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VOL.96『iPS細胞による再生医療の可能性』 [体]

◆生命科学の常識を覆した細胞
 さまざまな臓器や組織に変化するiPS細胞(新型万能細胞・多能性幹細胞)を作り出した研究で京都大学の山中伸弥教授が2012年10月9日にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。iPS細胞は、傷ついたり、病気になった組織や細胞を修復する再生医療に役立つことが期待される夢の細胞です。
 ヒトのカラダは約60兆個の細胞でできています。もとは父親の精子1個と母親の卵子1個が受精してできる受精卵です。これが何度も細胞分裂し、胚盤胞(ES細胞)となります。この細胞からさまざまな種類の細胞が生じて、神経や筋肉になります。一度神経や筋肉となった細胞は再び受精卵へと逆戻りすることはありません。ところが、iPS細胞はさまざまな細胞に変化できる能力を持っており、一度成熟した細胞を未分化の細胞に戻したことは生命科学の常識を覆しました。

◆細胞を初期化してあらゆる細胞へ
 細胞の分化を人工的に逆戻りさせることを初期化(リプログラミング)といいます。iPS細胞はまさに初期の状態に戻した細胞です。山中教授はこの初期化を可能にする4種類の遺伝子(山中4因子)を特定し、2006年にマウスの皮膚細胞に入れてiPS細胞を作製し、2007年にはヒトの皮膚細胞からもiPS細胞を作製しました。
 傷ついた組織や臓器を再生させる医療が再生医療です。通常、臓器移植をする場合、他人の臓器を移植するので、患者には拒絶反応が起こります。そのため免疫抑制剤の投与が必要となります。ところがiPS細胞なら、自分の細胞を使うので、拒絶反応のない臓器移植や難病の克服が可能となるのです。
 また、新薬の研究開発にも活用されています。薬の開発で問題となるのが副作用や毒性(安全性)です。動物実験では見られないがヒトでは起こり得る副作用もiPS細胞を用いれば、副作用の無い、患者ひとりひとりに合った治療薬の開発につながります。

◆再生医療の未来
 難病の原因解明にもiPS細胞は使用されます。2012年8月、ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の皮膚からiPS細胞を作り、神経の細胞に変化させて病気の状態を再現することに成功し、治療薬となる物質が発見されました。筋肉が骨に変わるFOP(進行性骨化性線維異形成症)などの原因解明も進められています。
 2013年には、国内でのiPS細胞の臨床への応用がさまざまな分野で開始されます。老化により網膜の機能が衰え、視野が歪むなどして見えにくくなる加齢黄斑異変症や、脊髄損傷を治療する研究、ALSやパーキンソン病・アルツハイマー病・脳梗塞・糖尿病・歯周病など広い範囲の病気の治療に役立つ研究が具体的になります。再生医療実用化のロードマップによれば2025年までには肝臓・血液・血管・骨・皮膚などの再生医療が可能になるといわれています。再生医療への期待は膨らみますが、その前に病気になら
ないようにしたいですね。ミネラル成分を豊富に含んだ水を十分に摂取して病気にならないカラダ作りを心がけましょう。

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