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VOL.221『身近に迫る外来有毒生物』 [生命]

◆ヒアリ、日本に侵入
 今年5月、極めて強い毒を持ち、殺人アリとも呼ばれる南米原産のヒアリが、日本で初めて発見されました。6月以降、兵庫、愛知、大阪でも発見され、7月には東京の大井埠頭で確認されており、侵入拡大が懸念されています。国内に定着している有毒な外来生物は数多くあり、環境省では今回のヒアリに対しても警戒を強めています。

◆ヒアリとは
 ヒアリ(火蟻)は、刺された時に火がついたような痛みを感じることに由来して名付けられました。体調は2.5〜6mmで赤茶色の攻撃性が極めて強いアリです。巣であるアリ塚を壊すと、一度に数100匹が襲ってきて衣類の隙間に入り込み、腹部先端にある毒針で刺します。毒の主成分は細胞を破壊するアルカロイド系の有機化合物で、傷口周辺が腫れてニキビ様の膿が出て、痛みは2週間ほど続きます。同時にアレルギー反応を起こすハチ毒に似たタンパク質を含んでいるので、急激なアレルギー症状が出て、重篤なアナフィラキシーショックを起こすと死亡する恐れもあるといいます。
 ヒアリは通常、植物を食べていますが、昆虫の幼虫やミミズ・カエルなどの小動物を見つけると集団で襲って捕食します。毒は狩りに利用するための生存に必要な武器なのです。環境省では、ヒアリを見つけたら絶対に触らず直ちに出先機関に連絡するよう求めています。刺されてしまったら、20〜30分ほど安静にして、もし重症化して症状が現れたら、直ちに病院で治療するように呼びかけています。
 ヒアリは、1942年頃までは原産地である南米中部でしか見られていませんでしたが、国立環境研究所によれば現在、日本を含む環太平洋の15カ国で発見されています。当初は北米やカリブ海諸国が中心でしたが、21世紀に入り5年間でマレーシア・オーストラリア・台湾・ニュージーランド・中国などで一気に拡大しました。その背景には中南米の急速な開発があり、経済発展が続く中国や東南アジアに向けて多くの農産物や資源を輸出するようになったため、それらに紛れたヒアリが貨物船などで各地に運ばれ拡大しました。
 ヒアリの繁殖力が強いことが生息地の拡大に拍車をかけています。通常、アリは一つの群れに女王アリが1匹なのですが、ヒアリの場合は数10匹いて、1日に数1000個の卵を産むため、拡大するスピードが極めて速いわけです。また、アリ塚は深さが10m以上にも及び駆除することが極めて困難です。

◆ヒアリだけではない、怖い外来生物
 ヒアリ以外にも、駆除から逃れて日本に定着してしまった有毒外来生物がいます。ヒアリと同じ種類の毒を持つアカカミアリはアメリカ軍の輸送物資に紛れ込み、すでに沖縄県や小笠原諸島の硫黄島に定着しています。6月には神戸港で見つかり、本州への上陸も確認されました。また、温暖なオーストラリアが原産で1995年に侵入したセアカゴケグモは沖縄から北海道まで40以上の都道府県に拡大しています。2012年以降には、中国原産で強毒のソマアカスズメバチが九州に定着しています。ヒアリも例外ではありません。他にも致死性の毒を持つキョウトウサソリや死亡例の報告もあるジョウゴグモの仲間も拡大しています。ヒアリの仲間でもあるコカミアリの侵入も懸念されており、環境省は港湾での水際対策を強化しています。しかしながら、外来生物の国内侵入は、海外との貿易が続く限りつきまとう問題です。外国からの渡航者も含め、日本に入って来るのを避けることは極めて困難です。早く見つけて駆除する以外に定着を防ぐ対策がないのが現状です。
 ヒアリに刺されたら、傷口周辺に痛みやかゆみ、腫れや発疹が全身に広がり、呼吸困難や血圧低下、意識障害となります。最悪ではアナフィラキシーショックで死に至ります。
 ヒアリを見つけたら速やかに関係機関に連絡し、もし刺されたらすぐに病院に行きましょう。ヒアリが日本に定着しないよう祈るばかりです。

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