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VOL.316『脳内を流れる水が健康維持に関わっている』 [体]

◆人工知能と人間の脳
 21世紀の現代、コンピュータの進歩は目覚ましく、将棋や囲碁、チェスなどの分野ではAI(人工知能)が人間を凌駕しているようです。また、家電や車の自動運転など日常生活においてもAIが活躍し、AIを兼ね備えたロボットもどんどん進化しています。果たしてAIは人間の脳になれるのでしょうか?脳はなぜコンピュータに類比されるのでしょうか?コンピュータは脳の情報伝達作用のメカニズムを応用しています。コンピュータのデジタル信号は神経回路のONとOFF、0と1の組合せなので脳の電気信号をバーコードに置き換えて解読すればコンピュータで再現できます。脳の記憶や意識というアイディアをインターネットに接続できる夢のような技術を再現できる日はそれほど遠くないのかも入れません。
 脳内で電気信号を動かしている神経細胞はニューロンと呼ばれ、その活動を知ることで脳の働きを解明できると信じられてきました。ところが、最近の研究では他にもさまざまな要因があり、その要素がニューロンをサポートしていることが分かりました。その中には喜怒哀楽などの心の働きがあり、それがあるから人は生きていると実感できるのです。

◆常に入れ替わりながら満たしている
 脳はニューロン以外にグリア細胞と呼ばれる細胞から構成されています。これが脳の情報伝達にも関与します。また、頭蓋骨の下には脳脊髄液という液体(血液)が脳内を循環し、健康な脳の働きを維持しています。その隙間は間質液という液体で満たされています。脳の間質液は頭蓋骨の下を流れる無色透明な液体で、成人では130ml存在し、1日に450〜500ml産生され3〜4回入れ替わる脳の水です。
 鎌倉時代の鴨長明が記した方丈記の冒頭部分には、無常観(変わらないものなど何もない)という思想を表現した有名な言葉があり、現代に生きる人々も共感できる美しい言葉です。この無常観と恒常性は相反する言葉ですが、間質液も脳を浸しながら、その水は常に流れて入れ替わっており、同じことを意味しています。この液体が脳脊髄液です。これによって脳内環境は常に一定に保たれ、健康が維持されます。これを恒常性と呼び、これが水の役割なのです。今から800年前に常に流れ続ける川の流れを見て鴨長明は無常観を発想しました。これと同じ発想で現代医学は脳内の水の流れによる恒常性維持を逆説的に発見しました。

◆脳内の水の質にこだわろう
 間質液は無色透明な液体でイオン化したナトリウムやカリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラル成分が一定の範囲内でバランスよく調節され存在しています。特にカルシウムイオンとマグネシウムイオンは体内で欠乏すると脳を守るため脳に優先して回されます。
 神経細胞は細胞の内側と外側のイオンバランスが厳密に保たれることで活動が維持され、健康が維持されます。しかし、新鮮な間質液の供給が停止すると神経細胞はエネルギーを使ってイオンバランスを変化させます。すると神経細胞に老廃物のアミロイドβが沈着し、アルツハイマー病を発症しやすくなります。
 グリア細胞は頭の良さ、知性を生み出すことが知られていますが、カルシウムイオン濃度が上昇すると活性化することが分かりました。ミネラル成分を豊富に含む弱アルカリ性の水をたくさん飲んで脳内の脳脊髄液や間質液を入れ替え、神経細胞とグリア細胞を活性化させることが健康維持や長寿につながるようです。

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