SSブログ

VOL.177『ノロウイルス対策にラクトフェリン』 [健康]

◆ノロウイルスとは
 毎年、11〜2月頃にかけて猛威を振るうのがノロウイルスです。カキなどの二枚貝を不十分な加熱で食べたり、感染者の便や嘔吐物に触れることで感染します。今年は新型が流行する可能性も指摘されており、注意を喚起しています。毒性は従来型と変わりませんが、ほとんどの人に免疫がないため多くの人が感染する恐れがあります。
 ノロウイルスは感染力が強く、激しい嘔吐や下痢を引き起こします。特に、体力の弱い高齢者や乳幼児・慢性疾患のある人は重症化する可能性があります。治療薬はなく、有効なワクチンもありません。アルコール消毒でもウイルスは死なないため、予防には手洗いや調理時の衛生管理を徹底しましょう。

◆ラクトフェリンとは
 最近、ノロウイルスに対してラクトフェリンに予防効果があるという報告がありました。ラクトフェリンは哺乳動物の乳汁中に多く含まれており、ヒトの母乳、特に出産後数日間に分泌される初乳に最も多く含まれます。母乳以外にも唾液や涙・鼻汁などの外分泌液、粘膜液、白血球である好中球に存在し、外部から侵入する細菌やウイルスを攻撃・排除する防御因子の1つです。出産後5日までの母乳には100mlあたり600mg、3週間以降も200mgのラクトフェリンが含まれています。殺菌前の牛乳にも含まれていますが、濃度はヒト母乳の10分の1程度です。
 ラクトフェリンは1929年に発見され、鉄と結合しやすい特性で赤みを示すことから、牛乳の赤いタンパク質とも呼ばれます。生理機能は生体防御やビフィズス菌の増殖、鉄吸収の調節、抗炎症作用、脂質代謝の改善、健康増進・維持などが知られています。2015年の国際ラクトフェリン会議では、実験で消化分解したラクトフェリン消化物にウイルスの増殖を抑制する働きがあったと発表されました。ラクトフェリンにはウイルスの殻(自らを包む殻を破らないと増殖できない)を破る酵素を阻害する働きがあるといいます。現段階では抗ウイルス作用のメカニズムは解明されていないので、ラクトフェリン摂取でウイルス感染が完全に防げるわけではありませんが、感染のリスクは減弱します。週4日以上ラクトフェリンを摂取したらノロウイルスの感染率が下がったという研究報告もあります。

◆ラクトフェリンの予防効果
 ラクトフェリンは加熱処理していないナチュラルチーズにも多く含まれています。感染予防に役立つ目安の摂取量は1日当たり100mgです。ナチュラルチーズなら毎日100g程度摂取すれば良いことになります。ラクトフェリンは強力な抗菌活性を持っています。細菌の生育には鉄が必要なのですが、ラクトフェリンは鉄を奪い去ることで細菌の増殖を抑制します。免疫系が未熟な新生児はラクトフェリンを多く含む初乳によって、外敵の病原体から守られます。
 またラクトフェリンは、肝炎ウイルス・ヒト免疫不全ウイルス・ヘルペスウイルス・サイトメガロウイルス・白血病ウイルスなどの複製(増殖)を阻害します。ラクトフェリンが消化管粘膜に結合することでノロウイルスやロタウイルスの粘膜細胞への侵入を防止し、発病を緩和します。これはラクトフェリンが腸管内の腸管膜リンパ節やパイエル板という免疫系に関係する細胞に作用し、NK細胞やマクロファージを活性化するためです。さらに免疫細胞であるB細胞やT細胞の増殖も促進します。
 ノロウイルスやロタウイルスの感染を予防するためにラクトフェリン入りのヨーグルトを摂取することで、効果は未知数ではありますが、感染しても重症化を防げることが期待できます。ただ、牛乳や乳製品を摂取すると下痢や腹痛を起こす乳糖不耐性の人やアレルギーの子供はラクトフェリンに対する抗体が低濃度にできているので注意が必要です。

v177.jpg

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。