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VOL.159『大音量で音楽を長時間聴くと…』 [体]

◆WHOが指針を発表
 2015年2月、世界保健機関(WHO)は難聴になる危険性が指摘されたことから『聴力を守るためにスマートフォンなどで音楽を鑑賞する場合は1日1時間以内に控えるべきである』との指針を発表しました。
 難聴は耳の器官や聴覚神経の障害によって起こる病気で、騒がしい場所で話が聞き取りにくかったり、音は聞こえるものの内容が理解しにくいなどの症状が出ます。内耳にある蝸牛(かぎゅう)と呼ばれる音を感じる細胞が障害を受けて死んでしまうことで起きます。一度死んだ細胞は再生することができず、治療法もありません。いつまでも正常な聴力を維持するには予防するしかありません。

◆難聴は治らない
 WHOが指針を出して警告したのには、スマホの世界的普及やアメリカでの調査による大音量で音楽を聴く若者の難聴が増えているという背景があります。日本でもかつてウォークマン難聴が問題になりましたが、今回のスマホはその再来となっています。WHOは、音楽などを大音量で聴くことが習慣で難聴の恐れがある若者(12〜35歳)は世界中で11億人を超えるとし、聴力は一旦失うと2度と回復しないと厳しく警告しています。
 幼い頃から大きな音に接している人は、加齢とともに難聴となるリスクが高まります。老人性難聴の多くは内耳の蝸牛内の細胞が死滅するだけでなく、耳の器官の障害が複合的に関係しています。外耳から入った音波(音)は鼓膜や中耳の耳小骨を振動させます。その振動が蝸牛の入り口に伝えられ、リンパ液の振動に変わります。蝸牛内を満たすリンパ液の振動が蝸牛神経から大脳側頭葉に伝えられ、音が認知されます。老人性難聴は加齢による聴覚細胞の萎縮や変性、薬物の使用、大音量など音の高低や周波数の変化などが原因で、聴覚細胞が障害されます。日本では65歳以上の25〜40%、75歳以上の40〜60%、85歳以上では80%以上が老人性難聴で、その数は1500万人以上と言われています。
 若い頃から長時間、大音量にさらされていると蝸牛細胞のダメージが蓄積され30〜40歳代の早い時期から老人性難聴を発症することがあります。それを防ぐにはどの程度の音量にすればいいかというと、WHOでは100デシベル(電車が通過するときのガード下くらい)の騒音なら15分以内という基準を設けています。このような騒音の中では相手の話し声は全く聞き取れない状態です。周囲がうるさい電車内でイヤホンを使い音楽を聴くときも、無意識のうちにボリュームが大きくなりやすいので注意しましょう。

◆おかしいなと思ったら
 別の聴覚障害としては耳鳴りがあります。耳鳴りは内耳の細胞が損傷していることを示すサインです。激しい騒音の場所から静かな場所へ移動した時、シーンという耳鳴りがしたら大音量の名残が耳鳴りとなっているのです。また、難聴の意外な原因として、飲酒があります。クラブやライブハウスなどで飲酒しながら長時間にわたって大音量の音楽を聴いたり、その機会が増えると内耳の蝸牛細胞を壊す物質が分泌されることが分かりました。
 今までなんともなかったのに突然、耳が聞こえなくなり、耳鳴りの症状が現れたりするのは、聴覚神経の障害が進行している証拠です。その時は数日以内に専門医師の診断と治療を受けなくてはなりません。情報システムの進歩によって街には騒音が溢れ、静かな時はありません。人々も騒音に慣れてしまっています。ヒトの感覚器官は聴力に限らず、視力 ・嗅覚・味覚など全般が退化しているかもしれませんね。

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