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VOL.179『小児の慢性疲労症候群について』 [眠り]

◆小児の慢性疲労症候群とは 
 最近は幼児や小児が大人の生活習慣に合わせて夜遅くまで起きています。その結果、睡眠不足が続いて慢性的な疲れや倦怠感があり、朝起きられない子供が増えています。これを小児の慢性疲労症候群と呼びます。このような小児の脳をCTで画像診断してみると、大人で見られるような複雑な内容や課題を処理する神経が過剰に働き、脳に疲労が見られます。
 国際慢性疲労症候群学会の診断基準によれば、小児の慢性疲労症候群は疲労や倦怠感が3ヶ月以上続き、安静状態にしても回復せず、教育や社会面での機能が著しく低下している病気とされています。

◆原因は?
 そこでその発症の仕組みを解明するため、この病気が同時に複数の課題を処理する際に注意力や集中力の低下・注意配分機能の低下を示すことに注目し、慢性疲労症候群の子供15人、健康な子供13人を対象にテストを実施しました。問題は、ひらがなで「まりこはみつめた」「あおいうみをみた」などの文字を次々に表示し、文章の内容を理解できるかを調べると共に、その文章の中に母音が含まれているかについても質問しました。このように2つの課題を同時にこなす際に脳の働きがどう変化するかをMRIを用いて調べたところ、健康な子供は、脳の左側の前頭葉2箇所で効果的な情報を素早く処理していたのに対し、慢性疲労症候群の子供は合計6箇所の部位を活動させていたことが分かりました。この結果から、小児の慢性疲労症候群では課題を処理する脳の活動部位が広範囲にわたるため、脳が過剰に働いて疲労が増してしまう、つまり脳の機能が低下しているのではなく、脳の機能低下を他の脳神経部位を使って補おうとするため、脳を過剰に活動させていたのです。これが慢性疲労や倦怠感となって、脳の機能低下や能力低下を引き起こすのです。
 小児の慢性疲労症候群の国際診断基準の概要によれば、
1)少なくとも3ヶ月以上の睡眠や休養によっても改善しない疲労状態が続き、日常生活が障害されている。2)初期は甲状腺機能障害など一般検査でも異常が見られない。3)次の症状が中程度以上である(階段の昇り降りが遅い、本を読む行為で認知力の疲労があり回復が遅い、毎日居眠りし寝つきが悪い、昼夜が逆転する、筋肉痛・腹痛・胸部痛・眼痛・吐き気・嘔吐などの症状がある、記憶障害・集中力の低下・理解が悪い・関心がないなどの症状がある、ふらつく・四肢の冷感・微熱などの症状がある)
 以上のような症状があれば小児の慢性疲労症候群と診断されます。

◆親子で一緒に取り組みましょう
 このような子供に対し親子一緒に睡眠指導を行って慢性疲労を改善し、不登校を減らす取り組みが行われています。2009年から全国7つの自治体では、中学生や高校生の睡眠調査や指導を実施し、睡眠状態を改善したところ、不登校が減少したという成果があります。
 24時間眠らないコンビニや漫画喫茶などによってヒトの日内変動や体内時計が変化しています。そしてそれは子供達の健康にも影響を及ぼしています。睡眠時間が減少している現代、睡眠不足が子供の脳神経に記憶力の低下・集中力の低下・判断力の低下・残虐性の増加などの障害を与えています。未来を担う子供達の健康を管理するのは私たち大人の責任と言えるでしょう。脳や免疫力が急激に発達する思春期を、健康的な生活習慣で過ごさせるように指導しましょう。まずは正しい睡眠習慣から。

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