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VOL.189『トコジラミ・マダニに要注意』 [健康]

◆トコジラミ
 近年、再興性衛生害虫と呼ばれるトコジラミ(ナンキンムシ)が引き起こす刺咬害が増えています。トコジラミは1940年代に殺虫剤(DDT)が普及し、全国的に駆除されたため、日本ではほとんど見られなくなり、感染症の報告もありませんでした。ところが、10数年前から急にこの虫に刺されて皮膚科を受診する人が増えだしたのです。トコジラミが再び増加した理由は海外からの渡航者の増加と見られています。海外から日本に来る人の手荷物とともに持ち込まれ、自宅に持ち帰ってしまうのです。
 トコジラミは、カジリムシ科に属するアタマジラミやコロモジラミ・ケジラミなどと混同されがちですが、カメムシ目(セミ・アメンボウ・カメムシ)の仲間で翅(はね)が退化し飛べない昆虫です。トコジラミの名前の由来は、寝床に居るシラミという英語名のbed bug(ベッド虫)です。昼間は暗くて狭いベッドやソファー・畳・絨毯などの隙間や裏側に潜んでおり、暗くなると這い出してきて人の呼気に含まれる二酸化炭素を感知し、就寝中のヒトに咬みついて吸血します。一度に大量の血液を吸うため、吸血時間は10〜20分と長く、虫体内は血液で満たされ、赤色でパンパンになります。初めて刺された時は痒みもそれほどなく、皮疹も現れないので気にしないことが多いのですが、刺される回数が増えるとアレルギー症状を発症して赤い皮疹となり、激しい痒みが生じるようになります。特に、若い女性は皮膚が柔らかい脇の下や腕・お腹などを刺されやすくなります。以前使われていた殺虫剤DDTは安全性に問題から使用や製造が中止されましたが、現在ある殺虫剤は効き目が弱い上に薬剤抵抗性のトコジラミが登場したことも増加の原因になっています。

◆マダニ
 国立感染症研究所によれば、昆虫やマダニなどの節足動物が媒介する感染症は、春から夏にかけて増加するとのことです。日本紅斑熱は細菌よりも小さなリケッチアを保有するマダニに刺されることで感染します。38〜39℃の高熱・頭痛・発疹などの症状が出ます。抗生物質で治療できますが、四肢の末端が壊死して肢の切断や、多臓器不全に至ることもあります。2000年以降は毎年100人の割合で増加しています。マダニは哺乳動物に刺咬して吸血し、動物からヒトへ感染します。海外からの渡航者によって持ち込まれることから、輸入感染症とも呼ばれます。
 マダニに刺咬されると2〜8日後に頭痛・全身倦怠・高熱の症状が出て、同時に手足に紅斑が発症します。病原体となるリケッチアはヒトの細胞内で増殖するので診断には抗体検査が必要となります。リンパ節の腫脹はありませんが、白血球が減少したり、肝機能の異常、DIC(藩種性血管内凝固症候群)で出血傾向となると重症化します。
 日本紅斑熱は紅斑熱リケッチアとも呼ばれ、ダニ媒介性疾患です。マダニは温暖な地域に生息し、夏をピークに増殖します。一生を通じて1〜3回哺乳動物やヒトから吸血し、幼虫から若虫、成虫へと脱皮を繰り返して、交尾と産卵を行います。親ダニから卵へ垂直感染するため幼虫でも有害なマダニとなります。

◆帰宅後は要確認!
 最近、日本への渡航者が急増し、荷物とともに再興性衛生害虫であるトコジラミやマダニが入り込んでいます。知らないうちに持ち込まれることが多いので、帰宅後には十分に荷物や洋服などへの付着の有無を確認し、体に刺された跡があれば直ちに専門医の診断を受けましょう。

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