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VOL.302『長生きや健康維持に関わる食生活』 [長寿]

◆100歳以上の人の食生活
 日本では100歳以上の高齢者が増えています。長生きをしている人の食生活の特徴を調べると、肉や魚などの動物性タンパク質や大豆製品などの植物性タンパク質をバランス良く少量ずつ摂取していることが分かりました。一般的には高齢になると食事は淡白になり、肉や魚を食べなくなる人が増えますが、免疫機能を高めるためにはそれは有利な食生活とは言えません。だからと言って高齢者が肉を食べることは本当に健康長寿に役立つのでしょうか?60歳を過ぎた人は積極的に肉を食べるべきなのでしょうか?

◆肉や魚の効能
 肉の赤身の部分にはミネラル成分や亜鉛が含まれています。亜鉛は身体の生命維持の基となる新陳代謝に必要な多くの酵素を作る成分やタンパク質の合成、遺伝子情報を伝えるDNAの転写にも関与しています。亜鉛は牛肉に14.5mgと食肉の中で最も多く含まれています。豚肉や鶏肉にも牛肉の半分ほどの亜鉛が含まれています。また、牛肉に含まれるコレステロールは男性ホルモンのアンドロゲンの原料になります。週に1度はステーキを食べ、亜鉛を摂って新陳代謝を盛んにすることで免疫力の増強を図れます。さらに牛肉の赤身に含まれるエラスターゼという酵素は血管や筋肉の腱などを支えるエラスチンという繊維の働きを抑制するので、筋肉をバランス良く保つことで血管の弾力を保ち動脈硬化を予防します。
 徳川幕府、最後の将軍となった徳川慶喜は健康長寿のために豚肉を食べたことが知られています。豚肉はビタミンB1が他の肉よりも多く、焼いて調理するとさらに含有量が増えます。ビタミンB1の働きは糖代謝の補酵素としてブドウ糖をエネルギーに変換します。ビタミンB1が不足すると脳神経が働かなくなり、心臓発作の原因となります。
 牛肉、豚肉と並んで肉の御三家が鶏肉です。まず鶏肉は低カロリーで、タンパク質量は牛肉にも劣りません。なので、鶏肉は成長期の子供や高齢者に適しています。毎日鶏肉を食べても肥満や動脈硬化の心配は要りません。他に羊肉のマトンがあります。マトンは不飽和脂肪酸が多いのでコレステロールや中性脂肪を増やさないため、動脈硬化の予防に役立ちます。また、新陳代謝を活性化するアミノ酸のカルチニンも含まれています。カルチニンが欠乏すると筋肉の働きが低下し、ミオパチーと呼ばれる低血糖を起こし、心筋梗塞を起こすこともあります。カルチニンは身体のエネルギー代謝を参観にし、免疫力を高めます。
 魚類に含まれる不飽和脂肪酸のEPAやDHAの脂肪酸は血管の弾力性や若々しさを維持します。また、日本人はタコやイカをよく食べます。タコにはタウリンが奥含まれており、カキなどの貝類にも多く含まれています。イカは高タンパク質で低脂肪、タコと同じようにタウリンも豊富です。

◆新陳代謝を高めて免疫力を上げよう
 免疫力を高めるには新陳代謝を高めることです。新陳代謝とは体内で行われる生理反応のことであり、すべての臓器が順調に働くことです。新陳代謝を活性化するには亜鉛やカルシウムが必要です。特に女性は更年期以降に女性ホルモンが急激に減少するとカルシウムが溶け出しやすくなってしまうため、カルシウム不足が目立つようになります。すると骨粗鬆症が起きて骨折しやすくなります。肉類や魚介類のタンパク質を摂り、吸収性に優れた弱アルカリ性のカルシウムイオン水を飲むことでカルシウムを補うことが重要です。
 活性酸素は血管の動脈硬化を起こし、老化やガン発症の原因となるのですが、鮭の紅色の色素であるアスタキサンチンはカルテノイドで、活性酸素の働きを抑えます。また魚類には動脈硬化を防ぐEPAやDHAが含まれています。歴史的に魚料理や海藻、魚介類や大豆食品を食べ続けてカルシウムを含む弱アルカリ性の水を飲んできた日本人は知らず知らずのうちに良質のタンパク質やアミノ酸を摂取しており、新陳代謝を活性化することで健康長寿になったようです。

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VOL.301『ゲノム解析で遺伝子の働き方が解ってきた』 [生命]

◆若返りホルモン、マイオカイン
 古くから適度な運動習慣やエクササイズは健康に良いとされてきましたが、運動による筋肉刺激で筋細胞から分泌されるマイオカインが大腸ガンの抑制に作用していることが分かり、その科学的根拠が解明されました。マイオカインは若返りホルモンと呼ばれ、主に太ももやふくらはぎなど下半身の筋肉から分泌されるホルモンです。筋肉運動によってマイオカインは血液中で増加し、大腸粘膜の病変部に直接作用したり、新陳代謝を高めることによって大腸ガンの発症を抑制しています。
 身体を動かすことに関して、古来からインドのヒンズー教でのスクワットやヨガがよく知られていましたが、世界的にもヨガを行うことで血糖値が低下するという論文が多数あります。そしてその効果にマイオカインが関与しているのです。

◆ゲノム医療
 日本には昔から未病という病気があります。なんとなくだるいとか、食欲がない、どうも元気が出ないけれど病院に行って血液検査をしてもどこにも異常が見当たらない…このような状態を未病と呼びます。血液には問題ないが、遺伝子的には異常が生じているということが最近の研究で初めて解ったのです。
 日本未病システム学会の報告によれば、一般的な人間ドックの検査では全て正常範囲内で貧血もなく、肝機能や腎機能も正常だった男性が、倦怠感や食欲低下を訴えて来院したため8000種類の遺伝子を検査したところ、23.1%の遺伝子に変化が見られました。遺伝子レベルでは20%以上が異常を示したことになります。この男性は血液の治療とステロイド薬の投与によって1週間後に体調が回復して元気になりました。今後、未病は遺伝子検査によって病気の早期発見が可能となります。
 日本の遺伝子解析のレベルは世界トップクラスで、東北大学には世界から注目されているToMMo(東北メディカル・メガバンク機構)という施設があります。ToMMoには15万人以上の臨床データとゲノム情報が存在し、バイオバンクとしては世界一と言われています。全ゲノム解読ができる最新解析装置が10台以上あり、スーパーコンピューターが数10台並んでいます。一般的なパソコンのHDDの100万倍以上のデータ容量を持つスーパーコンピューターが数10台あるということです。現在、全ゲノム(30億塩基対)の解析に3100人が成功しており、この情報量は世界一です。このシステムで15万人の日本人の遺伝子を解析し、遺伝情報や体質を計測しています。イギリスのバイオバンクでは遺伝子を中心に情報を集めていますが、日本ではそれに加えてタンパク質や臨床情報、臨床検体などの情報が含まれています。
 ゲノム医療とは、DNAに含まれる遺伝情報を調べて、効率的・効果的にガンや病気の診断・治療・予防を行う医療です。上記の解析装置は一度に100種類以上の遺伝子変異を調べられるので変異がある箇所は分かるのですが、特定できる最適な抗ガン剤は20%ほどだそうです。とはいえ、この装置が未病医療の早期発見の突破口となったことは間違いありません。

◆SOS遺伝子
 未病とともに腎機能に障害を持つ人も増えています。腎臓は血液中の老廃物をろ過し、尿として排泄します。腎機能が低下すると老廃物が体内に溜まって尿毒症を起こし、腎不全へと進みます。そうなると腎臓の働きを人工的に行わなければなりません。2015年の人工透析者は32万人以上となり2兆円産業となりました。2013年、透析関連遺伝子の余命遺伝子が見つかりました。この遺伝子は慢性炎症などのSOS遺伝子と呼ばれます。免疫細胞の中には活性酸素を消去するSOD2というタンパク質があります。SOS遺伝子とSOD2タンパク質のゲノム解析が進めば寿命が延びる可能性が出てきます。未病を早期に発見するゲノム解析装置による新しい医療の開発が進んでいます。健康寿命が伸びそうですね。

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