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VOL.298『オートファジーで若々しく』 [体]

◆オートファジーとは
 2016年に大隈良典教授は世界で初めてオートファジーの分子レベルでのメカニズムを解明した功績が認められ、ノーベル生理学・医学賞を受賞されました。オートファジー(自食)は人体における生産と破壊の根源で、語源はギリシャ語の『自ら』と『食べる』を組み合わせた言葉です。自らを食べるという意味で自食作用とも訳されます。

◆オートファジーの役割
 人間のカラダは37兆個ほどの細胞からできていますが、その中で古くなった細胞は自らを壊して食べるオートファジーを行っています。老化して衰えた細胞が生まれ変わる、オートファジーこそ老化予防と若返りに不可欠な仕組みであり、ヒトの体内で繰り返される見事な
リサイクルシステムなのです。
 細胞の寿命やリサイクルのスピードは細胞の種類によって異なります。例えば、腸内壁をつくる腸粘膜の上皮細胞は3〜5日で新しい細胞が古い細胞と入れ替わります。そして古い腸粘膜が剥がれ落ちて塊となったものが糞便の主成分です。皮膚の表皮細胞は約1ヶ月、赤血球は約4ヶ月で入れ替わります。怪我をして血が出た時、出血を止めるのが血液成分の中の血小板ですが血小板は約2週間でオートファジーされます。細胞の誕生から寿命までの期間もそれぞれの細胞によって異なり、それは細胞の働き方にも関係します。労働力が大きい細胞ほど寿命は短くなります。ヒトの細胞の中で最も寿命が短いのは腸粘膜の上皮細胞です。寿命が来た細胞は細胞室内にあるミトコンドリアや小胞体などの微細構造を含めて次々にオートファジーして入れ替わります。部屋が掃除をしないとゴミが溜まるよう体内も掃除をしなければゴミが溜まるので、体内の細胞ではオートファジーが絶えず繰り返されています。
 細胞の主成分はタンパク質です。体内では2万種類以上のタンパク質が分解されて20種類のアミノ酸を作ります。そのアミノ酸から再び2万種類以上のタンパク質が作られます。つまり、古くなった細胞は自食されタンパク質がアミノ酸に分解されます。分解されたアミノ酸は生産のためリサイクルに回されます。再生する際にはリサイクルできないゴミとなるタンパク質もあります。細胞はオートファジーによって再生できないタンパク質をゴミとして体外に排出します。このゴミ出しが出来ているため体内はいつもクリーンで良質な環境を保つことができ、それが老化防止や健康維持に役立ち、病気にかかりにくくしています。逆に36〜37℃の体内に長時間放置されたゴミタンパク質は腐敗が進みます。そこで細胞はゴミタンパク質ができないようにオートファジーをして体外へ排出します。それが毎日の排便や、排尿・発汗で体内の老廃物や不要物は体外に排出されています。

◆オートファジーが働かないと…
 皮膚は内臓を映す鏡と言われます。皮膚や毛髪には如実に体内の状態が現れるからです。体内のゴミ出しが上手くいっていないと皮膚や毛髪が明らかに老化していきます。体内の毛細血管はオートファジーによって細胞が出したゴミを回収しますが、細胞からゴミを上手く回収できなかったり、腸粘膜からゴミが毛細血管を介して血液中に戻されたりすると、これが病気の原因となる炎症を引き起こします。体内の不要なゴミ(タンパク質)は免疫機能を低下させ、急性炎症は徐々に慢性炎症へと移行して体調不良や老化現象の症状が出てきます。その現象は特に、40歳を過ぎる頃から運動不足も加わって、肌荒れやシミ・シワ・抜け毛・白髪・薄毛など皮膚や頭表面で明確になっていきます。同時にお腹周りが膨らんで肥満型になっていきます。これらの症状は慢性炎症の度合いが進んでいることを示します。
 日本では近年長寿者が増え、100歳を超える人の数が世界一多い国となりました。彼らはオートファジーの機能が正常に働き、体内にゴミが溜まらない体質や体内環境だったのです。若い頃から暴飲暴食や昼と夜が逆転した生活をしている人は老化するスピードが速くなります。新型コロナ感染症が若者を中心に拡大していますが、彼らは無症状なので気づかないことが多く、オートファジーが正しく働いていない可能性が高いので、慢性疾患へと移行していく可能性があります。予防の基本は規則正しい生活習慣と、毎日飲む水にあります。

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