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VOL.210『病気を予防するカルシウムの働き』 [体]

◆骨や歯になるだけではない
 カルシウムといえば骨や歯の成分であることは知られていますが、他にも生命維持に直結した働きがあり欠かせない栄養素の一つです。
 カルシウムの大切な働きには心臓や脳を動かすための情報伝達機能がありますが、この機能が細胞分裂に関わることも知られています。精子と卵子が受精する時、精子の先端にはカルシウムが存在し、このカルシウムが信号となって受精した瞬間から細胞分裂が始まります。ですから、精子がなくても卵子にカルシウムを注入すればその信号が伝わって細胞分裂は始まります。これを処女生殖または単為生殖といいます。

◆カルシウム不足が招く疾患
 細胞分裂の盛んな組織、例えば、骨髄の造血細胞や腸管の上皮細胞などは放射線で障害されやすいのだそうです。この放射線からカラダを守るのが副甲状腺ホルモンです。副甲状腺ホルモンは細胞中のカルシウムを増加させ、細胞の分裂と増殖を促進させます。放射線によって障害された骨髄細胞や腸管上皮細胞が分裂増殖することで、放射線の被害から立ち直るという動物実験があります。ところが、副甲状腺ホルモンが細胞増殖を刺激する作用は両刃の剣で過剰に働くと、骨を溶かし出すスピードが増すのでカルシウム摂取不足では骨粗鬆症になります。遺伝性の病気で副甲状腺ホルモンが大量に分泌される原発性副甲状腺機能亢進症という疾患があります。この疾患ではガンの発生が増加します。副甲状腺ホルモンが長期にわたって過剰に分泌されるため細胞内のカルシウムが増加し続け、細胞分裂と細胞増殖が刺激され続けてガンが発症してしまうのです。
 食生活の中でカルシウム摂取が少なく、欠乏状態が続くと、腎臓の働きが低下するのでビタミンDの活性型ビタミンD3への変換が低下し、カルシウムの腸管からの吸収が低下します。同時に副甲状腺ホルモンの分泌が亢進するためガンが発症しやすくなります。
 また、カルシウム欠乏が続くと免疫機能も低下します。カルシウム摂取量が低下すると細胞内のカルシウム濃度が上がり、病原体を攻撃・排除する免疫担当細胞内にカルシウムが増えるため働きが低下してきます。すると免疫細胞間の情報伝達機能が混乱し、ガン細胞を攻撃するNK細胞の働きが低下するので、ガン細胞を見逃してしまい処理することができず、ガンが発生しやすくなるのです。つまり、カルシウム不足はガンの発症を助長することになります。カルシウム不足によって活性型ビタミンD3の働きが低下し、胃がんや大腸ガンになる人が増えます。カルシウムは食事中の脂肪酸と結合し、腸管内の老廃物の排泄を促進しますが、カルシウム摂取量が不足すると腸管内に大量の脂肪分が流れ、腸粘膜を刺激し続けるので大腸ガンの発生を助長します。
 カルシウム濃度は、細胞内液と細胞外液の間で1対10000の差があり、この割合が維持されていれば生理的に正常です。ところがこの割合が乱れ、細胞内のカルシウム濃度が増すと病気になります。細胞内にカルシウムが異常に入らないようにする薬がカルシウム拮抗薬です。カルシウムが細胞に入らないことで高血圧にも効果があります。また、抗がん剤としても有効です。

◆しっかり摂って健康を維持
 カルシウムを毎日しっかり摂り続ければ、細胞内にカルシウムが異常に入り込むことがないので、血液中のカルシウム濃度が一定に保たれ、健康寿命が伸びます。さらに、吸収されないカルシウムが腸管内の老廃物と結合して糞便と共に排泄されるため、大腸ガンの予防となります。
 しかし、カルシウムは加齢と共に吸収力が低下します。カルシウムやビタミンDを大量に摂っても吸収性に優れているカルシウムでなければカルシウム不足になってしまいます。吸収性に優れているカルシウムを十分に摂取するように心がけ、同時にマグネシウムを摂取すればカルシウムの吸収を助けるのでカルシウム不足を防ぐことができます。

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