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VOL.306『感染症を予防する粘膜の免疫』 [健康]

◆免疫を知る
 2020年、冬になり、新型コロナウイルスの感染は第3波を迎えたと言われています。感染症のウイルスから身を守る仕組みが免疫です。身体はウイルスや細菌などの外敵を侵入させないように防御し、万が一ウイルスが侵入した際にはそれを攻撃して排除しており、これが免疫です。咳やくしゃみ、会話などでウイルスが口や鼻、目などの粘膜に付着します。それを攻撃して防御するのが粘膜の免疫です。粘膜はウイルス感染を防ぐ最前線なのです。粘膜の免疫力を活性化するのが栄養素です。
 古来から感染症には多くの人命が奪われ、その繰り返しの日々でしたが、1度感染して生き残った人は2度とその感染症にはかからないことが経験的に判りました。これが免疫ができたということで、種々の病原体に対する免疫を獲得し、私たちは生き延びてきました。

◆免疫を担う細胞たち
 まず、病原体の免疫に働くのが粘膜で、そこに常駐しているのが白血球です。白血球には好中球やマクロファージ・樹状細胞・NK細胞などの免疫細胞があります。初めて侵入した病原体を発見するのが好中球・マクロファージ・NK細胞で、これらの細胞の隊長が樹状細胞です。樹状細胞は免疫を担当する細胞に外敵の情報を伝えて攻撃の仕方を支持します。B細胞には侵入者の抗原情報を伝え、その抗体を作らせます。ウイルスの持つ抗原と抗体が結合(抗原抗体反応)することでウイルスが持つ毒性を無毒化します。身体の最初の関門が粘膜なので、ここで外敵を排除できれば病気にはなりません。すなわち粘膜の免疫力を高めることが大切だということです。
 細菌による感染症に効く薬が拮抗薬(抗生物質)です。この薬は細菌の増殖を抑制するのが目的です。ところが風邪の元となるRSウイルスやコロナウイルスには効果がありません。ウイルスに対抗するのは抗ウイルス薬やワクチンです。抗ウイルス薬にはウイルスに直接作用する薬と免疫機能を調整する薬があります。ウイルスには細胞膜がなく、ヒト細胞に寄生するのでウイルスだけを攻撃するのは困難です。ワクチンにはウイルスの病原性を弱めた弱毒化ワクチンやウイルスの毒性を無毒化したワクチンがあります。それらを接種するとウイルスに対する抗体が作られ、ウイルスに感染しても発症や重症化の予防ができます。

◆ネバネバ食品を摂ろう
 新型コロナウイルスに対する抗ウイルス薬やワクチンは開発段階であり、すぐに効果が現れるかは未知数です。ならば、免疫力を高めることが重要で、免疫力を高めるには栄養素を摂取することが重要となります。粘膜の防御力を高め、粘膜の再生を促す栄養素にはビタミンD・ビタミンA・亜鉛・カルシウム・マグネシウムなどがあります。それらの栄養素で抗菌タンパク質や抗ウイルスタンパク質を作らせ、免疫を担当する細胞を活性化させます。特に亜鉛は免疫細胞数を増やし、それを体内の各所に配置します。粘膜には粘液があり、粘液には特有のネバネバ成分があります。そのネバネバはムチンタンパク質で、粘膜の胚細胞から分泌されて病原体を排除しています。ムチンにはムコ多糖類が豊富に含まれ、抗菌や抗ウイルスタンパク質のIgA抗体を分泌し粘膜を保護します。粘膜の粘液ネバネバ成分が多ければウイルスが粘膜から排除され、抗ウイルスタンパク質やIgA抗体によって不活化(死滅)します。ムチンを多く含む食材には、うなぎ・納豆・山芋・オクラ・ナメコなどがあり、ムチンが水分を保持しています。
 昔から日本では風邪の予防には大根やニラ・玉ねぎが良いとされてきました。また、青魚を焼き、骨まで焼いてカルシウムを摂ってきました。昔の人々の経験からの知恵です。ムチンの産生は加齢とともに衰えていくため、高齢になると粘膜の粘液量が減少してウイルスに感染しやすくなります。寒さとともに乾燥も進み、ウイルスの活動も活発になります。常に水分を補給し、乾燥に対応しましょう。カルシウムイオン水を飲んで粘膜の免疫力を高めることも大切です。

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VOL.305『朝食をしっかり食べてもお腹が空く理由』 [食べ物]

◆運動不足と睡眠不足
 新型コロナウイルス感染症のせいで、多くの人が自宅で過ごす時間が増えています。時間の観念が崩れ、夜更かしすることも多くなり、すると無性に何か食べたくなったりします。睡眠不足に加えて食欲に関与するホルモンのバランスが崩れるせいでお腹が空いて何かを食べてしまう、これには脳の視床下部にある摂食中枢と満腹中枢をコントロールするホルモンであるグレリンとレプチンが関係しています。
 空腹になると胃からグレリンが多量に分泌され、摂食中枢に働きかけて食欲を高めます。食事を摂って脂肪細胞に中性脂肪が大量に蓄えられると、脂肪細胞からレプチンが分泌され満腹中枢に働き食欲を抑えます。レプチンは交感神経を刺激するので全身にエネルギーを消費するように脳から指令が出ますが、運動しなければ脂肪が内臓脂肪に溜まるので肥満となります。するとレプチンの働きが悪化して感受性も低下するので、さらに脂肪を蓄積するように食欲が増します。睡眠不足が続くと食欲を高めるグレリンが増え、食欲を抑えるレプチンが減ります。その結果、食べることを我慢できなくなります。運動不足と睡眠不足が太りやすい体質を作ります。

◆お酒を飲む時に食べるべき物
 特に太りやすい食物は糖質や脂質の多い食物です。夜遅くにラーメンや餃子を食べると太るという研究報告もあります。はしご酒をしてお腹が空き、締めにラーメンや餃子を食べ、翌朝は寝不足と二日酔いで運動どころではないという悪循環が一番良くありません。これでは体力や免疫力も低下し、新型コロナウイルスに感染する確率も増してしまいます。
 お酒を飲む時には肝臓の機能を高めてくれるビタミンB1やナイアシン、タンパク質を摂った方が良いとされています。これらの栄養素はアルコールを代謝する過程で働くので、意識的に補給すればアルコール代謝が高まり、肝臓の働きを高めます。肝臓はアルコールをアセトアルデヒドに分解する仕事をしています。アルコール量が多いとアルデヒド脱水素酵素やそれ以外の酵素が同時に働きますが、ビタミンB1はそれらの酵素の補酵素として使われます。ナイアシンはアルコールをアセトアルデヒドに分解するアルコール脱水素酵素の補酵素として働き、タンパク質は肝臓の材料になるのでアルコールを分解するための栄養素と言えます。これらの栄養素はお酒を飲む前後に補給しても効果がありません。飲酒の習慣がある人が太りやすいのはお酒のせいではなく同時に食べる食物に原因があります。アルコールを飲んで分解されたエネルギーを優先的に使うのが、体内に蓄積されている脂肪や糖質で、アルコールの分解は後回しになります。一緒に食べるフライドポテトやポテトサラダ・ピザ・焼きそば・ラーメン・餃子などは糖質が多いので肥満となります。結局、お酒が脂肪の蓄積を促してしまうのです。お酒を飲む時には豆類や海藻類・ごぼう・ネバネバ野菜などの水溶性食物繊維を摂ることです。

◆有効な朝食の摂り方
 朝食をきちんと食べたのに、午前中のうちにお腹が空いてグーグーなってしまうという話をよく聞きます。朝食の量が足りなかったのだと翌日にはパンなどを増やし、小腹が空くとチョコレートを食べたりします。しかし、これは朝食の量が足りなかったのではありません。朝食が糖質メインなので中途半端な時間にお腹が空くのです。ですから、さらに糖質量を増やしても空腹感が生じるのです。これは糖質の吸収を抑える食物繊維が不足しているためです。血糖値は急上昇するとインスリンが大量に分泌され、そのせいで血糖値が急降下して空腹となります。朝食にはタンパク質と食物繊維が必要なのです。腸内の善玉菌の餌となるのが食物繊維なので、食物繊維はお腹の調子を整えてくれます。善玉菌は食物繊維を分解して短鎖脂肪酸を作ります。短鎖脂肪酸は脂肪細胞に働いて脂肪の蓄積を抑えます。特に有効なのがネバネバの食物繊維です。納豆などのネバネバ食品や発酵食品は胃や腸で水分を吸収してくれるので満腹感が続きます。食物繊維や発酵食品は腸内細菌の善玉菌を増やし、腸内の蠕動運動を活発にするので下痢や便秘、大腸ガンの発症を防ぎます。健康を維持するには朝食が一番大切です。乳製品よりは和食の方が日本人の体質には合っています。和食を中心に食物繊維や発酵食品が豊富な朝食を摂り、免疫力を高めてコロナ対策を続けましょう。

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