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VOL.184『人類の進化が生んだ21世紀型慢性疾患』 [生命]

◆類人猿からヒトへ
 日本人は農耕民族で、西洋人は狩猟民族であるとよく耳にします。そのため日本人には脂肪分の多い食生活は向かないといいますが、果たしてそうでしょうか。
 近年、地質学調査で発掘された遺跡からはクルミなどの木の実や動物・魚の骨が多く見つかっています。人類学上、ゴリラやチンパンジーなどの類人猿とヒトの系統が分かれたのは2400万年前で、人類は誕生からある時期までほとんどが狩猟や漁猟、採取を中心に生きてきました。農耕が始まったのはずいぶん後の話なのです。

◆狩猟から農耕へ
 遺伝子解析の進歩により、ミトコンドリアDNAという新しい解析手法を使うことでヒトの拡散の歴史が明らかになってきました。ヒトは約700万年前に類人猿の祖先と分かれ、約20万年前にアフリカで誕生しました。5〜8万年前には150〜2000人の集団がアフリカを出て北上し、世界中に拡散して、現在の人類に進化したといいます。
 ヒトはまず狩猟採取集団として出発し、自然界で手に入る食料を調達していました。この頃、大陸はまだ地続きだったので、大型の哺乳類を追って人類は世界各地に広がっていきました。ヒトの大きな大脳は脂肪やタンパク質を必要としました。そこで太く大きな親指を駆使し、石器を作って骨を砕き内臓を取り出すことで、栄養に富んだ肉食獣の食べ残しを主食として生き続けました。その後、大型の哺乳類を集団で仕留める知恵やチーム力を獲得し、火を手に入れて大きく進化しました。道具を作り、火を使ったり集団で暮らすことで罠を仕掛け、強い肉食獣と戦いました。
 組織的な農耕は1万年前にシリア北部やヨルダン川の付近で始まったといわれており、世界的に広がって定着したのは4000年前とされています。やがて人類は狩猟から農耕へと移行し、人口も50〜60倍と急激に増加しました。農耕が定着し、小麦や米のデンプン(糖質)を摂取するようになると、ヒトの血糖値は狩猟時代の2倍以上に上昇しました。

◆日本人の進化
 では、日本人はどこから来て何を食べていたのでしょう。アフリカを出た集団は日本列島にもやって来て縄文人となりました。その1万年後には水田稲作の技術を持った渡来人(弥生人)がやって来て稲作技術が伝わりました。弥生人のルーツは、ミトコンドリアDNAの解析から中央アジアのバイカル湖付近に住む人であったことが明らかになっています。
 5500年前の縄文時代前期の遺跡からは、どんぐりやクルミなど木の実の種子類、魚骨やウロコの魚骨層、淡水産の貝殻層が確認されました。その堆積状況から、秋に採取した森の食べ物を秋から冬にかけて食べ、春には淡水湖で魚や貝を、夏にはマグロやカツオ・ブリ・サワラなどの海水魚を獲って食べており、季節に応じた食生活をしていたことが分かります。それでも環境は過酷でエネルギー消費も多く、ほとんどは飢餓との戦いの日々でした。
 江戸時代中期には白米の食習慣が定着し、精米技術も向上しました。その結果が血糖値の急激な上昇を招きます。人類は進化に要した時間の大部分を狩猟によるタンパク質や脂肪、食物繊維の摂取で生き続け、その遺伝的仕組みをDNAに組み込みました。ところが農耕によって、血糖値の上昇、インスリン分泌の増加が起こり、大量の甘味の摂取が糖尿病という21世紀型の慢性疾患の増加を助長しました。糖尿病による死亡率の高い県では、農耕が盛んで、静かな田園地帯で美味しい米を作り、たくさん食べています。
 人類の進化が新しい病気も作ってしまったのです。タンパク質や食物繊維、そしてカルシウムをはじめとするミネラル成分を十分に摂取しましょう。白米よりもミネラル豊富な玄米を食べることをお勧めします。

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