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VOL.201『ゲノム編集という超最新技術』 [生命]

◆ゲノム編集とは
 近年、遺伝子(ゲノム)の解析が進んでおり、遺伝子を操作する遺伝子工学や生命科学の分野では過去に類を見ない驚異的な技術革新が起きようとしています。
 例えば、自分の顔や身長・体型・性格・知能・運動能力・体質などが不満な人はたくさんいます。これらの一部を自分の思い通りに変えることができたら、別の自分に生まれ変わることができたらと誰もが思います。また、自分は無理でも生まれてくる子供には、誰より逞しく・賢く・美しく・健康体で良い人生を送って欲しいと望む親もたくさんいます。それを実現するのがゲノム編集という超先端技術です。この技術で医師や研究者、科学者は狙った遺伝子をピンポイントで修正する可能性が出てきました。自然界には存在しない神の技術と言われる人類創造です。そのゲノム編集の研究開発が急速に進んでいるのです。

◆ゲノム編集の可能性
 植物や動物の遺伝子を操作する遺伝子組換え技術は1970年代から始まりました。ところがこの遺伝子組換え技術は、1個の遺伝子を組換えるために1万〜100万回の実験を行い、やっと狙った通りの組換えができるという精度の低さや、膨大な費用・期間を要することが問題でした。これに対し、ゲノム編集では狙った遺伝子を構成する塩基をピンポイントで削除し、書き換えることができます。つまり、遺伝子の設計図であるDNAを自由自在に置き換えることができるのです。
 最新鋭のゲノム編集技術(クリスパー)は、高校生でも数週間で使えるようになると言われるほど簡単で取り扱いやすい技術で、従来の遺伝子組換えに要していた時間やコストも劇的に短縮されました。クリスパー技術では動物や植物のDNAも操作することができるので肉量を大量に増やす家畜や魚、あるいは腐りにくい野菜などを作ること、難病患者の治療に役立つ病気を動物(サル)で発症させることもできます。
 クリスパー技術の基礎研究は日本や欧米など世界各国で急速に進んでおり、近い将来には難病患者の治療に適用されます。特に、遺伝子の変異による遺伝病は、特定の遺伝子が明確な場合には治療しやすい状態になっています。クリスパーによるゲノム編集は、遺伝子治療やiPS細胞、細胞移植治療などとの組合せも適用できます。京都大学iPS細胞研究所では、世界の医療機関と共同で筋ジストロフィーやエイズなどの難病患者を遺伝子レベルで根治させるゲノム編集の治療法の研究を進めており、一部はすでに臨床試験に入っています。この技術は各種のガン・糖尿病・アルツハイマー病などの病気の治療にも応用できます。これには世界的ハイテクIT企業が様々な病院や研究機関と連携し、医療ビッグデータを先端AIでパターン解析して複雑な病気の原因遺伝子や発症メカニズムを解明しつつあります。

◆不安と希望
 しかし、医療への応用は危うい側面と表裏一体にあることも事実です。この技術を使うことで人類の改良が起きるかもしれないからです。例えば、骨を強化して骨折予防したり、心臓病にならない体質にするなど特定遺伝子を選択し、クリスパー技術を使って改良することで人類を強化することが可能だからです。お肌の老化を防いで若返ることもできます。さらに、生まれてくる赤ちゃんを受精卵の段階でゲノム編集すれば、高い知識や強靭な肉体、美貌を兼ね備えたデザイナー・ベビーを親の意図的感情で作り出すこともできます。これは技術的には可能でも倫理的には許されません。そこで、2015年12月の国際会議でヒト受精卵のゲノム編集は基礎研究に限定し、臨床研究は禁止することが採択されました。
 今、人類は神の領域に足を踏み入れようとしています。この技術が地球上に存在する生命体や生態系に与える影響は計り知れません。その中で、中国が倫理的に反して低レベルではありますがヒトでの臨床試験の実施を報告し、世界的に強い非難を浴びています。技術の進歩は歓迎すべきですが、人類に正しく役立つように使用されることを願うばかりです。

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