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VOL.260『フェロモンについて』 [生命]

◆匂いとは
 異性を惹きつけるフェロモンの研究が進んでいます。生物は他の個体、特に異性に対しては匂いが大きく関与します。初期の人類において人と人がコミュニケーションをとる時、最初の手がかりは視覚と嗅覚でした。それに対し、生物の性的なコミュニケーションは嗅覚で、その優位性は圧倒的です。人間はまず視覚や聴覚といった感覚を頼り、最後に匂いで正確に突き止めます。

◆フェロモン研究の歴史
 1939年、ドイツ人のブーテナントは蚕を繭から50万匹羽化させ、性誘導物質の抽出に成功し、ノーベル化学賞の受賞が決まっていましたが、この年開戦した第2次世界大戦のせいで辞退しました。(戦後改めて受賞)1955年、内分泌学者のカールソンは体内で移動して効果を発揮するホルモンの存在を発表し、これをフェロモンと命名しました。
 異性を惹きつけるフェロモンは性フェロモンと呼ばれ、生物はそれ以外にも種々のフェロモンを駆使して生きています。例えば、アリは仲間に餌の在りかを知らせる道路標識フェロモンや、外敵がいて危険が迫っていることを知らせる警報フェロモンを持っています。テントウムシは成虫で越冬するので、秋から冬にかけて石や倒木の中など寒さをしのぐ安全な越冬場所を知らせ合う集合フェロモンを持っています。
 女子大生のマクリントックは、長い時間を一緒に過ごす女性たちが同じタイミングで月経になる傾向があることを1971年にNature誌に発表し、この現象はマクリントック効果、あるいはドミトリー効果と呼ばれるようになりました。しかし、この時点では原因と
なるフェロモンが不明だったため公的な学説とは認められませんでした。
 1998年、マクリントックはシカゴ大学の教授となり、月経の同期化現象について29人の女性を募り、そのうち9人に排卵前後の数時間、脇の下にパッドを貼り、他の女性がパッドの匂いを嗅ぐことで月経周期の同期化が起こることが確認されたとNature誌及び、一般紙のタイムスに論文を発表しました。マクリントックは脇の下の匂いに含まれるフェロモンには2種類あり、一つは卵胞期のフェロモンα、もう一つは排卵後のフェロモンβで、この二つのフェロモンによって月経の周期化現象がもたらせるとしました。
 生物には視覚・嗅覚・味覚などの外界センサーがあります。視覚はロドプシンというタンパク質を網膜細胞膜面の受容体が感知して外界の映像を映し出します。嗅覚にも匂いに対応する細胞膜受容体が多数あり、このセンサーはヤコブソン器官と呼ばれ、遺伝子によりタンパク質分泌としての役割を果たします。ヤコブソン器官はフェロモンの受容体で細胞レベルで存在し、神経が伸びて機能します。鼻は別の皮膚細胞が特別な匂いを感じます。
 バーライナーとモランは、ヤコブソン器官とフェロモンの研究からヒト・フェロモンの候補物質を発見しました。皮膚の抽出物から同定されたPDDというステロイドホルモンに似た物質です。PDDは自律神経や内分泌系に影響を与えるようで、成人のヤコブソン器官に吹き付けると、心拍数の上昇や血液中のストレスホルモンの低下が見受けられました。また、PDDはアメリカと日本で特許が取得され、人工的に合成されて香水に添加され、商品化されています。

◆フェロモン利用の未来
 ヒト・フェロモンにはネズミのフェロモンに似たフェロモン受容体が存在し、ゾウやシカの尿中にはオスの性行動を刺激するフェロモンが存在します。一般的に哺乳動物にはフェロモンが存在し、性行動を助長します。もし、会話の中で「あの人はいつもすごいフェロモンを出している」と言ったら、どのように感じますか?異性を惹きつけるほどのホルモン、フェロモン物質の存在に関してはまだ明確な物質が立証されていませんが、近い将来、そのようなフェロモンを含んだ物質が香水として登場する時代が必ず来るでしょう。
 男性も女性も各自のフェロモンを吹き付けて異性に対して魅力をアピールできる時代がやってきそうですね。日本の化粧品のレベルは世界最高峰ですので期待されます。

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