SSブログ

VOL.222『命の基本、カルシウム』 [生命]

◆カルシウムという元素
 カルシウムは地球上で5番目に多く存在する物質です。例えば、砂浜で星の砂をつくるプランクトンやサンゴの硬い殻は炭酸カルシウムからできています。
 脊椎動物の骨や歯を形成する必須微量金属元素の一つがカルシウムです。カルシウムは生体の中でも生命維持に極めて重要な役割を果たしています。地球誕生以来、生命体の祖先は多細胞化した生物が特定の細胞に一定の役割を与え、それらを結合・統合することで高等動物へと進化させました。この細胞同士を結合させる役割を果たしたのがカルシウムなどの微量金属元素です。

◆体内の情報伝達の中心
 本来、カルシウムは細胞にとって猛毒だったので、細胞内にカルシウムが侵入すると、有害な活性酸素が発生、増加し、細胞内のエネルギー源であるATPの反応に影響を与えて細胞を死に導いてしまいます。そこで、カラダは正常細胞内のカルシウム濃度を極めて低く抑えました。一方、細胞外液のカルシウムは細胞内に対して1万倍の濃度にしたのです。このように細胞の内と外で極端な濃度差を持つ物質はカルシウムしかありません。この濃度差をカラダは、細胞を自ら自殺させるアポトーシスと呼ばれる機能の引き金として利用しています。アポトーシスとは、細胞内遺伝子プログラムに書き込まれている細胞の自己死のことです。これは新しい細胞に置き換えるために古くなった細胞を消滅させる役割を持っており、常に新しい組織を維持する働きをします。また、正常細胞がガン細胞に変異した際には、その細胞にアポトーシスを起こさせガン細胞の増殖を抑えます。さらに、ウイルスに感染した細胞にもアポトーシスを起こさせウイルスの増殖を抑えます。このように、カルシウムイオンは細胞内に流入して細胞内濃度を高めることで、細胞を機能不全にしてアポトーシスを起こさせるのです。つまり、カルシウムは不要になった細胞が自殺するスイッチを入れているのです。
 また、すべての細胞はカルシウムによる電気信号によって細胞間の情報交換が可能となります。例えば、筋肉はカルシウムがないと収縮しません。筋肉細胞内にカルシウムが入ってきて結合することによって筋肉は収縮するのです。かつて生命体は海から生まれました。ですからカルシウム・カリウム・ナトリウムなど体内の多くの微量金属原子の組成は海水によく似ています。生物は原子の環境を維持した細胞に守られて、カルシウムやナトリウムなどを細胞間に放出し、一方では安定した電位を使用することで細胞内の情報伝達を発達させました。

◆生命に直結している栄養素
 海から陸に上がった生物には、海水の成分を固めたカルシウムの塊(骨)と、海水成分を運搬する血液が必要でした。カルシウムが豊富な海で生きる魚には副甲状腺がありません。副甲状腺はカルシウムが不足した時にカルシウムを補う内分泌腺で、カルシウム濃度の変化を感知するサンサーです。カルシウムが体内で不足している時に副甲状腺ホルモンが分泌されます。この内分泌液がカルシウムの働きをコントロールしているのです。上陸した両生類には副甲状腺があるため、生物は脂質という水を通さない油の膜に包まれた細胞や骨・血液・副甲状腺・腎臓などを持つことで陸に上がり進化することができたのです。
 このように、カルシウムは生命と直結している栄養素です。陸上では生物は常にカルシム不足の状態です。カルシウムの吸収を助けるのが副甲状腺と腎臓です。摂取するカルシウムは吸収性に優れた炭酸カルシウムでイオン化した状態のものが良いでしょう。太古の昔、生命体として海の中で生活していた頃の遺伝子は、人類へと進化した現在も細胞内に存在しており、その状態のままなのです。

v222 (2).jpg


この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。