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VOL.262『幸福ホルモン「オキシトシン」』 [体]

◆オキシトシンとは
 ストレス社会の今日、幸福ホルモンとして注目されているのがオキシトシンです。オキシトシンは哺乳類だけが持っているホルモンで、分泌されると心が癒され、幸せな気分になる効果があります。
 オキシトシンは40年以上前から女性に分泌されるホルモンとして2つの役割があることが分かっていました。1つは出産する際に子宮を収縮させ分娩を促す作用で、陣痛を促進するための点滴薬として使われます。もう一つは出産後母乳を分泌する作用で、乳児が母親の乳首を吸うとそれが誘引刺激となって、オキシトシンが分泌され、母乳の合成と分泌が進みます。ですからオキシトシンは母親が出産後に新生児を育てることに直結したホルモンとして知られていました。
 しかし、ここ10年ほどでオキシトシンの研究が飛躍的に進み、母親だけに分泌するホルモンではなく、母性愛にも関係することや、信頼、男女の愛情にも関係して分泌されることが分かりオキシトシンの更なる役割が明確になりました。人に対する親近感や信頼感が増し、ストレスが消えて幸福感が得られるほか、血圧の上昇を抑えたり、心臓機能を活性化するなど長寿に関連する作用も明らかになってきています。

◆自分最優先ではなくなる
 基本的には誰でも自分が一番大切なものです。美味しいものを食べたいとか、欲しいものを手に入れたいとか…自分の欲求や目的が最優先となります。その時、脳内ではドーパミンが働きます。ところが母親になるとドーパミンよりもオキシトシンの方が優位となり自分が第一ではなくなります。これは動物実験でも明らかで、オキシトシンが分泌されるラットは子供のために恐怖に立ち向かい、危険を冒しても行動します。ヒトの母親も同様で、子供のために自分の命を危険にさらしても自己犠牲的な行動をとります。
 オキシトシンの分泌は脳の扁桃体に変化を与えます。扁桃体の働きは好き嫌いや不安、恐怖などを発現することです。ところがオキシトシンが分泌されると扁桃体は正常に機能しなくなり、不安や恐怖を感じなくなって不快感がなくなります。母乳が出ない母親でも、子供を抱いて人工ミルクを与え、スキンシップをしているとオキシトシンが分泌されてきます。逆に母乳が出るのに母乳を与えず、スキンシップを行わない母親ではオキシトシンが分泌しなくなります。いかにスキンシップが大切か分かりますね。

◆オキシトシンを分泌させよう
 新生児に授乳を始めると母親のオキシトシン濃度は急激に増加し、授乳が終わる1時間後には普通の濃度に戻ります。通常、新生児は2〜3時間に1回授乳するので、その都度オキシトシン濃度が上がったり下がったりし、それが1日に何回も繰り返されることで、母親の脳に変化が起こり、授乳は1年ほど続くので脳の構造が変わります。母親の脳に変化がするとその状態はしばらく続きます。その後、2人目3人目と産む間に母親の脳は固定されていきます。子供を育てた女性と子供を産まない女性では脳の構造が違ってきます。子供を育てることで母性が育つことが経験的に分かってきています。
 オキシトシンは男女の愛情にも大きく関与します。恋人同士でも夫婦でもオキシトシン分泌の量によって関係が深まります。神経伝達物質であるドーパミンは満足した時に大量に分泌されますが、オキシトシンは人に親切にした時とか、新しいことに挑戦して成功したとか、風景や映画などで感動した時とか、ペットなどと触れ合って可愛いと感じた時などに大量に分泌されます。
 他者との触れ合いによって脳の扁桃体が刺激されることでオキシトシン分泌が起こります。ストレスを感じてイライラしている時などにオキシトシンが分泌するような行動をとればストレスが軽減されます。オキシトシン分泌を心がけて行動すれば、心が癒されて幸せな気分になり、元気に暮らせて老化予防にもつながります。

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VOL.261『清潔志向が免疫力を下げる』 [生活]

◆免疫力が高い人
 2019年は年明けからインフルエンザが猛威をふるい、はしかも過去10年で最多のペースで流行しています。日本では季節の変わり目に風邪をひく人が増えます。気温差が激しくなるので着る服を選ぶにも苦労しますが、すべての人が風邪をひくわけではありません。体調の良い人は寒い日に薄着で出かけても風邪をひきません。これは免疫力の高い状態です。
 日常生活で野菜や発酵食品などを多く摂っていると腸内環境が良くなり、免疫力が高まって風邪などウイルスによる感染症にかかりにくくなります。免疫力が高い人は、腸が活発に動いているので病気のウイルスが侵入しても腸内細菌が作った免疫力で処理してくれます。

◆免疫力が下がる理由
 一方、乱れた食生活や栄養不足で疲労回復のために肉類や脂っこいものばかり食べている人は免疫力が下がり、風邪をひきやすくなります。朝起きて夜寝るという基本的なリズムが重要で、免疫力が下がる夜に外出すると病気にかかりやすくなるのです。夜間に仕事をする人も同様で風邪をひきやすくなります。免疫力の低い人は、侵入したウイルスを攻撃できずウイルスが体内に長く留まります。すると腸内細菌が疲弊して免疫力がさらに下がるので病気が長引きます。その状態が長く続くとガンの発症にもつながります。なぜ自分はガンになってしまったのか?理由がわからないという人が多くいますが、原因はあるのです。不規則な生活や、栄養過多な食生活、ストレス過多な環境などによって知らず知らすのうちにガンになってしまうのです。
 常に免疫力が低い状態なので風邪をひいても何度もぶり返し、その度に薬を飲みます。休みが取れないので無理をしてその状態を繰り返し、自分が好きなものばかりを食べ、常にイライラしていて、仕事上のストレスを他人に対して大声を出したり、怒鳴ったりすることで解消するような人は、まずその生活習慣を正す必要があります。
 神経質で清潔志向の人は何かにつけて薬をよく飲み、その薬は抗菌薬であることが多いようです。抗菌薬を飲むと腸内細菌自体が減少してしまいます。さらに、肉類の摂取が多いと腸内では大腸菌やウェルシュ菌などの悪玉菌が増えます。腸内環境が変化し、そこに過度のストレスが加われば病原性の弱い大腸菌まで病原性が高まってしまいます。すると大腸ガンになるばかりか他のさまざまなガンの発症を誘引する原因となります。

◆腸内環境を整えよう
 ガンは1981年以降、日本人の死因の1位を維持しています。3人に1人と言われた時代から2人に1人の割合に増えました。日本人の規則正しい生活習慣が乱れた結果、ガンが増えてきたのです。これは脳心疾患で死亡する人が減少した結果でもあります。この状態を改善するには正しい知識を持つとともに正しい生活習慣が必要です。つまり、毎日規則正しく朝起きて、バランスの良い食事を摂り、散歩などの適度な運動をして、楽観的かつ前向きな思考を心がけ、十分に水分を摂ることで腸内細菌のバランスが整い、腸内環境が良好になります。腸内環境が良くなれば免疫力が上がり、ガン発症の予防につながります。ガンを直接攻撃するのは免疫細胞の中のNK細胞です。NK細胞は時間帯によって攻撃力が変わります。朝9時頃と夕方5時頃が最大となり、夜9時以降は攻撃力が低下します。
 必要以上な清潔志向は腸内細菌を減らします。日本人の抗菌グッズ好きがアレルギー疾患を増やしたとも言われます。農薬や防腐剤、化学調味料や食品添加物の摂取、除菌石鹸の使用による皮膚の常在菌の減少などが免疫力を低下させアレルギー疾患を増やしました。免疫力の低下は風邪ウイルスやインフルエンザ感染症を増やしました。ワクチンを接種してもインフルエンザには感染します。介護老人ホームでは集団感染の末に死者も出ています。不規則な生活や日本人の清潔志向が免疫力の低下を招き、感染症への抵抗力を低下させ、ガンを増やしています。

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