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VOL.191『生命の鼓動』『生命の炎』カルシウム [ミネラル]

◆カルシウムの働き
 近年、健康維持や健康寿命のためにカルシウムが再認識されています。カルシウムと言えば、骨や歯を形成する上で欠かせない栄養素・ミネラル成分です。カルシウムが不足すると骨が脆くなり、骨粗鬆症や骨折の原因となります。ところが他にもカルシウムには生命維持に直結した重要な働きがあるのです。最も重要な働きは、心臓や脳を動かすための情報伝達機能です。カルシウムは『生命の鼓動』と呼ばれるように、心臓を動かす働きがあります。母親の胎内に胎児の生命が宿ると、その体内には最初に心臓ができて鼓動を打ち始めます。胎児の心臓が動いていることは胎児が生きている証拠です。この心臓を直接動かしているのがカルシウムです。

◆心臓を動かす
 この働きを世界で初めて発見したのがリンゲルで、今から100年以上も前のことです。手術や輸液治療法で現在も使用されているリンゲル液は、弱った心臓を元気にさせる体液と同様の溶液です。当時、リンゲルは心臓をいつまでも打ち続けることができる魔法の薬はないかと研究を続けていました。心臓が徐々に弱り、やがて鼓動が止まり、死んでいく患者に悩んでいたのです。そこで、カエルの心臓を取り出して、血液と同じ塩分量の溶液で心臓を動かす実験をしました。ところが助手が実験すると心臓は規則正しく鼓動し続けるのに、リンゲルが実験すると心臓はすぐに停止してしまったのです。そこで助手に何が違ったのか尋ねると、リンゲルが蒸留水を使用したのに対して、助手は水道水を使っていたと白状しました。つまり、カルシウムを含んでいない蒸留水では心臓は止まってしまうが、カルシウムを含む水道水では心臓が動き続けたということです。この有名な実験から、心臓を動かす魔法の薬はカルシウム・ミネラル成分(電解質)であることが分かり、それがリンゲル液の発見となって、カルシウムが『生命の炎』と呼ばれるようになったのです。
 1907年、世界で初めて認知症になった51歳の女性について、アルツハイマーが高齢者に多いボケ症状としてアルツハイマー症と報告しました。当時は長生きする人が少なかったので、アルツハイマーは特殊な病気でした。ボケが始まると覚えが悪くなり、自分が誰だか分からなくなります。周囲の人や世の中の出来事・変化なども理解できなくなり、情報が寸断され、社会生活ができなくなる、これがアルツハイマー病です。脳の神経細胞は加齢と共に減少し死滅します。神経細胞にはアミロイドβと呼ばれるタンパク質が蓄積し、大脳皮質にシミのような斑点ができます。これがアルツハイマー病特有の老人斑です。また、同様に神経細胞の内側に細い線維が束になって蓄積する神経原線維変化と呼ばれる特有の病変が起きます。これらの病変が起きることで神経細胞は内から外から損傷され死滅し、脳が萎縮して発病します。カルシウム不足による骨粗鬆症はその予備軍とされています。つまり、アルツハイマー病はカルシウム欠乏の究極の姿とも言えるのです。

◆毎日摂取することが大事
 血液中のカルシウム濃度は常に一定に保たれており、このカルシウムが各細胞に情報を伝えると、脳の神経細胞に信号となって伝わり、神経ネットワークが形成されます。また、体液のカルシウムイオンは細胞の内と外で一定の濃度差を保ち、それが情報伝達のバランスをコントロールしています。ところが、カルシウムの摂取が不足すると、細胞内外の濃度差のバランスが崩れてしまいます。すると体は骨のカルシウムを溶かして血液中のカルシウム濃度を保とうとしますが、細胞内液や細胞外液のカルシウム濃度までは回復できず、細胞内液のカルシウム濃度が増加してしまいます。すると各細胞に障害(病気)が発生するのです。
 以上がカルシウムが『生命の鼓動』や『生命の炎』と呼ばれる所以です。生命維持に欠かせないカルシウムは吸収性が悪いので、吸収性の良いカルシウムを毎日摂取しないとすぐに不足してしまいます。気をつけましょう。


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