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VOL.237『日本人の超清潔志向をどう思いますか?』 [生活]

◆ ヒトは細菌と共生している
 人類は進化の過程で、細菌やウイルスなどの微生物とともに生きてきました。つまり、多くの病原体と共存してきたのです。その微生物の中には感染症を引き起こすものがいる一方で、カラダの健康を守ってくれるものもいます。
 母親の胎内は無菌状態ですが、出産と同時に乳児は細菌やウイルスに感染します。しかし、感染しても直ちには病気を発症しません。それは乳児が母親から免疫機能を受け継いでいるためで、しばらくはその免疫機能によって発病することはなく、次第に自らも病気に感染しない防御機能を形成していきます。基本的にはカラダの周囲(皮膚・粘膜・腸内)に共生する微生物が免疫力を強化する方向に働いてくれます。

◆ 健康を守るさまざまな常在菌
 第2次世界大戦直後の日本では衛生環境が劣悪だったため、病原体の感染により乳児の多くが死亡しました。栄養状態が悪い上に生活環境が悪化していたので、病原体に感染しての死亡率が最も高かった時代です。
 ところが今日、日本の衛生環境は世界トップクラスで、通常の生活をしている限り命を奪われるような恐ろしい病原微生物に遭遇する機会はほとんどありません。かつて蔓延していた死に直結する恐ろしい感染症は、乳児の時にワクチン接種することでほとんどが防げています。それなのに、毎年のように風邪をひき、食あたりを起こすのは、病原体に対して十分な免疫が自身のカラダに備わっていないからです。小児の病気のほとんどはまだ十分な免疫力が備わっていないのと水分不足から起こります。
 ヒトのカラダに共生し、健康の維持に関与している細菌(常在菌)は100兆個以上ともいわれ、ヒトの細胞数が37兆個といわれることから圧倒的に細菌の方が体内に多く存在していることになります。ヒトの細胞の遺伝情報は11兆個ほどで、細菌の持つ遺伝情報の方がはるかに多いそうです。特に腸内では、ヒトの遺伝情報が2万個なのに対し、腸内細菌は60〜100万個で30倍以上という圧倒的に多くの遺伝子情報を持っています。
 ヒトは細胞の数の約10倍の細菌と共生しています。その細菌を排除する過剰な行為が最近の傾向です。現代日本では、生活環境の中で免疫力を強くする方向に働いているのも細菌なのです。例えば、表皮をおおう皮膚や粘膜は通常、弱酸性に保つことで守られています。そこには外部からの病原体による感染症を防いでくれる常在菌が多く存在しています。これらはヒトに害を与えることはありません。これらの常在菌を無理やり化学合成された薬剤で排除するという行為が間違っているのです。消費者は殺菌効果や薬用効果を期待して商品を購入しますが、これらの合成化学薬剤の長期間の使用は、ヒトの健康に対し、効果より有害性の方が指摘されています。例えば、殺菌効果のある薬剤を使うことで病原菌の耐性を増加させるリスクが高まるとか、ホルモンの働きが阻害されるなどという健康面への影響が懸念されています。トリクロサンという薬剤は殺菌や抗菌の効果があり、薬用石鹸や薬用ハンドソープ・薬用ボディケアソープ・薬用洗顔料など液体抗菌製品の95%以上に含まれている成分です。この成分を含む商品は、病気を引き起こす菌とともに私たちを守っている常在菌も排除してしまいます。
◆ 日本は清潔すぎる?
 今日、日本の若者は極端な超清潔社会を人為的に作り出した環境の中で、生まれた時から生活しています。無数の洗剤に囲まれて暮らす生活が綺麗で衛生的で便利で心地よく、朝からシャンプーやボディローションなど化学物質づけの生活です。また、体毛を極端に嫌い、全身の体毛を除去する、特に男性はヒゲを除毛してツルツル肌にしてしまうそうです。汚らしい男性は女性からモテないのでしょうか?
 超清潔社会は本当に健康的で快適な社会といえるのでしょうか?人類の進化に逆行しているような気がしてなりません。清潔すぎる社会がヒトの健康を害しているかもしれません。

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