SSブログ

VOL.214『腐敗と発酵の話』 [生活]

◆食品の腐敗とは
 食品は初夏であるこの季節から腐敗しやすくなります。では、腐敗とはどのような現象なのか、また、気温が高まる夏に向けてどのような点に注意が必要なのか、見てみましょう。
 食品にはさまざまな細菌が存在し、腐敗していない食品でも1g当たり100〜100万個の細菌が存在しています。これらが大量に繁殖することが腐敗です。腐敗した食品には1g当たり1千万〜1億個の細菌が繁殖しています。腐敗を起こす細菌は食品の表面だけでなく内部でも増殖しており、それが急激に増殖することで腐敗が起きるのです。細菌は、温度条件によって数十分で分裂し、倍々に増えるので短時間で爆発的に増殖します。魚介類に多い腸炎ビブリオ金は一個の細菌が4.5時間で27回分裂し、1億4000万個に増殖します。腐敗が進んだ食品は味も匂いも急激に変化します。腐敗臭は主にタンパク質がアンモニアに変化することで生じます。同時に硫化水素、糖からは有機酸が作られ、それらがミックスして腐敗臭が起きます。
 細菌類は、腐敗の化学反応を進める酵素で食品中のタンパク質や糖を分解して、必要なエネルギーを得ています。その過程でアンモニアと硫化水素という腐敗臭の原因となる気体が生じます。これが人体には有害物質となります。腐敗の初期であれば摂取しても人体に影響はありません。一方、腐敗していなくても下痢や嘔吐を引き起こす食中毒菌が存在すれば食中毒を発症します。例えば、大腸菌O ー 157は100個程度の摂取でも重篤な食中毒となります。つまり、腐敗しているかどうかと食中毒になるかどうかは必ずしも一致しないのです。しかしながら、腐敗した食品を大量に摂取することで食中毒を起こす場合もあるので十分注意しましょう。

◆腐敗を防ぐ
 では、腐敗を防ぐにはどうすればいいのでしょう?基本的に細菌は水分量(細菌が利用する自由水)を減らすことで増殖を抑えることができます。これを利用したのが、塩漬けや砂糖漬け・干物です。食塩や砂糖を加えて自由水を減らし、乾燥させることで細菌が自由水を利用できなくなり増殖できなくなるのです。
 また、細菌の持つ酵素を働きにくい環境におくことで、菌の増殖を抑えることができます。通常、細菌の酵素は低温になると働きません。ですから冷蔵庫内は細菌の増殖を抑制できるのです。ただ、冷蔵庫内は10℃前後なので長期間の保存は期待できません。また、強い酸性の環境下では酵素が破壊され細菌は死滅します。例えば、酢漬けや乳酸菌を利用したぬか漬けは酸性度を高める保存方法です。

◆美味しくて体に良い発酵食品
 腐敗と同様な現象に発酵があります。古くからヨーグルトなどの乳製品や納豆などは発酵食品として知られていました。乳酸菌や納豆菌により食品が変質することで美味しい食品になります。乳酸発酵では、乳酸菌を利用して乳糖を乳酸に変え保存でき、美味しい味を作り出すことができます。腐敗と醗酵は細菌による同じ現象ですが、日本には数多くの発酵食品があり、発酵によって日本の食文化は発展したとも言えるでしょう。醤油や味噌は、塩味と旨味を合体させた発酵食品の中心的存在です。その中には旨み成分のグルタミン酸やイノシン酸をはじめ各種のアミノ酸などが含まれていて複雑な香味が生み出されます。
 食品を発酵させることで腐敗しやすい食品の保存性は高まりました。そして発酵食品は世界中で見ることができます。発酵させることで保存することが可能となり、さらに、栄養源にすることもできます。人類は膨大な時間をかけ、微生物を利用して知識を積み重ね、細かい感性と注意力によって発酵食品を作り、複雑で個性的な食品が生み出されています。食品の腐敗と発酵の違いについてお分かりいただけたでしょうか。

v214 (2).jpg

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。