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VOL.307『ケトン体をブドウ糖の代わりに』 [体]

◆空腹になると出てくる匂い
 近頃はマスクをする機会が増え、口臭を気にしなくても済むと思いがちですが、マスクをしたままで長くいるとマスク内には口臭が溜まります。口臭の原因は歯周病や虫歯、歯垢であると言われるので、若い女性などは歯のケアに余念がありませんが、実は口臭の最大の原因は空腹です。空腹の時間が長くなると独特な匂いが口腔内から出てきますが、それがケトン体の匂いです。
 私たちは主にブドウ糖をエネルギー源としており、そのうちの20%は脳が優先的に消費するので、他の臓器でブドウ糖が欠乏するとカラダは脂肪を分解して脂肪酸やアミノ酸を生成し、これを使ってケトン体を作ります。ケトン体と呼ばれるのはアセト酢酸、βヒドロキシ酪酸、アセトンの3種類であるため、ケトン体臭は独特な甘酸っぱい、リンゴが腐ったような匂いと表現されることもあります。特にダイエットや肥満防止のために糖質制限を始めた人からはケトン体臭が強く周囲に漂います。

◆ケトン体の働き
 ケトン体臭は口臭だけでなく、尿や汗としても強く出ます。また、皮膚には色素性痒疹と呼ばれる湿疹が出ることがあり全身の皮膚が痒くなります。それまで糖質に依存してきた人が急に糖質制限をすると、湿疹や口臭、尿臭、汗臭が強く出ることがあるのでその時には糖質制限を緩める必要があります。ダイエットの時間を減らすなどしないと皮膚症状はさらに悪化します。
 ケトン体臭は糖質制限に体が慣れてくると、全くなくなりはしませんが徐々に減少します。これは身体がケトン体を効率良く使えるようになってきたことを示します。糖質制限を始めた頃はケトン体が急激に増すことで代謝が規則正しく回らず、ケトンが使われきれずに余ります。余ったケトン体が口臭や体臭として匂いを引き起こしますが、やがて、身体がケトン体をエネルギー源とすることに慣れてくると効率よく使われるようになります。空腹時に口から甘酸っぱい匂いがしたら脂肪が分解され、ケトン体がエネルギー源として利用されている証拠です。現代人は糖質に依存しているのでケトン体はあくまでも緊急用です。遭難してしまい絶食状態になっても水さえあれば数十日生き延びられるのは、体内に蓄えられた脂肪が脂肪酸に分解されて合成されたケトン体がエネルギー源となるからです。
 また、ケトン体にはガンを誘発する酵素の活性を低下させ、炎症作用を抑制する抗ガン作用があります。正常細胞はケトン体をエネルギー源にすることができますが、ガン細胞はエネルギーとして使えません。そこで、ガン患者をブドウ糖依存からケトン体依存に切り替えることでガン細胞の増殖を抑制し、死滅させることができます。

◆老化防止や長寿にも
 体内の活性酸素はケトン体が出ていると数値が下がります。また、細胞は飢餓状態になるとNAD(ニコチン・アミド・アデニン・ジヌクレオチド)という代謝酵素を増やして休眠中の長寿遺伝子を活性化します。体内をケトン体状態にすると長寿遺伝子が活性化するので老化防止や寿命を延ばすと言われます。
 現代は飽食の時代ですが、意識的に食事の回数を減らしたり、糖質摂取を減らすことを繰り返すとケトン体をエネルギー源にすることができます。規則正しい生活の中で、空腹時間を長くする、この状態を身体が経験することで、脂肪からケトン体形成が進み、ケトン体の形成が正常になれば口臭や体臭もなくなっていき、知らぬ間に健康維持ができるようになります。その際には十分な水分補給も忘れないでください。

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