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VOL.263『病気の基となる慢性炎症』 [健康]

◆免疫反応
 免疫とはなんでしょう?免疫とは疫(病気)を免れること、つまり病気にかからないということです。人にはウイルスや細菌などの感染症にかかっても病原体と闘って防御する機能が存在します。体内に侵入した病原体と闘う現象を免疫反応といいます。この免疫反応が病気の予防や病気を治す自然治癒力となります。
 ところが、免疫反応にはカラダにとって悪いこともあり、それがアレルギーです。花粉やハウスダストに対して免疫反応が強く起こり過ぎると、過剰なかゆみや涙、鼻水、くしゃみなどのアレルギー症状に悩まされます。また、自己免疫疾患と呼ばれる病気の人も免疫反応が悪さをします。こちらは遺伝的に発症することが多く、全身性エリテマトーデス(SLE)や関節リウマチなどがその例です。原因は自己抗体が自分の細胞や組織を攻撃する免疫反応が生じることで、発熱し、さまざまな場所に痛みが出ます。

◆慢性炎症とは
 このように免疫反応はカラダに害を及ぼす場合がありますが、通常は病原体からカラダを守っています。病原体が体内に侵入するとカラダを防御する白血球が侵入局所で刺激を受けるので生理活性物質やサイトカインなどの物質を作り出して情報を周囲の白血球系細胞に伝えます。すると樹状細胞やマクロファージ、リンパ球(T細胞、B細胞)が活性化され、病原体を殺す抗体(B細胞)で攻撃します。また、T細胞や樹状細胞は病原体を直接攻撃し、その結果、病原体が減少すると免疫反応は徐々に弱まります。多くの場合、カラダにはその免疫記憶が残り、再び同じ病原体が侵入した時には直ちに攻撃・排除する能力を発揮します。
 この免疫反応は局所の炎症反応です。炎症反応には白血球だけでなく、全身の細胞が反応します。炎症反応はコレステロールや尿酸などの結晶成分が体内に溜まってくる生体反応由来の成分にも起こります。通常、この反応はすぐ収まりますが、炎症反応が長期化すると体内のブレーキ機構が破綻し、これがドミノ倒し的に起きることを慢性炎症と呼びます。近年、慢性炎症があらゆる疾患に関与することが分かってきました。
 慢性炎症は症状がなかったり、軽かったりするので気づきにくいのですが、これがガンや糖尿病、高血圧、動脈硬化、アルツハイマーなどの恐ろしい病気となり、気づいたときには悪化しています。そのため慢性疾患はサイレントキラー(静かなる殺し屋)と呼ばれます。
 今日、健康寿命を阻害する原因は慢性疾患です。慢性疾患は自覚症状がないまま炎症が進行し、気づいたときには臓器の機能不全が始まり、死に至るまで進行します。慢性炎症は特に、神経細胞のように再生しにくい組織で起こります。その例がアルツハイマーで、症状が発症したときには手遅れとなります。
 江戸時代の浮世絵師、歌川国芳が描いた日本に古くから伝わる妖怪・鵺(ヌエ)は誰もその姿を見たことがないため想像で描かれています。顔はサル、胴体がタヌキ、手足がトラ、尾はヘビです。ヌエは知らない間に人の家に入り込み、住み着いて人を恐れおののかせ正体不明の病を起こします。平安時代にもヌエの話があります。ヌエは源頼政によって御所内で弓で射られて殺され、淀川に流され大阪湾に流れ着きます。そのヌエを村人が埋葬し祀ったとされるヌエ塚が今も残っています。ヌエは大阪湾を印象付ける動物として大阪湾の紋章となりました。ヌエによる病気が今日の慢性炎症です。慢性炎症は万病の元とされ、どのように防げばいいのか、治療薬は多種ありますが、これといった効果を示すものは存在しません。

◆過ぎたるは及ばざるが如し
 孔子は論語の中で「過ぎたるは及ばざるが如し」と言いました。やり過ぎても足りなくても、どちらも同じくらい良くないという意味です。これはまさに今日の健康習慣にも当てはまります。何事もほどほど肝心であり、大事なのは中庸の精神です。ほどほどを過ぎると、体内には目に見えない炎症が始まり、次第にカラダの調子がおかしくなってきます。病気の基となる炎症反応を感知するセンサーは体内のすべての細胞に備わっています。毎日の悪い生活習慣が続けば細胞のセンサーが働かないために必然的に慢性化し、病気の方向に進みます。規則正しい生活習慣や野菜を中心とした食生活、適度な運動習慣が慢性炎症を予防する方法です。

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