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VOL.270『暑さに負けないように良い水を摂ろう』 [体]

◆暑い季節の感染症
 夏になると暑さのせいで水や冷たいものを摂る機会が増えます。しかし、高温多湿の季節は冷蔵庫内の食品が安心であるとは言えません。病原体に汚染された食品や飲み物を口から摂りこむと、それらに付着する病原微生物やその毒素によって消化器内が損傷されて発症する病気が増えます。これを消化器感染症とか経口感染症といいます。そしてこのような感染症を一般的には食中毒といいます。日本の食中毒による死亡者は、年間を通じて1000〜2000人報告されています。高齢者の肺炎による死亡者と比べれば少ない数字ですが、これは死亡診断書からの総数なので実際はもっと多くなります。

◆さまざまな食中毒
 1960年代まで食中毒は原因不明とされていましたが、検査法が進歩した現代では原因不明の食中毒はほとんどありません。以前は食中毒といえば発生時期は暑い季節と相場が決まっていました。この傾向は細菌性の食中毒に限られており、基本的には今も変わっていません。しかし、地球温暖化や冷暖房設備の普及によって寒い季節にも発生するようになったのです。特にカキのおいしい寒冷期にはノロウイルス食中毒が数多く発生することもあり、年間を通して食中毒の発生報告は平均化されてきています。
 サルモネラ菌やカンピロバクターによる食中毒の増加は、食生活の欧米化による肉類やタマゴ類の摂取量が増えたことが原因と考えられます。タマゴによる食中毒はサルモネラ菌の仲間であるエンテリティディス菌によるものが多くを占めています。ニワトリの腸内に生息しているサルモネラ菌が糞便を介して、タマゴの殻の小さなヒビを通りタマゴ内部に入って汚染するのです。サルモネラ菌は低温では増殖しないので予防のためには長期間室温で放置しないことです。早めに調理することが大事ですが、80℃以下で10分間の加熱で殺菌できます。サルモネラ食中毒は下痢、腹痛、嘔吐に発熱を伴います。
 カンピロバクターによる食中毒は5月から10月にかけて多発し、急激に感染が広がるのが特徴です。症状は嘔吐、腹痛、下痢で発熱はしません。重症例は少ないですが、1000人中に1人の割合で難治性の自己免疫疾患であるギランバレー症候群を発症します。カンピロバクター食中毒を起こした後に抗体が形成され、末梢神経にある糖脂質と結合して神経伝達を阻害します。その結果、歩行困難となる難病です。大部分のカンピロバクター食中毒は生や生焼けの鶏肉を食べることが原因で発症します。ニワトリの羽を除去する時、ぬるま湯に漬け、羽をむしりやすくして処理します。この状態を専門家は仲間同士でドブ漬けと呼びます。名前の由来はニワトリの糞便で汚染されたぬるま湯がドブ色になることです。カンピロバクターは健康なニワトリの腸内に多量に存在するので、ドブ漬けの間に鶏肉の表面が汚染されるのです。近年は地鶏の生肉を刺身として提供する飲食店が増えていますが、生の鶏肉や生レバーは食べない方が安全です。また、鶏肉を処理した包丁やまな板で生野菜を調理するのも避けましょう。

◆水分摂取は必須です
 人間の皮膚には1兆個以上の細菌が生息しています。代表的な表皮ブドウ球菌は弱酸を産生して皮膚の表面を弱酸性に保ち、外部からの病原体の侵入を阻止しています。また、腸内には100兆個もの腸内細菌が生息しています。そのため人間は共生する細菌やウイルス、カビなどとの複合生物であるともいえます。ヒトのカラダはこのような微生物によって守られているのです。ですから、抗菌薬の乱用や消毒薬などの過度の使用は避け、それらの共生微生物と協調して生きていかなければなりません。
 暑いと体力は急激に低下し、体表面の微生物も減少するため、外部からの病原体の侵入が増すのです。これが体調の悪化です。事実、疲れを感じている時に食中毒は発症します。暑い日にはできるだけたくさんの水分を摂取しましょう。まずカラダの脱水状態を防がなくてはなりません。ヒトは体表面から汗をかいて体温を調節します。汗をかくことは体内の水分が奪われるとともに体表面に生息する微生物も減少するので病原体が侵入しやすくなります。それを防ぐのが弱アルカリ性の水の摂取です。良い水をたっぷり飲んでミネラルを補給し、夏を元気に乗り切りましょう。

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