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VOL.253『基礎代謝と水溶性食物繊維』 [体]

◆日本人にとって肉食は
 近年、子供や若い女性の肉食化が急速に進んでいます。もともと狩猟や家畜飼育の民族であり、肉食が中心でそれが遺伝子に組み込まれている欧米人には肉類を分解消化する酵素が大量に分泌されます。それに対して農耕や木の実を採取して野菜や魚類が食事の中心であった日本人はそのような遺伝子を持っていないので、肉類を分解消化する酵素の分泌量はわずかです。そのため肉類は小腸でアミノ酸まで分解されず、未消化のタンパク質のまま吸収されずに存在します。アミノ酸まで分解されれば小腸から吸収されます。大量の肉をよく噛まないで食べ続けると、肉を分解消化する酵素を分泌する臓器は徐々に疲弊してきます。そのため、最近、中年から高齢女性に膵臓ガンが急激に増加しているのです。

◆日本人の遺伝子と腸内細菌
 日本人は、飢餓の時代を生き延びるため脂肪を蓄える遺伝子を受け継いできたので、両親が太っている子供が肥満になる確率は80%以上となります。一方、両親とも普通体重の子供の肥満は10%以下となっており、太りやすい体質は遺伝することが分かります。そして、日本人の肥満では遺伝の他にその人の持つ基礎代謝の環境要因が遺伝子の発現を強めます。同じものを同じように食べても太りやすい人と太りにくい人がいるように個人差が生じるということです。しかし、基礎代謝が低いから太るとは限りません。肥満は遺伝よりも生活習慣に起因することが多いので、太りやすい体質の人は生活習慣に気をつけることです。若い頃には普通体重であっても40歳を過ぎると基礎代謝が下がり、積もり積もった不適切な生活習慣によって太り、皮下脂肪、特に内臓脂肪が増えてきます。しかも、太りやすい遺伝子を持つ人が太りやすい生活習慣を送っていると急激に肥満になります。
 肥満は腸内細菌ともリンクしています。通常、腸内細菌は100兆個生息していると言われます。それらは腸内でしか生きられず、その人と一生共に過ごします。腸内細菌は、食物に含まれる消化しにくい食物繊維を酵素で分解し、栄養素として利用できるようにします。そのため腸内細菌の種類とその比率が変化すると、カラダの健康を維持できなくなり、肥満も導きます。マウスを用いた実験で、太った人の腸内細菌を移植するとそのマウスは太ってきます。これは腸内細菌の種類の違いによるものです。ダイエットで体重を減らすと、肥満に関連する腸内細菌が減少し、痩せ型に関連する腸内細菌が増えます。このように、腸内細菌のバランスは肥満度に関連しているのです。
 肥満を導く腸内細菌は食物から栄養素を取り出す力が強いため、この種類の腸内細菌が多量に生息していればエネルギーを吸収して太ります。これに対して、痩せた人の腸内細菌は短鎖脂肪酸を合成します。短鎖脂肪酸は水溶性食物繊維を腸内細菌が分解することで合成される脂肪酸です。水溶性の食物繊維を多量に摂取するとエネルギー消費が高まり、内臓脂肪が中性脂肪を取り込むのを防ぐので、太らなくなるのです。水溶性食物繊維は海藻類やキノコ類、山芋などに豊富に含まれています。食事の際にはまず水溶性食物繊維を含む食品から食べ始めることで、腸内細菌のバランスが変化し、中性脂肪の取り込みを抑制するので太らなくなります。

◆筋肉量を保ってダイエット
 筋肉は30歳頃から徐々に落ちてきます。太ももの筋肉量は毎年1%ずつ失われます。筋肉は足から減少するのです。筋肉量が減少すると基礎代謝も減少するので、脂肪が蓄積してきます。これに甘い食べ物の摂取が加わると、急激に脂肪の蓄積が進みます。適度な運動をせず、食事だけで脂肪を減らすダイエットは一時的で効果が続きません。つまり、元の食生活に戻ると減量した分が直ちに戻り、筋肉量だけが減った肥満となります。これは健康的にとても問題があります。健康的にダイエットするには、野菜や水溶性の食物繊維を摂取して、散歩程度の適度な運動を続けることです。これが脂肪を減らし、肥満を予防します。
 
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