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VOL.228『細胞間の情報交換が生命維持に関与する』 [体]

◆コミュニケーションの取り方
 ヒトは古代から情報交換を行って生き延びてきました。文字のないインカ帝国では紐にコヨリをつけて人口を把握していたそうです。指を折って数える代わりに紐に結び目を作り、区切りの良い数になると、新しく色の違う紐を結ぶことで間違いを減らしていました。この方法なら言葉や文字が無くてもみんなが数を共有できました。他の民族と突然会話する羽目になった時は、身振りや手振り、擬音や目つきで分かり合います。今日、世界の人口は70億人を超え、言語は6000種類にも及びます。
 機能が異なる200種類以上の体内の細胞は、内外からの刺激に対してバラバラに反応するのではなく、規則正しく一貫して働いています。細胞は横の繋がりばかりでなく、時間と空間との縦の流れにおいても統一した自己を維持します。つまり、自分以外の物質(病原体や異物など)が体内に入ってくると、全てを非自己と判断して免疫機能(白血球)が攻撃・排除することで病気にならないようにしています。

◆体内の情報伝達
 自分は自分ですが、身体的には昨日の自分と今日の自分とは違っています。つまり自分という存在は、変化しつつも心やカラダは統一性を保っているのです。その統一性は細胞同士が互いに情報交換しているからこそ成り立ちます。カラダの内部では情報伝達物質であるタンパク質が言葉の代わりに行き交いカラダをうまく調節しています。目も耳もない細胞がどのようにして別の細胞に情報を伝えるのか、そこには言葉を使いこなすシステムがあります。ある細胞がタンパク質をあるタイミングで分泌して近くの細胞に働きかける、また、あるタンパク質が血流を介して遠くの細胞にまで到達し働くなど。さらに栄養素や酸素、酵素、化学伝達物質などの情報が神経繊維に伝わり、電気信号となって別の神経細胞に届く、このような情報伝達が言葉となって生命維持の複雑な作業工程や高度な分業作業を遺伝子の設計図によってスムーズに進めていきます。そしてこれらは免疫機能の防御システムや神経伝達物質のネットワークシステムとなり、生命が統一された状態で維持されます。
 脳内には1000億個の神経細胞が密集し、それが1本の神経繊維となり、他の神経繊維と1000〜10000箇所のシナプスで結合しています。この膨大な数のシナプスの神経伝達活動によって情報伝達が行われるので、日々豊かな人生を送ることができます。神経ネットワークを形成することで情緒という心が他人を共感させることができ、心が自分の遺伝子を動かして免疫機能に影響を与え、カラダの防御システムが働きます。意識を強くする感覚は、直感・見る・聞く・嗅ぐ・味わう・想うで、気づかぬうちに内部から発せられます。これらも言葉ではないカラダの情報システムです。
 ヒトは仕事をして普通に暮らします。誰かを恋しく想ったり、家族を愛したり、些細な出来事に頭を悩ませ、突然の不運を呪い、病気や感染症を恐れ、健康維持を願います。日常生活の中で、寝ている時も、目が覚めている時も、意識がある時もない時も、カラダの中で細胞同士が言葉(情報交換)を交わすことで、カラダの仕組みは維持され、生命が維持されているのです。何事もなかったように毎日を過ごし、そのように時は流れていきます。

◆情報交換が維持された証
 カラダの細胞は内部の遺伝子プログラムに従って順序よく働いています。これは人類の進化の過程において遺伝子に組み込まれ、今日まで生殖行動によって優秀な遺伝子を継承し、存在してきた結果です。途中で突然変異が起こり、異常な遺伝子になっていれば死に絶えてしまっていたはずです。今ある存在は細胞と細胞との間の規則正しい情報交換によって遺伝子が維持された証です。その大きな役割を担うのがカルシウムやカリウムなどのミネラル成分です。これらミネラルがなければ情報は伝わりません。そして、細胞が老化し、壊死したた時、ヒトは死に至ります。細胞の情報交換は死ぬまでずっと続くのです。

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