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VOL.275『生活習慣が胃腸を傷つける』 [生活]

◆日本の食生活
 日本には『喉元過ぎれば熱さを忘れる』という言葉があります。たとえ苦しいことがあっても過ぎてしまうとそのことをすっかり忘れてしまい、また同じことを繰り返すという意味ですが、苦しかった時に他人から受けた恩を軽んじるという意味でも使われます。この言葉のように口から熱いものを飲み込んだ時、熱いと感じるのは食道に近い喉の部分です。食道
・胃・十二指腸・小腸・大腸には熱さを感じる神経がありません。昔の人はこのことを経験から知っていたと思われます。温かいお茶を飲むとお腹が温まるのは胃ではなく消化管の周囲の組織が温かさを感じるからなのです。
 関西地方の郷土料理に、ほうじ茶に米を入れて炊く茶粥があります。奈良の大仏を建立した際にはすでに食べられていたので、1300年以上の歴史を持つ料理です。熱い茶粥を食べる地域には食道ガンが多いことが知られています。急いで熱いまま流し込むことで食道の粘膜が傷つくためガンを発症するのです。粘膜が火傷して傷つき、その火傷を治そうと粘膜の細胞が活発に分裂し、それを繰り返すうちに粘膜細胞内の遺伝子に異常が生じて、そこから食道ガンが発症します。同じように、唐辛子の辛味成分カプサイシンは少量であれば胃粘膜の血流を良くして粘膜を守りますが、大量に摂取すると粘膜を刺激します。コショウや生姜の辛味成分もカプサイシンに類似した作用があり、摂りすぎには注意が必要です。

◆塩分と脂肪分
 また、日本では昔から塩分を大量に摂ってきました。食物の保存に塩分は欠かせませんが、塩分を摂りすぎると高血圧のリスクが高まります。さらに塩分摂取の多い地域では胃ガンの発症率が高いことも分かっています。昔は冬場に新鮮な食材を入手しにくかったため、魚や野菜を塩漬けにして保存していました。男性には塩を舐めながら酒を飲むという習慣もあり、動脈硬化から高血圧や脳卒中を発症し、若くして亡くなる人も少なくありませんでした。
 胃はpH1〜3の胃酸の攻撃から身を守るためにアルカリ性の粘液を出して胃壁を守っています。しかし、食道にはこの仕組みがないため、胃酸が逆流すると食道の壁がただれます。すると、食物が食道を通る際にしみる・胸がつかえる・胸やけがするなどの症状が出ます。この症状がひどくなると、胃酸が食道上部まで上がってきて気管に入り込み咳が出たり、喉が痛くなったりします。これが逆流性食道炎です。
 ガン細胞は1つが発生してガンと診断されるまでに10〜20年かかります。ガンを予防するには若いうちから生活習慣に気をつけることが重要です。肥満になると内臓脂肪が蓄積します。内臓脂肪は脂肪の量が多いだけでなく、大腸ガン・肝臓ガン・膵臓ガン・食道ガンの発症に深く関与します。20歳頃に肥満だと膵臓ガンの危険性が高まります。女性の肥満は乳ガンの発症に関与します。また10代の思春期に脂肪分の多い食事をしていると成人になって乳ガンになりやすいことも分かっています。
 脂肪分の多い食事がガンのリスクを高めるのは、脂肪分を摂取すると、胆汁が十二指腸に分泌され、脂肪を分解する時、大腸内に悪玉菌が多いと胆汁を分解してしまうのでガンを発症しやすくなってしまうからです。

◆生活習慣は変えられる
 仕事をバリバリこなす人や努力家で闘争心が強い人は交感神経が優位に働き、心が常に緊張して生活しているのでストレスを受けやすくなります。集中すると歯を噛みしめる癖がある人、首や肩が凝る人、頭痛を起こしやすい人もストレスを受けやすい人です。また、自律神経のバランスが乱れる人は生活リズムの乱れで交感神経が優位に働くので肥満になりやすくなります。健康な人は、交感神経と副交感神経が常にバランス良く働いています。この自律神経は消化管だけでなく、多くの臓器の働きを調節しています。
 規則正しい生活を続けること、塩分・脂肪分の少ない食生活をすること、適度な運動の習慣、睡眠時間の確保、弱アルカリ性でカルシウムやマグネシウムを豊富に含む水を毎日飲むことが健康につながります。生活習慣はその気になれば変えられます。心の持ち方が重要です。

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