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VOL.213『21世紀型の感染症』 [健康]

◆増加傾向の感染症
 一般に世界3大感染症と呼ばれているのは、マラリア・結核・エイズ(AIDS)で、これらは毎年100万人以上が死亡する恐ろしい感染症でした。そんな中、最近ではマラリア対策が進み、死者は年間65万人ほどに低下しました。マラリアの原因はマラリア原虫という微生物で、結核は結核菌、エイズはHIVウイルス(ヒト免疫不全ウイルス)です。
 これら3大感染症とは別に、毎年100万人ほどが命を奪われている感染症が増加傾向にあります。それは呼吸器感染症と呼ばれる肺炎・下痢症・腸炎です。

◆下痢症・肺炎について
 ヒトは体の60〜70%が水分です。その水分を急激に奪うのが下痢症で、死亡のリスクも低くありません。特に、小児や高齢者が下痢症になると重篤な病気になることが多いので注意が必要です。WHOでは子供の下痢症を起こすロタウイルスのワクチン接種を奨励しており、日本でも小児科学会がワクチン接種を指導していますが、定期的接種には至っていません。高齢者(75歳以上)では冬場にノロウイルスによる腸炎が重篤化し、死に至ることがあります。ノロウイルスはロタウイルスと違って有効なワクチンがありません。有効な治療薬がないので、老人ホームや介護施設で流行すると死亡のリスクが高まります。下痢症は体の水分を奪う病気で、治療の根幹は失った水分を補給することです。
 日本人の死因の1位はガンで、2位が心筋梗塞や脳梗塞などの心臓・血管系疾患、3位が肺炎です。肺炎の原因は種々ありますが、主なものは細菌です。この細菌にも肺炎球菌・インフルエンザ菌・マイコプラズマ・レジオネラ菌など多種多様な菌があります。さらに、インフルエンザウイルス・RSウイルスなど多種のウイルスも原因となり、過敏性肺炎や間質性肺炎のように感染症でないものもあります。
 下痢症も大腸菌やサルモネラ菌、カンピロパクターなどの細菌が原因になるし、ノロウイルスやロタウイルスなどウイルスが原因にもなります。さらに、アメーバやジアルジアなどの寄生虫が原因となることもあります。

◆感染症の原因は多様化している
 このように、21世紀型の感染症は肺炎や下痢症、腸炎など原因が多種多様で複雑化しています。従来の感染症、例えば肺炎球菌なら抗生物質のペニシリンが効くペニシリン感受性肺炎球菌とペニシリンが効かないペニシリン耐性肺炎球菌に区別して治療できましたが、21世紀型の感染症はこれだけでは解決しません。そこで2008年、肺炎球菌の分類が変更されました。肺炎球菌の中でも肺炎を起こす肺炎球菌には抗生物質が効きますが、髄膜炎を起こす肺炎球菌には抗生物質が効きません。そのため分類を変え、治療法を変更しました。
 これらの違いは脾臓によることが最近の研究で判明しました。脾臓は左脇腹、腎臓と胃の間にある臓器で、日常的に脾臓の具合が悪いという人はいませんし、症状も現れませんが、感染症に対抗する免疫機能を持っています。しかし、交通事故や胃ガン、膵臓ガンなどの手術で血小板が減少すると、血液の病気の治療のために脾臓を摘出することがあります。すると感染症を引き起こしやすくなってしまうのです。特に、肺炎球菌に対して強い免疫力を持っており、攻撃・排除するのが脾臓なので、摘出した人は感染症を起こしやすくなります。すると、目やカラダの各部から出血し、多臓器不全を起こします。抗生物質を使用しても効果が見られず、みるみる体力が衰えて死に至るようなこともあります。
 近年、日本人の免疫力の低下が進んでおり、皮肉なことに、衛生環境が整備されたことも種々の感染症の発症の確率を急激に増加させる一因となっています。高齢者や小児の場合、重篤化するリスクが高いので、肺炎や下痢症、腸炎など身近に起きる病気に対して細心の注意を払い、早めに対処することが望まれます。感染症は新しい時代に入ってきたようです。


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