をたっぷり飲みましょう。また、腸内フローラの働きを高める食物繊維を十分に摂取しましょう。腸の蠕動運動を活発にすると長寿遺伝子が働き出します。長寿遺伝子を働かせ、いつまでも健康で長生きしましょう。

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VOL.190『健康寿命を延ばし天寿を全うしましょう』 [長寿]

◆『養生訓』
 健康に関する指南書として、江戸時代に貝原益軒によって書かれた『養生訓』が有名です。同時代に活躍した松尾芭蕉は翁(おきな)と呼ばれ、長生きしたと言われていますが50歳ほどで亡くなっており、当時は50歳が自他共に老人と認める時代であったことが分かります。
 養生訓には、人間の体は天地や父母の恵みを受けて生まれ、謹んでよく養って天寿を保つべきであると書かれています。人間の体は100年を期限とし、上寿は100歳、中寿は80歳、下寿は60歳で、60歳以上は長生きとされます。貝原益軒本人は85歳の長寿で亡くなっています。

◆目指せセンテナリアン
 今日、日本では人生90年時代を迎えようとしています。果たして人間は何歳まで生きられるか?限界寿命には遺伝子レベルも含めて様々な説がありますが、だいたい120歳ぐらいとされています。長寿の記録では、かの有名なオールド・パーが150歳まで生きたという話がありますが、これは伝説的なもののようです。実際にはフランス人女性のジャンヌ・カルマンさんが、122歳で1997年に亡くなった記録がギネスブックに登録されています。日本では鹿児島県徳之島の泉重千代さんが1986年に120歳で亡くなったとされていますが、誕生当時の戸籍制度があいまいだったため、生年の確認はできないそうです。中国では秦の始皇帝が不老不死の仙薬を求め、仙薬によって逆に死期を早めたといいます。不老不死の仙薬などなかったのです。
 100年を生き抜いた人たちを「センテナリアン」と呼びますが、近年日本ではセンテナリアンが5万人を超す集団となっています。これらの長寿者から天寿を全うするための条件を調べると、小柄な人が多く、常に平均体重を維持し、体重の変動は少ない。小柄で基礎エネルギー代謝が少ないことから、動脈硬化・脳梗塞・心筋梗塞などのリスクが低いのです。100歳以上で有名になった双子の姉妹キンさんとギンさんの脳を調べたところ、動脈硬化が少なかった記録があります。100歳以上の長寿者は、生活習慣や食習慣が規則正しく、多種類の野菜を摂り、魚もよく食べています。歯がほとんどなくても刺身などの柔らかい食品、様々な食品を偏りなく食べています。多くは仕事好きで、畑仕事などに精を出し、高齢になっても仕事に情熱を持ち続け、明るくよく笑い、前向き思考で、活動的、意欲的、積極的な人たちです。逆境においても順応性が高いのが特徴的で粘り強さがあります。社交性に富み好奇心旺盛で、興味を持つと深く突き詰める性格で、ストレスに強い、これが知的能力を刺激し衰えを感じさせません。

◆天寿を全うするために
 天寿を左右するものには遺伝的要因と環境的要因がありますが、近年、長寿遺伝子が注目され、研究が進んでいます。一般的に若い頃は命などには無頓着なもので、加齢とともに気になってくるのです。命の重さや大切さに気づく頃には命の先が見え、危ぶまれる状況が進行していることもあります。若いからといって毎日の生活習慣が乱れていれば、カラダの遺伝子に記録され個人の性格として蓄積します。大人や高齢になって気づいても回復はできないのです。ヒトは生まれる時には平等に命を手に入れ、100歳の天寿が全うできるように遺伝子に組み込まれます。しかし、生活習慣の中でそれが徐々に障害されていき、病気や事故によって寿命が終了します。それぞれの人に原因があり、天寿への道は自分で創るものであると養生訓は教えています。400年前の教えに従い、ミネラル豊富で栄養バランスの良い食物を摂り、良い水を飲んで100歳長寿を全うしましょう。

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