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VOL.318『メトヘモグロビン血症を起こす硝酸性窒素』 [硝酸性窒素]

◆メトヘモグロビン血症って何?
 2021年10月19日群馬大学医学部附属病院で、入院中の新生児10人が体内に酸素が行き渡らなくなるメトヘモグロビン血症を発症しました。幸い看護師による発見が早く大事には至りませんでしたが、原因は病院内で使用している水にあることが分かりました。メトヘモグロビン血症は1946年以降、北米およびヨーロッパで約2000例が報告され、うち6〜7%が死亡しています。多くは沸かした水道水で溶かしたミルクを飲んだ乳幼児の酸素欠乏による突然死です。その原因は水道水に含まれる硝酸性窒素でした。

◆硝酸性窒素が原因
 畑や水田には土壌の栄養価を高めるために多量の窒素肥料が使用されます。この方法は農業では当たり前の作業で、中でも窒素肥料の使用量が最も多い国はオランダです。オランダはチューリップの栽培が有名で栽培用や花卉の球根の栽培用に大量の窒素肥料が使用されます。窒素肥料は植物の葉の栄養成分であり、葉物野菜などを青々とさせ、生き生きさせるには大量の窒素肥料が必要です。そのため地下水の硝酸性窒素濃度が上昇します。また、工場で人工光を使用し、水耕栽培する葉物野菜にも大量の窒素肥料が使用されます。窒素酸化物が水素を介し、硝酸性窒素として土壌中、田畑、地下水、河川、池、水道水へと混入します。
 飲料水に含まれる硝酸性窒素によってガンが発症したり、糖尿病やメトヘモグロビン血症、酸素欠乏の発症が高まることは1960年代から世界的に知られた事実です。スウェーデンの研究所で糖尿病の原因としての硝酸塩や亜硝酸塩によるニトロソアミン化合物との関係を調べた結果、硝酸性窒素を含む葉物野菜や肉類、野菜料理、飲料水が体内の二級アミン(タンパク質)と結合することで生じるニトロソアミンが膵臓のβ細胞に損傷を与えるため血糖値を下げるインスリン分泌が減少し、結果、血糖値を正常に維持できなくなり2型の糖尿病になりやすくなることが分かりました。そもそも日本人は欧米人に比べて遺伝的に肥満でなくても糖尿病になりやすい遺伝子が40%も多いそうです。
 硝酸性窒素を含む水が胃の中に入ると胃酸の影響を受けて硝酸性窒素が亜硝酸製窒素に還元されます。その際、同時に肉類などに含まれるタンパク質や脂肪が結合すると発がん性物質でもあるニトロソアミンが大量に合成されます。

◆硝酸性窒素を除去して健康維持を
 窒素肥料は世界中で大量に使用されており、硝酸性窒素は水道水にだけでなく地下水や湧き水にも浸み込みます。多くの天然水は味を保つために殺菌消毒されておらず硝酸性窒素は取り除かれていないと思われます。近年では浄水器を設置している家庭が増えましたが、大抵は活性炭による塩素の除去や中空糸膜による不純物・匂いを除去するもので硝酸性窒素を取り除くものは少ないようです。
 水道水中の有害物質は沸騰すると濃縮されます。その水で肉や野菜を調理して食べることで硝酸性窒素や硝酸性窒素を含む酸性食品を食べ過ぎるとアシドーシス(酸性体質)になります。すると身体は体液を弱アルカリ性にして中和しなければなりません。それを唯一行える物質がカルシウムです。酸性体質では骨に含まれるカルシウムを溶出するので骨が脆くなり、骨粗鬆症になりやすくなります。血液中のカルシウム量も減少するので骨からのカルシウム溶出が増え、骨がさらに脆くなるので、酸性体質が続けば肥満になり、女性では乳がん発症率が上がります。毎日、硝酸性窒素を取り除き、カルシウムやマグネシウムを含む弱アルカリ性の水を飲み、骨を丈夫にすることが健康維持に繋がります。

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VOL.317『水分摂取が病気の予防に繋がっている』 [水]

◆病を防ぐ秘訣
 江戸時代の儒学者、貝原益軒が書いた養生訓には庶民の健康法が記載されており、1日に1〜1.5リットルの水分補給が健康維持や未病に効果があるとされています。これは鎌倉時代に道元が悟りを開いた禅宗に関係しています。修行の一つには『食をつくること』があり、それが精進料理の始まりです。またこれを基に茶道という茶を飲む伝統が誕生しました。日本では古代から水をたくさん飲む習慣があり、塩を溶かした汁物が食事の一部を構成していました。この歴史的背景から一汁一菜の食事法が生まれたのです。日本料理には味噌汁や吸い物が必ず付いています。伝統食として水分補給することに病を防ぐ秘訣があったのです。

◆リンパ液の発見
 水を飲んでいれば未病(病気の前兆)にならないと言います。
 自然免疫の主役は好中球が放出する活性酸素で、自然免疫力が働いていればリンパ球であるT細胞やB細胞、マクロファージが活性化します。なかでも最も働いているのが腸で、回腸の壁にあるリンパ球が集まった構造物(パイエル板)ではT細胞やB細胞が活性化し、免疫力を高めます。水を飲むとこの腸壁のパイエル板が活性化し、リンパ球を中心に炎症を制御し、未病を防いでいます。
 セロトニンはリンパ球を囲む平滑筋を収縮させ、リンパ球の貯蔵と輸送を高めます。水を飲むと腸壁からセロトニンが分泌され主に門脈に流れます。水を頻繁に飲むことはリンパ液の流れを良くするため生命維持に直結します。
 紀元前5世紀、ヒポクラテスは死者の腹部に赤い血液とは違う白い液体があることに気づきました。これが腸のリンパ管でした。飢餓状態での腸内リンパ球は脂を溶かすタンパク質が流れて白く見えるのです。
 紀元前4世紀、アリストテレスはリンパ液が透明な液体であることを見つけました。リンパ液の言葉の由来はラテン語の『泉から湧き出した澄んだ水』です。
 キリスト教の時代には人体解剖が禁止されましたが、16世紀になるとイタリア人解剖学者エウスキオは胸部を流れる白い液体を白い静脈と呼び、17世紀のフランス人外科医師ぺクエは胸の白い液体を胸管と命名しました。18世紀には山脇東洋が人体解剖を行いました。世界中で秘密裏に解剖病理学は行われていたのです。

◆水を飲もう
 昔から水を飲むことでリンパ液の流れが良くなり、元気なることが知られていました。人は水分補給が健康維持に繋がり生死を分けることを知っていたのです。そこで水を飲むように促す仕組みがリンパ液の働きとして備わりました。加齢とともに喉の渇きの感じ方が鈍くなります。お茶やコーヒーではなく水を飲むことをお勧めします。お酒は水の代わりにはなりません。水分不足が脳動脈や心臓冠動脈に血栓を起こします。脳の警報に従わず水を飲まないとバソプレッシン(ホルモン)が下垂体を刺激し、腎臓を介して尿量を減らします。乳幼児の病気はほとんどが水分不足から起こります。原因は脱水症なので、発熱したら冷水を飲ませます。
 ヒトの身体の60〜80%は水分です。古代から人間は水無しでは生きられませんでした。体内の水分が入れ換わるので生命の恒常性は維持されるのです。ミネラル成分豊富な弱アルカリ性の水を毎日十分に飲んで健康長寿を目指しましょう。

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VOL.316『脳内を流れる水が健康維持に関わっている』 [体]

◆人工知能と人間の脳
 21世紀の現代、コンピュータの進歩は目覚ましく、将棋や囲碁、チェスなどの分野ではAI(人工知能)が人間を凌駕しているようです。また、家電や車の自動運転など日常生活においてもAIが活躍し、AIを兼ね備えたロボットもどんどん進化しています。果たしてAIは人間の脳になれるのでしょうか?脳はなぜコンピュータに類比されるのでしょうか?コンピュータは脳の情報伝達作用のメカニズムを応用しています。コンピュータのデジタル信号は神経回路のONとOFF、0と1の組合せなので脳の電気信号をバーコードに置き換えて解読すればコンピュータで再現できます。脳の記憶や意識というアイディアをインターネットに接続できる夢のような技術を再現できる日はそれほど遠くないのかも入れません。
 脳内で電気信号を動かしている神経細胞はニューロンと呼ばれ、その活動を知ることで脳の働きを解明できると信じられてきました。ところが、最近の研究では他にもさまざまな要因があり、その要素がニューロンをサポートしていることが分かりました。その中には喜怒哀楽などの心の働きがあり、それがあるから人は生きていると実感できるのです。

◆常に入れ替わりながら満たしている
 脳はニューロン以外にグリア細胞と呼ばれる細胞から構成されています。これが脳の情報伝達にも関与します。また、頭蓋骨の下には脳脊髄液という液体(血液)が脳内を循環し、健康な脳の働きを維持しています。その隙間は間質液という液体で満たされています。脳の間質液は頭蓋骨の下を流れる無色透明な液体で、成人では130ml存在し、1日に450〜500ml産生され3〜4回入れ替わる脳の水です。
 鎌倉時代の鴨長明が記した方丈記の冒頭部分には、無常観(変わらないものなど何もない)という思想を表現した有名な言葉があり、現代に生きる人々も共感できる美しい言葉です。この無常観と恒常性は相反する言葉ですが、間質液も脳を浸しながら、その水は常に流れて入れ替わっており、同じことを意味しています。この液体が脳脊髄液です。これによって脳内環境は常に一定に保たれ、健康が維持されます。これを恒常性と呼び、これが水の役割なのです。今から800年前に常に流れ続ける川の流れを見て鴨長明は無常観を発想しました。これと同じ発想で現代医学は脳内の水の流れによる恒常性維持を逆説的に発見しました。

◆脳内の水の質にこだわろう
 間質液は無色透明な液体でイオン化したナトリウムやカリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラル成分が一定の範囲内でバランスよく調節され存在しています。特にカルシウムイオンとマグネシウムイオンは体内で欠乏すると脳を守るため脳に優先して回されます。
 神経細胞は細胞の内側と外側のイオンバランスが厳密に保たれることで活動が維持され、健康が維持されます。しかし、新鮮な間質液の供給が停止すると神経細胞はエネルギーを使ってイオンバランスを変化させます。すると神経細胞に老廃物のアミロイドβが沈着し、アルツハイマー病を発症しやすくなります。
 グリア細胞は頭の良さ、知性を生み出すことが知られていますが、カルシウムイオン濃度が上昇すると活性化することが分かりました。ミネラル成分を豊富に含む弱アルカリ性の水をたくさん飲んで脳内の脳脊髄液や間質液を入れ替え、神経細胞とグリア細胞を活性化させることが健康維持や長寿につながるようです。

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VOL.315『天然由来の成分を摂取する効果』 [食べ物]

◆天然の薬としての食物
 人類は細菌が発見される前から身体を治す天然の薬として食物を利用してきました。その一つがニンニクです。紀元前数千年からニンニクは病気を治す薬効があるとされてきました。現在では自然の抗菌作用があることが知られており、天然の抗ガン剤としても認定されています。アメリカ国立ガン研究所では、ガンの予防に効果があると考えられる食品約40種類を期待できる順に上からピラミッド型に並べ『デザイナーフーズ・ピラミッド』という分類を行いました。その最上位にニンニクがあります。
 ブロッコリースプラウトに含まれるスルフォラファンは、植物が害虫から身を守るために作り出した天然の抗菌薬で、独特の苦味があります。1日70グラムのブロッコリースプラウトを8週間摂取すると、ヘリコパクター・ピロリ菌の数が8分の1以下に減少するので、小腸内細菌増殖症(SIBO)や過敏性腸症候群にも効果的です。天然の抗生物質なので耐性菌の出現を心配する必要もありません。
 他にもニンニクとレモンの組み合せには静菌作用があり、ココナッツオイルに含まれる遊離脂肪酸は分子量が小さいので膵液や胆汁の関与なしで消化し、もずくに含まれるフコイダンは腸内ガス(水素ガス)を減らし、生姜は腸管運動を促進します。逆に、腸内細菌に悪影響を与える食品はジャンクフードやファーストフードです。これらは最大級の努力で食べないようにしましょう。一方、オリーブオイルやオメガ3脂肪酸を多く含む地中海料理や和食は日本人に適しています。

◆お腹の不調の原因
 お腹の不調の指標となるのがオナラの数です。通常、オナラは男性で1日14回、女性は7回ほどが健康体と言われます。これが2倍以上であれば腸内に多くのガスが溜まっていることになります。飛行機の中は気圧が低下するのでお腹の空気が膨張し、ガスが多く産生され腹痛も起こしやすくなります。そこで畿内ではできるだけウエストを締め付けない服装を心がけ、機内食は少なめに食べて炭酸飲料は飲まないようにすると良いでしょう。気圧が下がるという意味では高山に登る際にも同様の注意が必要です。
 小麦に含まれるグルテンというタンパク質は摂取すると小腸粘膜に異常免疫反応が起こり、腹部の張りや腹痛、下痢、便秘などが生じます。グルテンは小麦以外にもライ麦や大麦などの穀物類に多く含まれており、パンやピザ、パスタ、シリアルなどのモチモチ感やふっくら感の成分となるタンパク質です。セリアック病の人はこのグルテンを控えなくてはなりません。セリアック病は症状が過敏性腸症候群に似ており、グルテンを摂取しなければ症状が回復することが知られています。
 運動による腹部の症状を運動誘発性胃腸症候群と呼びます。激しい運動をすると骨格筋の血液量が増加し、そのせいで腸管の血液量が減少するので腸は虚血状態になります。すると腸内細菌が産生するエンドトキシンという毒素が血液中に漏れ出すので下痢や腹痛、吐き気、下血を引き起こします。

和食を見直し、摂取しよう
 日常生活の中で、糖質のグルテンをあまり含まず、水溶性の食物繊維や魚介類、豆類、発酵食品を多く使用する和食が腸の健康には最適であることが分かってきました。日本人は古来から自然の中で生活し、肉類よりも野菜など食物繊維や魚介類、豆類などを主食として摂取してきました。この環境が数千年も続いてきたのです。それが欧米食になることで腸内環境は急激に悪化しました。第二の脳と言われる腸の環境を整えるため、今一度和食を見直し、積極的に摂取してみてはいかがでしょう。

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VOL.314『長寿遺伝子を活性化させるレスベラトロール』 [長寿]

◆フレンチパラドックス
 フラン人は脂っこくてこってりとした料理を食べているのに、太っている人が少なく、心臓病による死亡率が低く、平均寿命も長いことから『フレンチパラドックス』という言葉があります。理由の一つは食事の時に赤ワインを水のように飲むからだろうと言われています。フランスもドイツも水が硬水なのでカルシウムやマグネシウムの含有量が多いため水が苦くて渋みがあるせいで水の代わりにワインやビールを飲むのです。
 フランスに至っては子供の頃から赤ワインを水代わりに飲み、赤ワインにはポリフェノールの一種レスベラトロールが多量に含まれているので健康的なのだと自負しています。

◆レスベラトロールの効果
 レスベラトロールには長寿遺伝子を活性化する働きがあるという研究者の報告があり、これが日本のお茶の間でも話題となりました。レスベラトロールの効果は科学的には明確ではありませんが、この研究の根拠となったのはマウスでの実験です。マウスを3群に分け、1群には普通の餌、2群には高カロリーの餌を与えます。3群には高カロリーの餌にレスベラトロールを混合したものを与え、2年間肝硬変や心臓疾患、肥満、生死の状況を調べたところ、2軍のマウスは肥満で1年〜1年半で早死にし、肝臓には脂肪肝が見られました。3群のレスベラトロールを混合した餌のマウスには脂肪肝は見られず対照群の1群と同様に正常な幹細胞でした。この研究によりレスベラトロールは健康長寿に効果があるとされ、フランス料理と一緒に摂取すれば、肥満を防止し、健康長寿を維持できるとなったのです。
 この研究論文は2010年ハーバード大学から発表され世界中で話題となりました。アメリカでは、どんなに食べ過ぎても、高カロリー食でも、体重50kgの人は20g、75kgの人は30gのレスベラトロールを摂取すれば体重増加を抑制できると言われたほどです。この計算によりますと、赤ワインに含まれるレスベラトロールの量はグラス1杯で0.3〜1 mgなので毎食3万杯の赤ワインを飲まなければならないことになります。つまり、赤ワインを飲むだけではフレンチパラドックスは起きないということです。
 その後も老化や寿命に関連するレスベラトロールの論文は1000件以上発表され、結果はいずれも肯定的なものでした。レスベラトロールは1度に大量に摂取しても副作用の不安はないと言いますが、効果は明確ではありません。夢と可能性を信じてアメリカには今でもレスベラトロールを摂取する人が存在します。フランス人は頑固な国民性のようで、食事の時に赤ワインを飲むことで健康寿命が伸びると信じている人が多いようです。

◆寿命は遺伝子に委ねられている
 ヒトの細胞には60回ほどしか分裂できないという限界があります。しかし、分裂回数を変動させることは可能で、カロリー制限をすることで分裂回数を減らし寿命を伸ばせます。ところが、カロリー制限するとインスリン感受性が上がるので糖尿病状態になります。糖尿病になって長生き?と思いますが、ヒトの寿命は遺伝子によって制御されていて、その遺伝子には寿命を伸ばすものも縮めるものもあります。すべては寿命遺伝子に委ねられており、遺伝子が変異することで機能が停止したり、弱まったりするのです。通常、細胞や組織は成長を促す経路で活動を抑えると長寿化します。過度の成長は老化を促進します。ですからミトコンドリアの活動を弱めると長生きになります。また、活性酸素による過酸化が進むと細胞機能が低下します。細胞内のタンパク質合成もゆっくりすると酸化的リン酸化が抑えられます。これらが長寿に関連します。
 適度に赤ワインを飲み、ゆっくりとリラックスする生活を送り、硬水に近い水を飲む、フレンチパラドックスも全く嘘の話ではありません。

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VOL.313『直感力を鍛えて人生を楽しもう』 [脳]

◆大抵のことは顔に出る
 自然界において人の顔ほど多くの情報を効率よく伝えるものはありません。新生児は生まれて1時間ほど経つと、目や鼻、口に表情が出てきます。生後4日目には母親の顔を見分けられるようになり、2週間ほど経つと母親の顔の真似をし始め、徐々に言葉を覚えていきます。通常、顔を見ればその人の性格や年齢・素性・感情・意図・健康状態などがある程度分かります。何を感じているか、何を言いたいかを顔は同時に表現します。偽りの微笑みや心にもないこと・関心を抱いたふりなどは大抵悟られてしまうので『顔は嘘をつかない』とか『ちゃんと顔に書いてある』と言われます。
 網膜から入った情報は視覚経路を通り扁桃体に集められます。外界からの情報は常に流動的なので、脳は途中で変化するものはすぐに切り捨て、朝も夜も変わりなく恒久的なものだけを取り出して海馬に記憶します。人は、対面すると直ちに相手の顔にどのような特徴があるのか無意識に見抜こうとし、特徴的なものは海馬に記憶され蓄積されます。扁桃体では今見た画像と脳内に先住した画像の情報を照合し、同定して分類します。人は本能的に相手の目の動きが気になるため、相手が見ている方向に視線が行きます。手品師はこれを利用して観客の目をそらすために大袈裟に振る舞い、目をそらします。そこにトリックが仕込まれているのです。

◆感覚は影響しあって働いている
 目は見て、耳は聞き、鼻は嗅ぎますが、各々の感覚はお互いに影響しあいながら専用回路を経て脳の領域で情報が処理されます。つまり、脳はあらゆる感覚を総動員して横断的に外界の像を捉えているのです。声を聞いて知るのは耳だけではなく、無意識に相手の顔を見て口の動きを観察しています。また、顔の動きが分からなくても、母音や子音の区別を顎の動き方で推察します。有声子音と無声子音では頬の動きが違い、舌の奥の位置や口の中の空気量でも変わってきます。顔を触ることによって声を確認できたり、匂いで警戒情報を得たりもできます。相手に接近すべきか回避すべきか、気が付かないほどの匂い刺激であっても嗅覚神経細胞は反応し、脳領域は活性化します。食事や飲み物は、舌で感じ、目で色を感じ、鼻で匂いを感じて味を判断します。暗い夜には指に目があるかのように空間的な位置関係が分かったりします。目が見えない人ほど聴覚や触覚が鋭敏で、脳が視覚領域よりも聴覚や触覚領域を拡大させて対応します。

◆直感力は鍛えられる
 感覚の一つとして、直感力を鍛えることができます。直感となる洞察力が冴えると大脳皮質や情報伝達物質が働きます。直感とは一瞬のうちに意識が高まる『勘』なのです。視覚に想像と創造があるように、直感でも想像と創造を巡らせ情報の先読みをします。直感力のある人は大脳辺縁系が発達しており、意識する情報を気に留めめません。固定観念を払いのけ、ある事象だけを歪めて過大評価することもありません。遺伝子が関与し、個人が学習した経験を有効に活用することもできます。その情報を使って判断や言動の根拠にすることもできます。危険を回避して今後生きるための指針ともなります。直感力がついてくると情報が正しいか正しくないかの区別を自然に判断できるようになります。また似顔絵を描くと、その人の特徴を写真よりも分かりやすく強調することができます。常に相手の顔から微妙な感情の変化を瞬時に読み取れるようになり、知らず知らずのうちに新しい人との偶然の出会いが多くなり、その人の第一印象を明確に判断することができるようになります。直感力を鍛えれば、今後の人生で仲良くできる人なのか、相手を見る目ができて人生が楽しくなります。

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VOL.312『活性酸素を完全に排除できない理由』 [体]

◆大型化と引き換えに活性酸素
 今からおよそ27億年前の地球は、ほとんど海に覆われていたので大気中のエネルギーによって光合成を行うには絶好の環境でした。こうした偶然の元で生命体は誕生し、進化しました。光合成細菌であるシアノバクテリアでは太陽光エネルギーによって水が分解(酸化)されて水素と電子が放出されました。その電子がシアノバクテリアのミトコンドリアの電子伝達系の作用し、発生するエネルギーを使って海水中の水素と二酸化炭素から炭素化合物が作られました。つまり、光合成は炭素化合物を作ることが本質であって、酸素の発生はおまけのようなものでした。
 生物はDNAの基幹を成す糖(ブドウ糖)を自分の体内で作りますが、他の生物に依存しない限り子孫を残すことができず生命体を継承できません。人類の祖先である生命体は自ら糖を作ることができなかったので、光合成の生物から供給してもらって命をつなぎ、酸素を利用する選択をしました。生命体はこの酸素システムによって細胞を組織や臓器へと分化させ大型化を目指しました。結果、その対価として莫大な活性酸素という毒を体内に抱えることとなったのです。そして生物は活性酸素の脅威から逃れるための完璧な対抗手段を作れていません。あるいは敢えて作らなかったのか、それは未だに不明です。

◆活性酸素にもメリットがある
 今日、心臓病・ガン・慢性肺疾患・腎疾患・糖尿病・アルツハイマー病・自己免疫疾患など、世界中で死亡する人の60%以上に活性酸素が関わっています。そして傷や感染に伴う炎症にも活性酸素が関与しており、人類が生き延びるためには日々活性酸素との闘いがあります。SOD(スーパーオキシドジスムターゼ)やカタラーゼという活性酸素分解酵素が体内には用意されていますが十分量ではない上に、若い頃は処理する作用が強いのですが高齢になると十分に働かなくなります。
 そんな活性酸素を酸素呼吸で生きる生物が完全に排除しない理由の一つが、活性酸素を細胞間の情報交換ツールとして多用している事実があります。細胞はDNAからタンパク質の設計図となる遺伝子が誘導されて作られます。これらは全て情報伝達の指令によって起こります。活性酸素はタンパク質を還元型から酸化型に変えることで活性化します。活性酸素の働きがなければ細胞内の情報伝達は停滞し、新しくタンパク質を作ることができないのです。そこで生物がとった活性酸素対策とは何でしょうか?ヒトを含む生物は活性酸素によって傷ついたDNAを子孫に残さないためにその細胞が自ら死を選ぶ機能(アポトーシス)を作りました。異常な遺伝子を確実に死に至らしめるためにアポトーシスを起こしたのです。活性酸素を次世代に引き継がず異常な遺伝子を減らすため、雌雄を同体にせずにオスとメスを分離し、遺伝子を有性生殖で交換することでDNAの修復を進めました。

◆上手に使って健康維持
 細胞内のミトコンドリアではエネルギーを産生する際、同時に2~5%の活性酸素が発生し、それが周辺の細胞に障害を与えます。しかし、活性酸素は日常的に体外から侵入するウイルスや細菌などの病原体を破壊するので、それを利用して免疫防御機構を獲得しました。ヒトは自分自身を危うくする活性酸素を敢えて自分のカラダに常備することで生への執念を持ち続けたのです。こでが活性酸素が諸刃の剣であると言われる所以です。
 活性酸素の働きを上手に使うことで、感染症から身を守り、老化を防ぎ遅らせることで健康維持にもなります。人類の宿命である活性酸素との闘いと共生が生き続けるための鍵なのです。

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VOL.311『腸を健康に保ち免疫力を上げよう』 [体]

◆身体は温めると免疫力が上がる
 最近は身体を冷やさず、温めることが健康への近道であるという記事をよく目にします。朝起きたばかりでの体温は平熱よりやや低く、これは体内時計の働きで副交感神経が優位の状態を維持しているためで、その後動きが活発になるにつれて交感神経の働きが優位となり、体温が上昇します。ところが、昼頃になっても36℃前後を示す人がいます。免疫細胞である白血球のリンパ球が最も活発に働くのは36.5℃前後なので平熱が36℃以下というのは免疫力が低下していることを示しています。
 感染防御には免疫の働きが重要で、免疫力を維持するためには常に低体温にならないようにすることです。例えば、ガン疾患の人は平均体温が健康な人より低くなっています。体温が低下すると病気になりやすくなってしまうのです。

◆温めると腸も活発に働く
 身体を冷やさず長時間体温を維持するには保温力が欠かせません。保温力を上げるものとして、シナモンや生姜(ジンジャー)に含まれるジンゲロールがあります。日本薬科大学で冷え性の女性を対象にカレーにシナモンや生姜などのスパイスを十分に入れた食事をしてもらい体温と深部温度を測定する調査をしたところ、90分後の体温が上昇し続けたそうです。シナモンやジンジャーを含むお茶も身体を温めます。
 シナモンは日本では桂皮として婦人科向けの漢方薬に使用されます。主成分はケイヒアルデヒドで血流増加や末梢血管の拡張作用、水分代謝の調節などの作用があります。血管が拡張すれば体温は上昇し、全身の臓器が活動し、特に便秘の改善に有効で、発汗作用もあります。発汗は血管が拡張することによる新陳代謝の促進で起こります。冷え性だと腸管運動が低下して便秘になりやすくなるので、シナモンやジンジャーを含む食材を摂取することで冷え性を改善し、腸の蠕動運動を活発にして排便を促しましょう。
 免疫力を高める食品として他に乳酸菌があります。乳酸菌は腸内細菌のうちの善玉菌で蠕動運動を活発にし、ビタミンやミネラル、タンパク質の合成、免疫機能の強化に役立ちます。日本の伝統的な食品である漬物や味噌、醤油など発酵食品に多く含まれる植物性乳酸菌は腸内を弱酸性の環境に保つので、悪玉菌が生息しにくくなります。また植物性乳酸菌は温度変化に強く、胃腸内の過酷な環境でも死滅せず、生きたまま大腸まで到達できます。腸の蠕動運動や免疫力の強化、ガン予防にも有効です。一方、動物性乳酸菌は口から摂取してもほとんど胃液や腸液によって死滅してしまうので腸まで届かない欠点があります。
 食物繊維も大切です。食物繊維には水に溶けない不溶性食物繊維と水に溶ける水溶性食物繊維があります。不溶性食物繊維は腸内で水分を吸って何倍にも膨らみ腸壁を刺激するので便秘や肥満の解消、大腸ガンの予防にも効果的です。水溶性食物繊維は水に溶け粘性を増し、腸内細菌によって分解されます。胃でも長くとどまるので糖分やコレステロールの吸収を抑制し、血糖値の上昇を抑え、糖尿病や動脈硬化、高血圧の予防に有効です。

◆ミネラルも大切
 腸を元気に活性化すると体温が上昇し、免疫力が高まります。それにはカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分を十分に補給することも重要です。ただし、カルシウムを摂取してもマグネシウムの摂取が不足していると、他のミネラル成分の亜鉛やセレンが働きません。ミネラル成分豊富な弱アルカリ性の水を飲んで免疫力を高め、健康を維持しましょう。

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VOL.310『サルフェートの健康効果』 [体]

◆サルフェートとは
 女性は何歳になってもダイエットに関心があるようで、ダイエット効果が高くて健康維持にも効果があるという超硬水を好む人も多くいます。効果が高い理由の1つがサルフェートです。カルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分と硫酸基が結合して硫酸塩になった金属成分をサルフェートと言い、超硬水はサルフェートを含んでいます。
 サルフェートは温泉に含まれる成分としても知られており、体に溜まった有害物質を排泄させる効果があると話題になりました。体内では有害物質が溜まると、それに反応して活性酸素が発生します。通常、食べ物からは重金属や合成化合物、薬品などの化学物質が気付かぬうちに体内に入ってきます。加工食品を日常的に多く食べている人は同時に食品添加物が入ってきます。結果、体内で発生する活性酸素が増え、有害物質が溜まれば免疫力が低下します。

◆感染予防とデトックス
 新型コロナウイルス感染症を予防するため日常的にアルコール消毒や手を洗う機会が増えています。衛生的で清潔な環境が維持されることで、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患が増えます。さらに、潰瘍性大腸炎やクローン病などの自己免疫疾患も増えます。アレルギー性疾患は、本来身体に害のない花粉やタンパク質などの異物に対して免疫機能が過剰に反応して炎症を起こす病気です。自己免疫疾患は、本来敵(病原体)に向けられるはずの免疫防御反応が体内の組織に向けられて攻撃してしまう病気です。
 今日、日本人の免疫力が総合的に低下しています。そのため新型コロナウイルス感染で重症化する高齢者が増えました。若者でもダイエット中で食事量を減らしたり、添加物を多く含む食品を摂取していると腸内の細菌数が減少して免疫力が低下し重症化することもあります。デトックスする方法は毎日の排尿や排便・発汗です。つまり、水をたくさん飲むことです。サルフェートがデトックスに効果があるのは利尿作用の働きで排尿量が増え、老廃物や有害物質を体外に排出してくれるからです。また、便通を良くしたり、新陳代謝を高め細胞を活性化する働きもあります。特に二日酔いや悪酔いした時、サルフェート入りの水を飲むとアルコールが分解したアセトアルデヒドを尿中に排出するので効果的です。

◆ダイエットには水
 ダイエットで食事の制限をしていると特にミネラル成分の摂取量が減少します。ミネラル成分は生命活動に不可欠な栄養素で、カルシウムは脂肪キラーと呼ばれるミネラル成分です。水溶性のカルシウムを摂取すると腸の蠕動運動が活発になり、腸内に溜まった脂肪分や有害物質を便とともに押し出す働きがあります。体内の脂肪の燃焼を促進するとともに脂肪の吸収を抑える効果もあります。カルシウムを豊富に含む水を飲むことでダイエット効果が高まるという研究者もいます。ダイエットには冷やした水を飲む方が効果的です。37℃の水より22℃以下の水の方がエネルギー消費量が多く、40%が水の温度を体温まで高めるために使われます。ダイエットでは食品を減らす代わりに水を飲む量を増やすことも効果的で、1日2〜2.5リットルを目標とします。ダイエットで水を飲むことを制限すると血管内に血栓ができて脳梗塞や心筋梗塞を起こす危険性が高まります。腎臓機能に障害がある人や胃腸が弱い人はこのようなダイエットをしてはいけません。胃腸の弱い人は下痢を起こしやすいのでサルフェートや冷水は不向きなのであまり飲まないようにしましょう。サルフェートは有効ですがミネラル成分なのでカルシウムやマグネシウムを含む弱アルカリ性の水が日本人には適しています。

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VOL.309『オメガ3脂肪酸を摂取して健康維持』 [体]

◆脳の働きと魚
 記憶や学習などの働きは脳内に1000億個ある脳神経細胞のニューロンが担っており、複雑なネットワークで情報伝達しています。そしてそのスピードが速いほど思考力や判断力・記憶力・学習能力も高くなります。ニューロンの先端にはDHAが含まれています。DHAやEPAという脂肪酸はオメガ3脂肪酸で、魚の油に豊富に含まれています。1989年イギリス人の脳栄養科学研究所のマイケル・クロフォード教授によれば、日本人の子供の頭が良いのは魚を常食としているからで、知能指数が高いのはDHAの生理的な働きによるものだと報告しました。フィンランドの研究所の調査では週2回以上の割合で魚を食べている人はうつ病状態が改善したそうです。

◆オメガ3脂肪酸
 EPAは血漿凝集抑制効果がDHAよりも優れており、血管内で血小板が固まって血栓を作ることを防ぐ役割を果たします。つまり、EPAには血液をサラサラにする働きがあるので、心筋梗塞や脳梗塞の予防効果が高いと考えられます。また、EPAは痩せるホルモン(GLP1)の分泌を促し、食べたものを胃に長くとどめてお腹を空きにくくさせるのでダイエット効果が期待できます。GLP1は食事中に血糖値が上がると小腸から分泌され、それに伴って膵臓から分泌されるインスリンがブドウ糖の消費力を高めます。DHAはマグロ・サバ・イワシ・サンマなど青魚に豊富に含まれEPAは同様にイワシやサバ・マグロ・タイ・ブリ・サンマ・サケなどに多く含まれています。魚の油は加熱すると酸化しやすく流れ出やすくなるので焼き魚や煮魚よりも刺身の方がオメガ3脂肪酸の摂取効率が高まります。
 一方、加熱調理でもオメガ3脂肪酸が摂れる油があります。南米ペルーのインカインチオイルは熱帯雨林を原産地とする常緑樹の鮮やかな緑色の星型の実から搾るオイルで、αリノレン酸が50%以上も含まれています。このインカインチオイルは加熱しても強力な抗酸化作用を持つビタミンEが多量に含まれているのです。ビタミンEはオリーブオイルにも豊富に含まれますが、オリーブオイルの20倍以上の含有量があります。他にオメガ3脂肪酸が多く含まれている食物はクルミです。オメガ3脂肪酸は成人男性で2.0~2.4g、女性で1.6~2.0gが1日の摂取目標とされています。クルミは数個でαリノレン酸を2.5g摂取できます。

◆オメガ3脂肪酸とカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)
 オメガ3脂肪酸を摂りながらミネラル成分のカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)もバランス良く摂るようにしましょう。特にCaは生命維持に欠かせない栄養素です。Caが欠乏すると組織や血管壁にCaが沈着するカルシウムパラドックスという現象が起こります。それが脳で起きれば認知症につながります。MgにはCaを細胞外に運び出す作用があり、Caが細胞内に沈着するのを防ぎます。正常な状態では細胞内と細胞外のCa量は1対10000に調整されています。このバランスの維持にMgが働いており、健康長寿に貢献しています。また、心臓病や血管系疾患にMgの不足が関与しているため、心筋梗塞や脳梗塞の予防にはMgの摂取が重要であると、フィンランドの国立衛生研究所は環境衛生学雑誌に報告しました。特に欧米では年々Mgの摂取量が減少しており、心血管疾患が増加しています。日本でも若い世代で摂取量が減少していますが、これは欧米食に変化したためだと考えられます。
 オメガ3脂肪酸とCa、Mgを摂り続けることで病気や認知症になりにくい身体を作ります。それには毎日CaやMgを含む弱アルカリ性の水を飲み続けることをお勧めします。

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