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VOL.313『直感力を鍛えて人生を楽しもう』 [脳]

◆大抵のことは顔に出る
 自然界において人の顔ほど多くの情報を効率よく伝えるものはありません。新生児は生まれて1時間ほど経つと、目や鼻、口に表情が出てきます。生後4日目には母親の顔を見分けられるようになり、2週間ほど経つと母親の顔の真似をし始め、徐々に言葉を覚えていきます。通常、顔を見ればその人の性格や年齢・素性・感情・意図・健康状態などがある程度分かります。何を感じているか、何を言いたいかを顔は同時に表現します。偽りの微笑みや心にもないこと・関心を抱いたふりなどは大抵悟られてしまうので『顔は嘘をつかない』とか『ちゃんと顔に書いてある』と言われます。
 網膜から入った情報は視覚経路を通り扁桃体に集められます。外界からの情報は常に流動的なので、脳は途中で変化するものはすぐに切り捨て、朝も夜も変わりなく恒久的なものだけを取り出して海馬に記憶します。人は、対面すると直ちに相手の顔にどのような特徴があるのか無意識に見抜こうとし、特徴的なものは海馬に記憶され蓄積されます。扁桃体では今見た画像と脳内に先住した画像の情報を照合し、同定して分類します。人は本能的に相手の目の動きが気になるため、相手が見ている方向に視線が行きます。手品師はこれを利用して観客の目をそらすために大袈裟に振る舞い、目をそらします。そこにトリックが仕込まれているのです。

◆感覚は影響しあって働いている
 目は見て、耳は聞き、鼻は嗅ぎますが、各々の感覚はお互いに影響しあいながら専用回路を経て脳の領域で情報が処理されます。つまり、脳はあらゆる感覚を総動員して横断的に外界の像を捉えているのです。声を聞いて知るのは耳だけではなく、無意識に相手の顔を見て口の動きを観察しています。また、顔の動きが分からなくても、母音や子音の区別を顎の動き方で推察します。有声子音と無声子音では頬の動きが違い、舌の奥の位置や口の中の空気量でも変わってきます。顔を触ることによって声を確認できたり、匂いで警戒情報を得たりもできます。相手に接近すべきか回避すべきか、気が付かないほどの匂い刺激であっても嗅覚神経細胞は反応し、脳領域は活性化します。食事や飲み物は、舌で感じ、目で色を感じ、鼻で匂いを感じて味を判断します。暗い夜には指に目があるかのように空間的な位置関係が分かったりします。目が見えない人ほど聴覚や触覚が鋭敏で、脳が視覚領域よりも聴覚や触覚領域を拡大させて対応します。

◆直感力は鍛えられる
 感覚の一つとして、直感力を鍛えることができます。直感となる洞察力が冴えると大脳皮質や情報伝達物質が働きます。直感とは一瞬のうちに意識が高まる『勘』なのです。視覚に想像と創造があるように、直感でも想像と創造を巡らせ情報の先読みをします。直感力のある人は大脳辺縁系が発達しており、意識する情報を気に留めめません。固定観念を払いのけ、ある事象だけを歪めて過大評価することもありません。遺伝子が関与し、個人が学習した経験を有効に活用することもできます。その情報を使って判断や言動の根拠にすることもできます。危険を回避して今後生きるための指針ともなります。直感力がついてくると情報が正しいか正しくないかの区別を自然に判断できるようになります。また似顔絵を描くと、その人の特徴を写真よりも分かりやすく強調することができます。常に相手の顔から微妙な感情の変化を瞬時に読み取れるようになり、知らず知らずのうちに新しい人との偶然の出会いが多くなり、その人の第一印象を明確に判断することができるようになります。直感力を鍛えれば、今後の人生で仲良くできる人なのか、相手を見る目ができて人生が楽しくなります。

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