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VOL.176『タイムラインという考え方』 [生活]

◆環境因子と遺伝因子
 ヒトの健康状態は、環境因子と両親からの遺伝因子の積み重ねで決定されます。そこで、これら遺伝子の解析から病気の予防や治療を進めようとするのが遺伝子医学です。
 遺伝子情報はゲノムと呼び、遺伝因子となるDNAは32億個の塩基からできています。2003年にはヒトの遺伝子が全て解明され、遺伝子は全DNAの2%以下ほどであることが分かりました。ヒトの生命の設計図である遺伝子が解明されたことで、病気になる仕組みやその治療法も明らかになるのではと期待されました。ところが、生命は極めて複雑で、ゲノム解析は病気の克服には直結しなかったのです。
 例えば、寿命には個人差があり、それを決める要因は長寿遺伝子の有無だと言われていました。しかし、後に全ての人に長寿遺伝子があることが分かり、長生きできる人は長寿遺伝子にスイッチが入り、長生きできない人はスイッチが入らないことが分かったのです。
 また、ガンなどの生活習慣病の発症に遺伝子が関与する割合は5〜10%に過ぎず、遺伝子(ジェネティクス)だけでは健康と病気は解明できない、つまり、環境因子(エピジェネティクス)と遺伝因子の積み重ねで健康状態は決定され、遺伝因子は環境因子に大きく影響を受けることが分かりました。

◆タイムラインとは
 これを受けて、機能的医学が重要視されるようになり『タイムライン』という考え方が生まれてきました。タイムラインとは、母親のお腹の中にいる時から現在までの生活習慣、特に食生活、その間の栄養バランス、病気や感染症になった事例の有無・頻度などを時系列で並べて環境因子と遺伝因子の重なり合いを研究しようとする発想です。
 妊娠中に母親の栄養状態が悪いと子供は太りやすくなり、大人になってから糖尿病や高血圧になるリスクが高まります。母親の栄養バランスが悪いと、胎内の子供の栄養状態も悪化し、エピジェネティクスが働いて、子供はエネルギーを倹約する体質に変わります。すると大人になって飽食(過食)の環境になるとエネルギー倹約体質が働いて肥満になります。太ることで膵臓からのインスリン分泌の効き目が低下し、インスリン抵抗性となって糖尿病になりやすくなるのです。
 タイムラインでは、腸内細菌叢が病気の成り立ちに関与するといいます。子宮内の胎児は無菌状態ですが、産道を通って生まれてくるときに母親から細菌を受け継ぎます。産道には乳酸菌が生息しており、出生時に新生児の鼻や口から侵入し、腸内で急速に増殖します。ところが、帝王切開で生まれた新生児にはこれがありません。そのせいで大人になってから腸内細菌叢のバリア機能が弱く、アレルギー疾患を発症しやすくなります。また、子供の頃に抗生物質を大量に投与されても腸内細菌叢のバランスが崩れ、腸内のバリア機能は低下します。これが大人になってから生活習慣病の原因となります。

◆腸内環境を整えよう
 21世紀は腸内細菌叢の時代と言われます。腸内細菌叢が全身の体調を左右し、免疫機能に関与するからです。腸内の善玉菌(乳酸菌・ビフィズス菌)は母乳栄養で増え、悪玉菌(ウェルシュ菌)の増殖を防いで体内の炎症反応を調節しますが、加齢とともに減少していきます。善玉菌の栄養源は食物繊維で腸管内の修復には欠かせない栄養素です。傷ついた腸管や粘膜は数日で入れ替わります。その時、欠かせないのがビタミン類やミネラル成分です。つまり、健康維持のためには食物繊維とミネラル成分の摂取が欠かせないということです。タイムラインを知って腸内環境を整え、健康維持に努めましょう。

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