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VOL.308『水を飲んで美しく健康に』 [水]

◆水グルメの時代
 近年は水道水を飲まずにミネラルウォーターを買って飲む人が増え、家庭に浄水器を設置する人も増えていて、日本はもはや水グルメの時代に突入したと言えます。
 浄水器には様々なタイプがありますが、主なものは活性炭を使用するタイプで、活性炭に水中の汚染物質や化学物質を吸着させて取り除きます。他に、水中の細菌や微生物を濾過膜(中空糸膜)で除去するもの、電気分解によって酸性水とアルカリ性水に分解するものなどがあります。

◆中空糸膜の働き
 水道水の匂いの原因の一つは水中の残留塩素なので浄水器の塩素除去機能が高いほど匂いは抑えられますが、同時に細菌汚染の危険性は増します。これを克服するのが濾過膜いわゆる中空糸膜です。嫌な味や匂いの元である有機物やカルキ臭を吸着分解して取り除く超マイクロフィルターによって活性炭では除去できない細菌やカビ・病原性微生物・鉄錆・濁りなど超微粒子を除去して美味しい水を供給します。濾過膜は年々進化し、ハイテク繊維膜を使うことで家庭用浄水器の性能レベルが向上しました。これが最近の美味しい水ブームに乗って売れ筋商品となっており『コーヒーの味が全く変わった』などと言われています。
 中空糸膜は化学繊維でできたマカロニ上の糸を0.1〜0.01μmまで引き伸ばしたものが束になったものです。この極小の穴を持つ膜は、ウイルスや細菌・病原性微生物などを遮断し、水だけを通します。この中空糸膜を使用して作られた製品は、有機物や悪臭・種々の細菌なども除去できます。ですからアフリカなどの上水道が整っていない地域で河川の水を飲用に変えることも可能です。三菱レーヨンは中空糸膜でロシアのチェルノブイリ原発事故の現地飲料水用の浄水装置を作り、放射能で汚染された水を飲用に変えてその安全性を証明しました。

◆朝イチで飲む水で朝から美しく
 浄水器でカルシウムやミネラル成分を溶出し、弱アルカリ性の水として美味しく飲める製品もあります。水そのものの作用で健康を増進しようというものです。
 朝の目覚めの水は食欲増進や便通には欠かせません。身体は交感神経と副交感神経の自律神経に支配されており、副交感神経が優位になると身体を静かに落ち着かせます。朝は副交感神経が優位な状態で、その後カラダを活発にさせる交感神経優位に切り替わります。これが水の役割です。副交感神経には鎮静作用がありますが、胃腸の働きを活発にさせます。逆に交感神経は胃腸の働きを抑制するので朝飲む水は一時的に副交感神経を興奮させて胃を刺激し、食欲増進を促します。特に、冷たい水での刺激は食欲を増進させ腸の蠕動運動を起こさせます。この刺激が停滞していた便を直腸に進ませ便意を促すので便秘が解消されます。水には老廃物を排泄する作用や整腸作用があることから寝起きにコップ2〜3杯水を飲むことを習慣にすると皮膚にも良い影響を与えます。水を飲むことで便秘の解消が期待でき、食事量が減ってもお腹が空きにくくなるので肥満防止にもつながります。
 人は加齢とともに新陳代謝が衰えてきますがこれは体内の水分が減っていくからで、老化を予防するにはこまめに水を補給することが大切です。カルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分を含んだ弱アルカリ性の水を家庭で飲むことができる、水グルメの時代に食生活が豊かになり、自宅で作る料理も美味しくなる、そんな巣ごもり生活も悪くありませんね。

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VOL.307『ケトン体をブドウ糖の代わりに』 [体]

◆空腹になると出てくる匂い
 近頃はマスクをする機会が増え、口臭を気にしなくても済むと思いがちですが、マスクをしたままで長くいるとマスク内には口臭が溜まります。口臭の原因は歯周病や虫歯、歯垢であると言われるので、若い女性などは歯のケアに余念がありませんが、実は口臭の最大の原因は空腹です。空腹の時間が長くなると独特な匂いが口腔内から出てきますが、それがケトン体の匂いです。
 私たちは主にブドウ糖をエネルギー源としており、そのうちの20%は脳が優先的に消費するので、他の臓器でブドウ糖が欠乏するとカラダは脂肪を分解して脂肪酸やアミノ酸を生成し、これを使ってケトン体を作ります。ケトン体と呼ばれるのはアセト酢酸、βヒドロキシ酪酸、アセトンの3種類であるため、ケトン体臭は独特な甘酸っぱい、リンゴが腐ったような匂いと表現されることもあります。特にダイエットや肥満防止のために糖質制限を始めた人からはケトン体臭が強く周囲に漂います。

◆ケトン体の働き
 ケトン体臭は口臭だけでなく、尿や汗としても強く出ます。また、皮膚には色素性痒疹と呼ばれる湿疹が出ることがあり全身の皮膚が痒くなります。それまで糖質に依存してきた人が急に糖質制限をすると、湿疹や口臭、尿臭、汗臭が強く出ることがあるのでその時には糖質制限を緩める必要があります。ダイエットの時間を減らすなどしないと皮膚症状はさらに悪化します。
 ケトン体臭は糖質制限に体が慣れてくると、全くなくなりはしませんが徐々に減少します。これは身体がケトン体を効率良く使えるようになってきたことを示します。糖質制限を始めた頃はケトン体が急激に増すことで代謝が規則正しく回らず、ケトンが使われきれずに余ります。余ったケトン体が口臭や体臭として匂いを引き起こしますが、やがて、身体がケトン体をエネルギー源とすることに慣れてくると効率よく使われるようになります。空腹時に口から甘酸っぱい匂いがしたら脂肪が分解され、ケトン体がエネルギー源として利用されている証拠です。現代人は糖質に依存しているのでケトン体はあくまでも緊急用です。遭難してしまい絶食状態になっても水さえあれば数十日生き延びられるのは、体内に蓄えられた脂肪が脂肪酸に分解されて合成されたケトン体がエネルギー源となるからです。
 また、ケトン体にはガンを誘発する酵素の活性を低下させ、炎症作用を抑制する抗ガン作用があります。正常細胞はケトン体をエネルギー源にすることができますが、ガン細胞はエネルギーとして使えません。そこで、ガン患者をブドウ糖依存からケトン体依存に切り替えることでガン細胞の増殖を抑制し、死滅させることができます。

◆老化防止や長寿にも
 体内の活性酸素はケトン体が出ていると数値が下がります。また、細胞は飢餓状態になるとNAD(ニコチン・アミド・アデニン・ジヌクレオチド)という代謝酵素を増やして休眠中の長寿遺伝子を活性化します。体内をケトン体状態にすると長寿遺伝子が活性化するので老化防止や寿命を延ばすと言われます。
 現代は飽食の時代ですが、意識的に食事の回数を減らしたり、糖質摂取を減らすことを繰り返すとケトン体をエネルギー源にすることができます。規則正しい生活の中で、空腹時間を長くする、この状態を身体が経験することで、脂肪からケトン体形成が進み、ケトン体の形成が正常になれば口臭や体臭もなくなっていき、知らぬ間に健康維持ができるようになります。その際には十分な水分補給も忘れないでください。

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VOL.306『感染症を予防する粘膜の免疫』 [健康]

◆免疫を知る
 2020年、冬になり、新型コロナウイルスの感染は第3波を迎えたと言われています。感染症のウイルスから身を守る仕組みが免疫です。身体はウイルスや細菌などの外敵を侵入させないように防御し、万が一ウイルスが侵入した際にはそれを攻撃して排除しており、これが免疫です。咳やくしゃみ、会話などでウイルスが口や鼻、目などの粘膜に付着します。それを攻撃して防御するのが粘膜の免疫です。粘膜はウイルス感染を防ぐ最前線なのです。粘膜の免疫力を活性化するのが栄養素です。
 古来から感染症には多くの人命が奪われ、その繰り返しの日々でしたが、1度感染して生き残った人は2度とその感染症にはかからないことが経験的に判りました。これが免疫ができたということで、種々の病原体に対する免疫を獲得し、私たちは生き延びてきました。

◆免疫を担う細胞たち
 まず、病原体の免疫に働くのが粘膜で、そこに常駐しているのが白血球です。白血球には好中球やマクロファージ・樹状細胞・NK細胞などの免疫細胞があります。初めて侵入した病原体を発見するのが好中球・マクロファージ・NK細胞で、これらの細胞の隊長が樹状細胞です。樹状細胞は免疫を担当する細胞に外敵の情報を伝えて攻撃の仕方を支持します。B細胞には侵入者の抗原情報を伝え、その抗体を作らせます。ウイルスの持つ抗原と抗体が結合(抗原抗体反応)することでウイルスが持つ毒性を無毒化します。身体の最初の関門が粘膜なので、ここで外敵を排除できれば病気にはなりません。すなわち粘膜の免疫力を高めることが大切だということです。
 細菌による感染症に効く薬が拮抗薬(抗生物質)です。この薬は細菌の増殖を抑制するのが目的です。ところが風邪の元となるRSウイルスやコロナウイルスには効果がありません。ウイルスに対抗するのは抗ウイルス薬やワクチンです。抗ウイルス薬にはウイルスに直接作用する薬と免疫機能を調整する薬があります。ウイルスには細胞膜がなく、ヒト細胞に寄生するのでウイルスだけを攻撃するのは困難です。ワクチンにはウイルスの病原性を弱めた弱毒化ワクチンやウイルスの毒性を無毒化したワクチンがあります。それらを接種するとウイルスに対する抗体が作られ、ウイルスに感染しても発症や重症化の予防ができます。

◆ネバネバ食品を摂ろう
 新型コロナウイルスに対する抗ウイルス薬やワクチンは開発段階であり、すぐに効果が現れるかは未知数です。ならば、免疫力を高めることが重要で、免疫力を高めるには栄養素を摂取することが重要となります。粘膜の防御力を高め、粘膜の再生を促す栄養素にはビタミンD・ビタミンA・亜鉛・カルシウム・マグネシウムなどがあります。それらの栄養素で抗菌タンパク質や抗ウイルスタンパク質を作らせ、免疫を担当する細胞を活性化させます。特に亜鉛は免疫細胞数を増やし、それを体内の各所に配置します。粘膜には粘液があり、粘液には特有のネバネバ成分があります。そのネバネバはムチンタンパク質で、粘膜の胚細胞から分泌されて病原体を排除しています。ムチンにはムコ多糖類が豊富に含まれ、抗菌や抗ウイルスタンパク質のIgA抗体を分泌し粘膜を保護します。粘膜の粘液ネバネバ成分が多ければウイルスが粘膜から排除され、抗ウイルスタンパク質やIgA抗体によって不活化(死滅)します。ムチンを多く含む食材には、うなぎ・納豆・山芋・オクラ・ナメコなどがあり、ムチンが水分を保持しています。
 昔から日本では風邪の予防には大根やニラ・玉ねぎが良いとされてきました。また、青魚を焼き、骨まで焼いてカルシウムを摂ってきました。昔の人々の経験からの知恵です。ムチンの産生は加齢とともに衰えていくため、高齢になると粘膜の粘液量が減少してウイルスに感染しやすくなります。寒さとともに乾燥も進み、ウイルスの活動も活発になります。常に水分を補給し、乾燥に対応しましょう。カルシウムイオン水を飲んで粘膜の免疫力を高めることも大切です。

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VOL.305『朝食をしっかり食べてもお腹が空く理由』 [食べ物]

◆運動不足と睡眠不足
 新型コロナウイルス感染症のせいで、多くの人が自宅で過ごす時間が増えています。時間の観念が崩れ、夜更かしすることも多くなり、すると無性に何か食べたくなったりします。睡眠不足に加えて食欲に関与するホルモンのバランスが崩れるせいでお腹が空いて何かを食べてしまう、これには脳の視床下部にある摂食中枢と満腹中枢をコントロールするホルモンであるグレリンとレプチンが関係しています。
 空腹になると胃からグレリンが多量に分泌され、摂食中枢に働きかけて食欲を高めます。食事を摂って脂肪細胞に中性脂肪が大量に蓄えられると、脂肪細胞からレプチンが分泌され満腹中枢に働き食欲を抑えます。レプチンは交感神経を刺激するので全身にエネルギーを消費するように脳から指令が出ますが、運動しなければ脂肪が内臓脂肪に溜まるので肥満となります。するとレプチンの働きが悪化して感受性も低下するので、さらに脂肪を蓄積するように食欲が増します。睡眠不足が続くと食欲を高めるグレリンが増え、食欲を抑えるレプチンが減ります。その結果、食べることを我慢できなくなります。運動不足と睡眠不足が太りやすい体質を作ります。

◆お酒を飲む時に食べるべき物
 特に太りやすい食物は糖質や脂質の多い食物です。夜遅くにラーメンや餃子を食べると太るという研究報告もあります。はしご酒をしてお腹が空き、締めにラーメンや餃子を食べ、翌朝は寝不足と二日酔いで運動どころではないという悪循環が一番良くありません。これでは体力や免疫力も低下し、新型コロナウイルスに感染する確率も増してしまいます。
 お酒を飲む時には肝臓の機能を高めてくれるビタミンB1やナイアシン、タンパク質を摂った方が良いとされています。これらの栄養素はアルコールを代謝する過程で働くので、意識的に補給すればアルコール代謝が高まり、肝臓の働きを高めます。肝臓はアルコールをアセトアルデヒドに分解する仕事をしています。アルコール量が多いとアルデヒド脱水素酵素やそれ以外の酵素が同時に働きますが、ビタミンB1はそれらの酵素の補酵素として使われます。ナイアシンはアルコールをアセトアルデヒドに分解するアルコール脱水素酵素の補酵素として働き、タンパク質は肝臓の材料になるのでアルコールを分解するための栄養素と言えます。これらの栄養素はお酒を飲む前後に補給しても効果がありません。飲酒の習慣がある人が太りやすいのはお酒のせいではなく同時に食べる食物に原因があります。アルコールを飲んで分解されたエネルギーを優先的に使うのが、体内に蓄積されている脂肪や糖質で、アルコールの分解は後回しになります。一緒に食べるフライドポテトやポテトサラダ・ピザ・焼きそば・ラーメン・餃子などは糖質が多いので肥満となります。結局、お酒が脂肪の蓄積を促してしまうのです。お酒を飲む時には豆類や海藻類・ごぼう・ネバネバ野菜などの水溶性食物繊維を摂ることです。

◆有効な朝食の摂り方
 朝食をきちんと食べたのに、午前中のうちにお腹が空いてグーグーなってしまうという話をよく聞きます。朝食の量が足りなかったのだと翌日にはパンなどを増やし、小腹が空くとチョコレートを食べたりします。しかし、これは朝食の量が足りなかったのではありません。朝食が糖質メインなので中途半端な時間にお腹が空くのです。ですから、さらに糖質量を増やしても空腹感が生じるのです。これは糖質の吸収を抑える食物繊維が不足しているためです。血糖値は急上昇するとインスリンが大量に分泌され、そのせいで血糖値が急降下して空腹となります。朝食にはタンパク質と食物繊維が必要なのです。腸内の善玉菌の餌となるのが食物繊維なので、食物繊維はお腹の調子を整えてくれます。善玉菌は食物繊維を分解して短鎖脂肪酸を作ります。短鎖脂肪酸は脂肪細胞に働いて脂肪の蓄積を抑えます。特に有効なのがネバネバの食物繊維です。納豆などのネバネバ食品や発酵食品は胃や腸で水分を吸収してくれるので満腹感が続きます。食物繊維や発酵食品は腸内細菌の善玉菌を増やし、腸内の蠕動運動を活発にするので下痢や便秘、大腸ガンの発症を防ぎます。健康を維持するには朝食が一番大切です。乳製品よりは和食の方が日本人の体質には合っています。和食を中心に食物繊維や発酵食品が豊富な朝食を摂り、免疫力を高めてコロナ対策を続けましょう。

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VOL.304『ベージュ脂肪細胞を知っていますか?』 [体]

◆白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞
 脂肪は通常、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の2つに分けられます。褐色脂肪細胞は脂肪を貯め込まないので中が見えず、外観は若干褐色に見え、首の周囲や肩甲骨・脇の下・腎臓の周囲に集中して存在し、中性脂肪を燃焼する働きをします。白色脂肪細胞は皮下脂肪や内臓脂肪が主で中性脂肪や糖をエネルギーとして貯め込みます。
 生物はあらゆる組織になり得る幹細胞から発生し、それが筋肉細胞や筋肉前駆細胞になっていきます。褐色脂肪細胞は筋肉前駆細胞になった後に発生します。ですから見た目は脂肪細胞ですが働きは筋肉細胞に似ていて、脂肪を貯め込まずに燃焼させることで筋肉を動かすエネルギー作られ、褐色脂肪細胞では脂肪が燃焼するのでエネルギーが作られます。
 褐色脂肪細胞は乳幼児のときに多く存在します。その理由は、母親の胎内に比べて出産後の外は寒いので熱を発生するために褐色脂肪細胞が多く作られるからです。乳幼児の体温が高いのはそのためで、褐色脂肪細胞が熱を多く産生しています。運動をしなくても太らない人はこの褐色脂肪細胞を多く持っています。

◆脂肪の褐色化
 最近、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の中間的細胞(ベージュ脂肪細胞)が見つかりました。ベージュ脂肪細胞は本来白色脂肪細胞だったのですが、ある刺激を受けると褐色脂肪細胞と似た性質を持つように変化します。これを脂肪の褐色化とかベージュ化と呼びます。ベージュ脂肪細胞は白色脂肪細胞からできていますが、褐色脂肪細胞と同じように中性脂肪を分解する働きや脂肪を燃焼する働きを持っています。脂肪が燃焼する場所は細胞のミトコンドリアで、肺呼吸によって酸素が取り込まれると細胞内のミトコンドリアで酸素を利用して糖や脂肪を燃焼させ、エネルギー源となるATPを作ります。筋肉内のミトコンドリアは身体を動かすために脂肪を燃焼させてATPを産生します。一方、褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞は身体を動かすためのATPが必要ないのでATPを産生せずに熱を放出します。
 人類は飢餓の時代を生き抜くためにエネルギーを脂肪に貯め込むように進化してきました。褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞を多く持っている人はエネルギーを無駄に放出し、運動しなくても脂肪が燃焼されるので、太りにくい体質となりました。

◆ベージュ脂肪細胞を増やす刺激
 今や世界中で3人に1人が肥満となっており、日本ではそれ以上です。そこで白色脂肪細胞をベージュ脂肪細胞に変える研究が進んでいます。ベージュ脂肪細胞に変える刺激は、寒冷刺激・食事・運動の3つです。寒い場所では身体が震えるので筋肉を激しく動かして熱を発生させます。この運動がベージュ脂肪細胞を作ります。次に食材は唐辛子・キムチなどのカプサイシン、青魚などに含まれるDHAやEPA、紅茶などのカテキン、ミントのメントールや、ペパーミントのメンチル乳酸があります。辛味成分にはダイエット効果がありますが、健康寿命を短くするという欠点があります。運動刺激では交感神経が活性化され、白色脂肪細胞のベージュ化が進みます。寒い時に乾布摩擦をすると寒冷刺激と運動刺激が受けられベージュ脂肪細胞を増やすことができます。一方、顔が赤くなるほど限界までの激しい運動はグリコーゲンをエネルギー源にするため、脂肪が燃焼せず効果がありません。軽く息がはずむ散歩程度の運動の方が白色脂肪細胞の燃焼には効果的です。運動量が激しくなると必要なエネルギーが酸素を使わずに作られるので効果がないのです。筋肉がエネルギー源とするのは糖と脂肪です。タンパク質はエネルギー源にはなりません。
 40歳を過ぎる頃から毎日一定の時間を作り20〜30分ほどの散歩をすることで肥満が解消されます。食事として必要以上のタンパク質を摂り筋肉を鍛えるよりも白色脂肪細胞をベージュ脂肪細胞に変えることで肥満が防げます。同時に水分補給を忘れずに行いましょう。

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VOL.303『リンパの流れを良くして健康維持を』 [体]

◆むくみは必然(?)
 人間は地球上で重力に逆らって生活しているため、1日中立ち仕事をすると夕方には足がむくみます。デスクワークをしていてもふくらはぎがむくんで靴がきつくなったりします。朝起きて鏡を見ると顔がむくんで見え、冷水で顔を洗ってもすぐには治りません。昨夜のお酒が残っていればそのむくみはなおさらです。特に女性は美容の観点から気になるものです。
 むくみは医学的には浮腫と言います。体内には37兆個ほどの細胞があり、1つ1つの細胞には水分が含まれています。その細胞と細胞の隙間に増えた水分を浮腫と言います。体表面の浮腫は、顔がはれぼったくなったり、下肢にむくみとして現れます。
 地球上に生活している私たちの体液は上から下へと流れ、心臓より下にある静脈血は肢の方に溜まりやすくなります。静脈に溜まった血液の一部は血管壁から細胞の隙間に漏れ出します。この現象は自然の理屈にかなっていて、寝ている状態では顔と肢の位置が同じ高さになるので、行き場所を失った水分が顔に溜まり、顔がむくんだ状態になるのです。宇宙ステーションで生活する宇宙飛行士はいつも顔がむくんで大きくなったように見えます。

◆血液とリンパ液
 身体は血液循環によって血液から酸素と栄養素を各細胞に供給し、代わりに細胞は老廃物や二酸化炭素を排出します。これを回収するのが毛細血管とリンパ管です。老廃物や余分な水分は毛細血管を通して静脈血に戻っていきます。余分な物だけが毛細リンパ管に流れリンパ流となり、リンパ節を通って胸管を介し静脈へ回収されます。その流れは再び心臓に戻り、心臓を介して肺に送られ、酸素を含んだ新鮮な血液に変えられて全身の細胞に送られます。
 リンパ液は細胞の周りの余分な水分を常に回収しており、リンパ管は体内の排水管のような働きをします。ところが、このリンパ液の流れる働きが悪くなれば回収しきれない水分が細胞の周囲に溜まります。これが浮腫の原因となります。全身の浮腫が悪化すれば心不全となり死に至ることもあります。塩分濃度の高い塩辛い食品を食べれば血液中の塩分濃度が高まるので、それを薄めるために水分を欲します。大量の汗をかいた時にも同じように水分が欲しくなります。リンパ管は、ふくらはぎの筋肉が生み出すポンプ作用が正常に働いて、細胞周囲の余分な水分をリンパ管に誘導し回収できれば、その程度の水分量ならなんともありません。大量の水分は腎臓に運ばれ尿として排出されます。腎臓が正常に働いていれば、いくら大量の水分を摂取しても水中毒になることはありません。腎不全患者は水中毒になるので水分量を控えなければなりません。

◆リンパ液の流れを活発に
 新鮮な血液を全身に流すには心臓という強力なポンプが必要となります。ところがリンパ管にはそのようなポンプがありません。自らを押し出す力が弱いため、手助けが必要となります。それがふくらはぎの筋肉です。ふくらはぎをよく揉み解すか、足首をグルグル回すとリンパ液の流れが良くなります。肢をこまめにマッサージすることによってリンパ流は簡単に改善します。整体院などでマッサージをしてもらうとリンパ流が回復するので全身の疲れや肩こり、腰痛や膝痛がなくなります。しかし、この状態は長くは続きません。すぐに元のような状態に戻ります。
 リンパ管の特徴は、毛細リンパ管が皮下脂肪や内臓脂肪の中を通っていることです。肥満ではリンパ液の流れが滞るので健康を害します。水をたくさん飲んで肥満にならないように注意し、散歩などでふくらはぎの筋肉を鍛えることです。
 長時間飛行機に乗ることで起きるエコノミークラス症候群は、下半身のリンパ流が悪化して発症します。静脈内に血栓ができて地上に着いた時、血栓が肺に詰まって肺塞栓症となり、死に至ることもあります。それを防止するにはこまめに水分を補給することです。弱アルカリ性のカルシウムイオン水を飲んで、リンパ液の流れを活発にすることで血液はサラサラとした状態となり、健康維持が可能となります。


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VOL.302『長生きや健康維持に関わる食生活』 [長寿]

◆100歳以上の人の食生活
 日本では100歳以上の高齢者が増えています。長生きをしている人の食生活の特徴を調べると、肉や魚などの動物性タンパク質や大豆製品などの植物性タンパク質をバランス良く少量ずつ摂取していることが分かりました。一般的には高齢になると食事は淡白になり、肉や魚を食べなくなる人が増えますが、免疫機能を高めるためにはそれは有利な食生活とは言えません。だからと言って高齢者が肉を食べることは本当に健康長寿に役立つのでしょうか?60歳を過ぎた人は積極的に肉を食べるべきなのでしょうか?

◆肉や魚の効能
 肉の赤身の部分にはミネラル成分や亜鉛が含まれています。亜鉛は身体の生命維持の基となる新陳代謝に必要な多くの酵素を作る成分やタンパク質の合成、遺伝子情報を伝えるDNAの転写にも関与しています。亜鉛は牛肉に14.5mgと食肉の中で最も多く含まれています。豚肉や鶏肉にも牛肉の半分ほどの亜鉛が含まれています。また、牛肉に含まれるコレステロールは男性ホルモンのアンドロゲンの原料になります。週に1度はステーキを食べ、亜鉛を摂って新陳代謝を盛んにすることで免疫力の増強を図れます。さらに牛肉の赤身に含まれるエラスターゼという酵素は血管や筋肉の腱などを支えるエラスチンという繊維の働きを抑制するので、筋肉をバランス良く保つことで血管の弾力を保ち動脈硬化を予防します。
 徳川幕府、最後の将軍となった徳川慶喜は健康長寿のために豚肉を食べたことが知られています。豚肉はビタミンB1が他の肉よりも多く、焼いて調理するとさらに含有量が増えます。ビタミンB1の働きは糖代謝の補酵素としてブドウ糖をエネルギーに変換します。ビタミンB1が不足すると脳神経が働かなくなり、心臓発作の原因となります。
 牛肉、豚肉と並んで肉の御三家が鶏肉です。まず鶏肉は低カロリーで、タンパク質量は牛肉にも劣りません。なので、鶏肉は成長期の子供や高齢者に適しています。毎日鶏肉を食べても肥満や動脈硬化の心配は要りません。他に羊肉のマトンがあります。マトンは不飽和脂肪酸が多いのでコレステロールや中性脂肪を増やさないため、動脈硬化の予防に役立ちます。また、新陳代謝を活性化するアミノ酸のカルチニンも含まれています。カルチニンが欠乏すると筋肉の働きが低下し、ミオパチーと呼ばれる低血糖を起こし、心筋梗塞を起こすこともあります。カルチニンは身体のエネルギー代謝を参観にし、免疫力を高めます。
 魚類に含まれる不飽和脂肪酸のEPAやDHAの脂肪酸は血管の弾力性や若々しさを維持します。また、日本人はタコやイカをよく食べます。タコにはタウリンが奥含まれており、カキなどの貝類にも多く含まれています。イカは高タンパク質で低脂肪、タコと同じようにタウリンも豊富です。

◆新陳代謝を高めて免疫力を上げよう
 免疫力を高めるには新陳代謝を高めることです。新陳代謝とは体内で行われる生理反応のことであり、すべての臓器が順調に働くことです。新陳代謝を活性化するには亜鉛やカルシウムが必要です。特に女性は更年期以降に女性ホルモンが急激に減少するとカルシウムが溶け出しやすくなってしまうため、カルシウム不足が目立つようになります。すると骨粗鬆症が起きて骨折しやすくなります。肉類や魚介類のタンパク質を摂り、吸収性に優れた弱アルカリ性のカルシウムイオン水を飲むことでカルシウムを補うことが重要です。
 活性酸素は血管の動脈硬化を起こし、老化やガン発症の原因となるのですが、鮭の紅色の色素であるアスタキサンチンはカルテノイドで、活性酸素の働きを抑えます。また魚類には動脈硬化を防ぐEPAやDHAが含まれています。歴史的に魚料理や海藻、魚介類や大豆食品を食べ続けてカルシウムを含む弱アルカリ性の水を飲んできた日本人は知らず知らずのうちに良質のタンパク質やアミノ酸を摂取しており、新陳代謝を活性化することで健康長寿になったようです。

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VOL.301『ゲノム解析で遺伝子の働き方が解ってきた』 [生命]

◆若返りホルモン、マイオカイン
 古くから適度な運動習慣やエクササイズは健康に良いとされてきましたが、運動による筋肉刺激で筋細胞から分泌されるマイオカインが大腸ガンの抑制に作用していることが分かり、その科学的根拠が解明されました。マイオカインは若返りホルモンと呼ばれ、主に太ももやふくらはぎなど下半身の筋肉から分泌されるホルモンです。筋肉運動によってマイオカインは血液中で増加し、大腸粘膜の病変部に直接作用したり、新陳代謝を高めることによって大腸ガンの発症を抑制しています。
 身体を動かすことに関して、古来からインドのヒンズー教でのスクワットやヨガがよく知られていましたが、世界的にもヨガを行うことで血糖値が低下するという論文が多数あります。そしてその効果にマイオカインが関与しているのです。

◆ゲノム医療
 日本には昔から未病という病気があります。なんとなくだるいとか、食欲がない、どうも元気が出ないけれど病院に行って血液検査をしてもどこにも異常が見当たらない…このような状態を未病と呼びます。血液には問題ないが、遺伝子的には異常が生じているということが最近の研究で初めて解ったのです。
 日本未病システム学会の報告によれば、一般的な人間ドックの検査では全て正常範囲内で貧血もなく、肝機能や腎機能も正常だった男性が、倦怠感や食欲低下を訴えて来院したため8000種類の遺伝子を検査したところ、23.1%の遺伝子に変化が見られました。遺伝子レベルでは20%以上が異常を示したことになります。この男性は血液の治療とステロイド薬の投与によって1週間後に体調が回復して元気になりました。今後、未病は遺伝子検査によって病気の早期発見が可能となります。
 日本の遺伝子解析のレベルは世界トップクラスで、東北大学には世界から注目されているToMMo(東北メディカル・メガバンク機構)という施設があります。ToMMoには15万人以上の臨床データとゲノム情報が存在し、バイオバンクとしては世界一と言われています。全ゲノム解読ができる最新解析装置が10台以上あり、スーパーコンピューターが数10台並んでいます。一般的なパソコンのHDDの100万倍以上のデータ容量を持つスーパーコンピューターが数10台あるということです。現在、全ゲノム(30億塩基対)の解析に3100人が成功しており、この情報量は世界一です。このシステムで15万人の日本人の遺伝子を解析し、遺伝情報や体質を計測しています。イギリスのバイオバンクでは遺伝子を中心に情報を集めていますが、日本ではそれに加えてタンパク質や臨床情報、臨床検体などの情報が含まれています。
 ゲノム医療とは、DNAに含まれる遺伝情報を調べて、効率的・効果的にガンや病気の診断・治療・予防を行う医療です。上記の解析装置は一度に100種類以上の遺伝子変異を調べられるので変異がある箇所は分かるのですが、特定できる最適な抗ガン剤は20%ほどだそうです。とはいえ、この装置が未病医療の早期発見の突破口となったことは間違いありません。

◆SOS遺伝子
 未病とともに腎機能に障害を持つ人も増えています。腎臓は血液中の老廃物をろ過し、尿として排泄します。腎機能が低下すると老廃物が体内に溜まって尿毒症を起こし、腎不全へと進みます。そうなると腎臓の働きを人工的に行わなければなりません。2015年の人工透析者は32万人以上となり2兆円産業となりました。2013年、透析関連遺伝子の余命遺伝子が見つかりました。この遺伝子は慢性炎症などのSOS遺伝子と呼ばれます。免疫細胞の中には活性酸素を消去するSOD2というタンパク質があります。SOS遺伝子とSOD2タンパク質のゲノム解析が進めば寿命が延びる可能性が出てきます。未病を早期に発見するゲノム解析装置による新しい医療の開発が進んでいます。健康寿命が伸びそうですね。

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VOL.300『毎日飲む「水」が重要』 [水]

◆水で健康状態が変わる
 新型コロナウイルス感染症と共存するためには、重症化しないように免疫力を高めておくことです。その基本が飲み水で、条件は天然水であることです。一般にミネラルウォーターと呼ばれる水は、標高2000〜3000m以上の高山に降った雨や雪が長い年月をかけて地中に浸透し、その間にゴミや汚れがろ過され、地中のミネラル成分を吸着して湧き出した水のことです。日本人の祖先も1万年前から飲んでいました。
 天然水にはミネラル成分が豊富に含まれており、ヒトの細胞や組織・臓器などを元気にする生理活性作用があります。滝や岩清水が流れ落ちる場所に行くと空気が美味しく感じられますが、それは水素のマイナスイオンが空気中に漂っているからです。反対に水を加熱殺菌すると水素のマイナスイオンは失われ、生理活性は損なわれます。水道水のように塩素などの化学物質が水に含まれていると、活性酸素が発生する原因となります。以上のことから、免疫力強化のために飲む水は、加熱殺菌していない天然水であることが条件となります。
 ミネラルウォーターのラベルに鉱泉水・鉱水・温泉水などと記載されていればその水は地層という天然のろ過装置を通り、地中から湧き出した水という意味でミネラル成分が含有されているということです。井戸水や伏流水はミネラル成分の含有量についての規定はありません。水に含まれるミネラルの中でカラダに必要で特に重要な成分は、カルシウム・マグネシウム・ケイ素です。これらは腸の働きに欠かせない成分です。次に重要なのは弱アルカリ性であることです。体内の血液や体液は健康体では弱アルカリ性に保たれています。各細胞組織や血液は体内がアルカリ性の時に活発に活動することができます。体調を崩し病気になったり、高齢になって加齢臭がある人は酸性の方向に体液成分が変わっていると考えられます。体内が酸性なのか、弱アルカリ性なのか、弱酸性なのかはpH(酸素イオン濃度)を測定することでその数値が示されます。中性ではpH7.0でそれ以上であれば弱アルカリ性の健康体で、病気になると弱酸性のアシドーシスとなります。

◆体温を高く保とう
 免疫専門の医師によれば、免疫の働きを活性化するには体温を少し高く保つことであるといいます。体温が37℃近くまで高くなれば免疫機能が30%以上も上昇するそうです。冬に風邪を引きやすい人は血管が縮んで血液の流れが悪く、常にカラダが冷えている体温が36℃前後の人です。そういう人はゆっくり入浴することで皮膚の表面から深部まで汗をかく程度まで温めると、血流が良くなり、入浴後すぐに靴下をはくなど、暖かくして寝れば風邪を引きにくくなり免疫力が上がります。若い人の間では入浴せずにシャワーで済ませる人が増えていますが、それでは免疫力は上がりません。また、足は第2の心臓と言われますので、足裏をマッサージすると心臓や肺・肝臓・腸を元気にすることができます。
 体温が常に低く、冷え性の人ほどガンになりやすいといいます。これは、ガン細胞を攻撃・排除するNK細胞の活動が低下しているため、免疫力が低下した状態で毎日を過ごしているからです。逆にガンになりにくいのが体温が高い状態で毎日活動している人です。体温が39℃以上になるとガン細胞は死滅しますが、体温が38〜39℃の高熱状態では正常に活動することができません。

◆水に含まれるミネラル
 基本的に免疫力を高めるには毎日の飲み水が重要となります。サンゴカルシウムのミネラル成分が溶けてイオン化している水にはカルシウムをはじめマグネシウム・ケイ素などのミネラルが含まれており弱アルカリ性の水となっています。加熱していないので酸素も豊富に含まれています。飲めば岩清水のような食感で、この水を飲むことで生理活性作用が活発になり、免疫力を高めてくれます。
 常に免疫力が低下して、3密状態の生活をしていると、新型コロナウイルス陽性となる確率が高まります。ワクチンや治療薬の開発にはまだ時間がかかりそうですので、コロナと共存するため、免疫力を高めておきましょう。

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VOL.299『100歳以上の長寿者に免疫力を学ぶ』 [長寿]

◆100歳以上の長寿者が増えている
 近年、日本では100歳以上の長寿者が急激に増えています。1980年代は1000人以下だったものが、1998年には1万人を超え、2012年には5万人、2019年には7万人を超えました。さらに2015年の国勢調査では110歳以上のスーパーセンチナリアンが146人おり、そのうち9人が男性、137人は女性でした。
 2019年に理化学研究所と慶応大学医学部研究センターが共同でスーパーセンチナリアン7名の血液を調べたところ、免疫細胞、特にキラーT細胞の中にあるCD4陽性と呼ばれる免疫細胞が20〜80代の人に比べて10倍以上も多く存在することが分かりました。つまり、110歳以上まで生きる人には免疫細胞に秘密があったのです。過去にも長生きする人と短命な人の違いはその人に備わった免疫力の差であるという報告がありましたが、その原因は生活習慣でした。長寿を目指すには免疫力を高めることが不可欠なようです。通常は加齢に伴って免疫力は低下するため、ガンの発症やウイルス感染症のリスクが高まるものなのですが、長寿者は免疫力が高いため致命的な病気を回避でき高齢になっても免疫機能が良好な状態を保つことができます。

◆免疫力を高める方法
 人間は、生まれつき持っている自然免疫と後天的に獲得した獲得免疫によって生命が維持されています。獲得免疫の主役を占めるのがリンパ球です。超長寿者ではリンパ球自体の生命力が驚異的に強いことが分かっています。リンパ球には、リンパ球、顆粒球(好中球・好酸球・好塩基球)、単球(マクロファージ)、単球から分化した樹状細胞があります。
 細胞の寿命は赤血球が120日、血小板が8〜12日であるのに対してリンパ球は数十年も生きられます。リンパ球はなぜそんなに長く生きられるのでしょうか?自然の中で人類が
生命を長く維持できるようになったのは免疫という防衛機能を獲得できたからです。絶えずウイルスや細菌の攻撃を受け、生存競争に明け暮れていた人類は、リンパ球が存在しなければ地球上で生存できなかったでしょう。21世紀に入ってからもSARSやMARS、今回の新型コロナウイルスなどによって生命を脅かされています。
 人類はウイルスとの生存競争に打ち勝つだけの武器をまだ手に入れていません。それまでは体内の免疫力を高める努力をしなければなりません。リンパ球に守ってもらえるよう、全身全霊を傾けるしかないのです。免疫力を高める免疫細胞の70%は腸管内に存在し、免疫が長寿の鍵を果たす役割を腸管免疫と呼びます。腸内には膨大な数の腸内細菌が住み着いています。健康な人では善玉菌が20%、悪玉菌が10%、日和見菌が70%の割合で存在し、このバランスが崩れると体調が悪化します。
 腸内細菌叢の中には腸管免疫細胞群と呼ばれる免疫細胞の集団が存在し、小腸粘膜には免疫力を高めるパイエル板があります。このパイエル板に免疫細胞が触れるだけで免疫細胞は攻撃的になり、ウイルスや細菌の特徴や戦い方を学習します。この教育を受けた免疫細胞が腸内から全身に拡散されて免疫力を高めます。

◆免疫細胞を活性化するために
 腸管免疫力には体内時計が関与しています。体内には24時間周期の体内時計が組み込まれており、その中枢は視床下部にあって朝と夜の生体リズムを調節することで生命活動を促します。その結果、免疫細胞やリンパ球、キラーT細胞が活性化します。朝に太陽を浴びることで活性型ビタミンD3が働いてカルシウムの腸からの吸収を高め。活性型ビタミンD3のカテリシジンと呼ばれるアミノ酸を生合成します。カテリシジンは免疫力を強化します。免疫力の強化にカルシウムは補助的な役割を果たします。体内時計が乱れるとリンパ球やキラーT細胞が活性化しません。若い人の中には昼間寝ていて夜になると仲間と食事や酒を飲みに出かける人がいます。そういう人は免疫力が落ちているので集団で新型ウイルスに感染する恐れがあります。40代を過ぎるとさらに感染しやすくなります。体内時計の乱れを直し、朝の太陽を浴びて免疫細胞を活性化し、スーパーセンチナリアンを目指しましょう。
 
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