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VOL.294『自分の免疫力の状態を知ろう』 [体]

◆免疫力は3歳までに決まる
 人間の身体は3歳までに完成した組成を基に免疫力が構築され、風邪をひきやすいとか、アレルギーになりやすい、ガンになりやすいなどの体質が決まります。そしてこれはその後にどのような生活を送っても変えることができません。しかし、腸内細菌の組成(善玉菌・悪玉菌・日和見菌のバランス)は3歳以降も生活環境や食事内容によって変わります。特に薬剤や清潔志向で身の周りの常在菌(病原菌とは異なる)を排除する生活を続けていると、腸内細菌の善玉菌は増殖力を失って数量も種類も減ってしまいます。

◆腸内細菌にはほとんどの免疫機能が存在する
 人間は母親の胎内ではほぼ無菌の状態で存在し、産道を通る時に膣内に存在する細菌が新生児に吸い込まれ、外界に出た直後に母の持つ常在菌が新生児に受け継がれます。新生児はこれらの細菌によって免疫力が形成されます。ところが新生児はどんな常在菌でも受け入れるわけではありません。免疫機能によって強い選択性を受け、選ばれた細菌だけがその個体を形成するのです。
 腸内細菌の組成を決めているのが個人の抗体です。抗体(免疫抗体)は外部からの異物や病原体を排除し、個体を守る武器として働きます。同時に腸内細菌の種類を選ぶ働きもしているので、腸内細菌には個体のほとんどの免疫機能が存在するのです。生後3歳までに腸内に侵入してきた細菌の中で、どの細菌を腸内に住まわせ、どの細菌を排除するのかは個体のIgA抗体が決めています。このIgA抗体は母親の母乳、特に出産から数日間に出る初乳中に大量に含まれています。そのため昔から初乳を飲ませることが免疫抵抗力を維持するのに必要とされています。
 ではIgA抗体は何を基準に細菌を選択するのでしょう?これは明確ではありませんが、IgA抗体の免疫力が強くないと新生児は生まれず、生後の発育にも影響があります。新生児の成長には栄養素の吸収が必要です。小腸の繊毛と呼ばれる粘液細胞には細かな突起が多数あり、分解された栄養素(水・糖・アミノ酸・ビタミン・ミネラル成分など)の専用の入り口があります。栄養素の吸収はトランスポーターによって厳密にコントロールされており、体内で必要とされない栄養素や異物は糞便として排出されるため、小腸粘膜細胞の選別機能は神の手と呼ばれます。
 体内に取り込まれた食品は大きなタンパク質のままでは吸収されず、アミノ酸に分解され最小成分になって小腸から吸収されます。しかし、食品中のタンパク質がそのまま小腸から吸収される場合があります。この時、体内の免疫機能はこれを異物と認識し、T細胞やB細胞などの免疫細胞がこのタンパク質を攻撃排除します。これが炎症反応です。食物アレルギーの人は免疫抗体が働いてアナフィラキシーショックを起こし、血圧が急激に低下し、意識が喪失して死に至ることもあります。

◆免疫細胞とウイルスの闘いの場所が炎症となる
 アレルギーはタンパク質が小腸粘膜細胞から吸収されて発症します。このアレルギーを起こすのがIgE抗体です。IgE抗体はヒスタミンと呼ばれる化学物質を短時間のうちに放出し、激しい症状を示します。この典型例が花粉症です。日常的に食べる加工食品や和菓子などでアレルギーになる、これはIgG抗体によります。IgG抗体はIgE抗体よりも分子量が小さいので発症までに数時間から数日かかります。免疫機能が働くと外敵との闘いの場所が炎症となります。例えば風邪をひいて発熱し、喉の腫れや痛みが起き、咳や鼻水・関節痛が生じる時、免疫細胞はウイルスと闘って炎症を起こします。
 新型コロナウイルスに感染すると症状が出て肺炎になります。しかし、免疫力が高い人や若者は無症状のままで気づかずに感染源となります。毎日排便の際に自己チェックすると良いでしょう。糞便がしっかりと大きな塊であれば、あなたの免疫機能は正常に働き健康体であると言えます。糞便の色や形に変化があり、軟便や下痢の場合には無症状であっても何らかのウイルスに感染していることが考えられるので、ウイルス検査を受けましょう。

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