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VOL.314『長寿遺伝子を活性化させるレスベラトロール』 [長寿]

◆フレンチパラドックス
 フラン人は脂っこくてこってりとした料理を食べているのに、太っている人が少なく、心臓病による死亡率が低く、平均寿命も長いことから『フレンチパラドックス』という言葉があります。理由の一つは食事の時に赤ワインを水のように飲むからだろうと言われています。フランスもドイツも水が硬水なのでカルシウムやマグネシウムの含有量が多いため水が苦くて渋みがあるせいで水の代わりにワインやビールを飲むのです。
 フランスに至っては子供の頃から赤ワインを水代わりに飲み、赤ワインにはポリフェノールの一種レスベラトロールが多量に含まれているので健康的なのだと自負しています。

◆レスベラトロールの効果
 レスベラトロールには長寿遺伝子を活性化する働きがあるという研究者の報告があり、これが日本のお茶の間でも話題となりました。レスベラトロールの効果は科学的には明確ではありませんが、この研究の根拠となったのはマウスでの実験です。マウスを3群に分け、1群には普通の餌、2群には高カロリーの餌を与えます。3群には高カロリーの餌にレスベラトロールを混合したものを与え、2年間肝硬変や心臓疾患、肥満、生死の状況を調べたところ、2軍のマウスは肥満で1年〜1年半で早死にし、肝臓には脂肪肝が見られました。3群のレスベラトロールを混合した餌のマウスには脂肪肝は見られず対照群の1群と同様に正常な幹細胞でした。この研究によりレスベラトロールは健康長寿に効果があるとされ、フランス料理と一緒に摂取すれば、肥満を防止し、健康長寿を維持できるとなったのです。
 この研究論文は2010年ハーバード大学から発表され世界中で話題となりました。アメリカでは、どんなに食べ過ぎても、高カロリー食でも、体重50kgの人は20g、75kgの人は30gのレスベラトロールを摂取すれば体重増加を抑制できると言われたほどです。この計算によりますと、赤ワインに含まれるレスベラトロールの量はグラス1杯で0.3〜1 mgなので毎食3万杯の赤ワインを飲まなければならないことになります。つまり、赤ワインを飲むだけではフレンチパラドックスは起きないということです。
 その後も老化や寿命に関連するレスベラトロールの論文は1000件以上発表され、結果はいずれも肯定的なものでした。レスベラトロールは1度に大量に摂取しても副作用の不安はないと言いますが、効果は明確ではありません。夢と可能性を信じてアメリカには今でもレスベラトロールを摂取する人が存在します。フランス人は頑固な国民性のようで、食事の時に赤ワインを飲むことで健康寿命が伸びると信じている人が多いようです。

◆寿命は遺伝子に委ねられている
 ヒトの細胞には60回ほどしか分裂できないという限界があります。しかし、分裂回数を変動させることは可能で、カロリー制限をすることで分裂回数を減らし寿命を伸ばせます。ところが、カロリー制限するとインスリン感受性が上がるので糖尿病状態になります。糖尿病になって長生き?と思いますが、ヒトの寿命は遺伝子によって制御されていて、その遺伝子には寿命を伸ばすものも縮めるものもあります。すべては寿命遺伝子に委ねられており、遺伝子が変異することで機能が停止したり、弱まったりするのです。通常、細胞や組織は成長を促す経路で活動を抑えると長寿化します。過度の成長は老化を促進します。ですからミトコンドリアの活動を弱めると長生きになります。また、活性酸素による過酸化が進むと細胞機能が低下します。細胞内のタンパク質合成もゆっくりすると酸化的リン酸化が抑えられます。これらが長寿に関連します。
 適度に赤ワインを飲み、ゆっくりとリラックスする生活を送り、硬水に近い水を飲む、フレンチパラドックスも全く嘘の話ではありません。

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